赤鯱新報

杉浦駿吾の劇的ゴールで2ヵ月ぶりの勝利。今季のホーム最終戦を笑顔で飾った。U-18プレミアリーグ写真レポート。

■高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2023 WEST 第21節
2023年11月26日 11:00 KickOff/トヨタスポーツセンター 第2グラウンド
名古屋グランパスU18 2-1 横浜FCユース
得点者:61分 岩崎亮佑(横浜FC)85’オウンゴール(名古屋)90+5’杉浦駿吾(名古屋)
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今季のホーム最終戦となる横浜FCユースとの戦いが26日行われた。スタメンは3年生も多く名を連ね、気迫が表情からもうかがえる。

この劇的な感じは実に名古屋U-18らしいというか、やきもきさせられた。5試合勝ちなしの状況で迎えた今季のプレミアリーグのホーム最終戦は、0-1で迎えた後半の終盤、85分と90+5分の2得点で名古屋U-18が逆転勝利を収め、プレミアリーグ残留もその手にもぎ取った。順風満帆に見えた序盤戦から打って変わって苦戦続きとなった今年の戦いは何やらトップチームにも重なる印象もあるが、やはり勝って大騒ぎする若鯱たちを見るのは楽しいし、嬉しい。それが「やっぱり3年生には勝って終わってほしかった」と語る2年生エース杉浦駿吾の活躍によって生まれたものなら、次節に対しても来年に向けても、チームには良い風も吹き抜けた。

試合は厳しいものだった。横浜FCユースの3バックシステムとのミスマッチに攻守がうまくはまらない名古屋U-18は、鈴木陽人や石橋郁弥、八色真人らの突破で時折チャンスは作るものの、詰めきれずに徐々に主導権を握られていった。前線のプレスもそこまで強度が上がらず守りは後手に回り、攻撃も押し込まれることが増えて行って単調なロングボールを跳ね返される流れに陥った。この日はセットプレーにも今までとは違うパターンを取り入れ、大田湊真の高さを活かした場面も生み出したが、わずかな精度のなさでゴールにはつながらず。0-0で試合を折り返すも展開を変えることができなかった中で61分に失点を喫し、窮地に立たされた。蹴っても跳ね返され、つなごうとするとミスも含めて早い段階のロストが目立ち、さらに試合は劣勢に。相手の強力な攻撃にさらされる中ではGK萩裕陽がことごとく立ちはだかって追加点を許さなかったが、いかんせん攻撃のリズムが上がらず苦戦は深まる一方に。

78分には那須奏輔と西森悠斗がピッチへ。サポーターからも期待の声援が大きく上がった。

だが、78分に那須奏輔と西森悠斗が投入されると、運動量とボールを運ぶ能力に優れる2名によって前線が活発化。交代の効果はてきめんで、85分に野田愛斗が執念でパスを那須につなぐと、「まずは奏輔からのパスをもらおうとして斜めにランニングを起こして。そこには出てこなかったんですけど、そのランニングで相手のディフェンスが自分についてきて、陽人とかがよりフリーな状況になった」と杉浦。杉浦と同時に動き出していた鈴木にパスが渡ると、折り返しにたまらず食いついたDFに当たってオウンゴールに。これで一気に乗った名古屋U-18は見違えるような動きでピッチを躍動し、逆転への攻勢を強めていく。しかし横浜FCユースの粘りもあって試合はアディショナルタイムへ。5分間の表示に名古屋はさらに勢いを増し、ロングボールで前線を走らせるパワープレーにも打って出たが、そう簡単には決まらない。

1-1のまま試合はアディショナルタイム5分へ。その5分目。大田湊真のロングボールに杉浦駿吾が競り合ったところから歓喜の瞬間は始まった。

空中戦のこぼれ球を西森悠斗が拾って杉浦駿吾へ。杉浦はゴールを見ずに感覚だけで右足を振り抜く。

歓喜の瞬間はまさにラストプレーに訪れた。時計は追加5分台の終わりに差し掛かろうとする場面、大田が杉浦に送ったロングボールは競り合いの中でこぼれたが、西森悠がうまくフォローし再び杉浦へつける。「自分も『何か起これ!』っていう感情で競ってたんで、特にゴールを見ずに打ちました」。写真を見てもかなり無理矢理に右足を振り抜いていたが、シュートは一直線にゴールネットへ。劇的と呼ぶにふさわしい逆転ゴールが決まり、名古屋U-18が久々の勝点3を手にした。殊勲の杉浦は「いま振り返っても全然思い出せない感覚のゴールでしかなかった」とはにかみ、「でも、そこは全員の気持ちが乗ってて、最終的に自分が打って入ったっていうだけ。チームのゴールかなって思います」と仲間を称える。

劇的な逆転ゴールに杉浦駿吾が吠える。迎える那須奏輔に飛びつきながら吠える。

駆け寄る仲間たちとともに、サポーターたちの待つゴール裏へと突進する。

勝利の味にチームもサポーターもテンションは最高潮となり、ホーム最終戦ということで試合後にはかなり長い間、選手たちとサポーターの交流の場が設けられ、ピッチは和やかな雰囲気に。アカデミーならではの温かみのある光景に、彼らは次節への意気込みも新たにしたことだろう。「綺麗なプレーだったり、自分たちが綺麗に勝とうとするんじゃなくて、ほんとに今まで応援してくださった方々へほんとに感謝の気持ちを持って」。10年間のアカデミー生活の集大成を期する鈴木を始め、選手の気持ちはひとつである。有終の美、とはならなかったが、笑顔の結末はまだ作れる。

3年生たちがユニフォームを着て、記念撮影。

reported by 今井雄一朗

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