赤鯱新報

阿部翔平が知多リーグデビュー!と思いきや延期で練習試合でC GROSSOデビュー! 

知多リーグ開幕戦が延期となり、代わって行われた練習試合に阿部翔平がスタメン出場。試合で合わせるのはこれが初めてだという。

C大阪戦のあった4月21日の午前、半田市運動公園(半田ぴよログスポーツパーク)にて、とある社会人リーグの練習試合が行われていた。今季から知多リーグ所属のC GROSSO知多の一員となった阿部翔平が、そのリーグ第一節を戦うということで取材に向かったのだが、天気予報と会場都合によりリーグ戦は延期。しかし同会場、同対戦カードで練習試合が行われるということになり、ひとまず阿部のチームデビュー戦を目撃することができた。

砂ぼこりの舞う土のグラウンドでは技術の大前提が変わってくる。自慢の左足キックも序盤はアジャストに時間がかかっていた印象。

半田運動公園の多目的競技場は土の二面グラウンドで、地続きのもう一面ではC GROSSOの中学生年代が試合をしていた。土のグラウンドは風が吹けば砂ぼこりが舞うピッチコンディションで、あちこちにデコボコがありトラップもストップにも気を遣うような状況。実際、サイドを上がった阿部がトラップからクロスを狙ったところ、トラップの手前でボールがイレギュラーバウンドし、何とか態勢を整える場面もあった。リーグの全試合がこういうピッチではないだろうが、練習も含めてハードコート用のボールを使うような環境の中では、「基本、グラウンドは信用してません(笑)」という阿部の言葉通り、正確なサッカーをしようとしすぎては厳しいのかもとは感じた。

周囲に常に指示や声をかけながらプレーしていた阿部翔平。ピッチ上の指揮官だった。

練習試合は30分3本で行われ、阿部は1本目と2本目、そして3本目のラスト10分に出場。ポジションはボランチで、相方のボランチの方がより前で動き回るタイプであり、そのサポートを含めてチーム全体に影響力を及ぼす位置でプレーしていた。「サイドバックの方がゲームは作りやすい」と語る阿部だったが、チーム全員と同じ距離感で指示が飛ばせる中盤の底から冷静にチームをコントロール。守備時の原理原則の徹底あるいは選手の意識の塗り直しに始まり、良かった場面には「良かった」と声を掛け、ビルドアップの方向性をかなり具体性のある言葉で指示。前線からのプレスをかける場合は「今じゃない!次だぞ、次から、ゴー!」とタイミングと方向までしっかり伝え、実際にそうした時には全部ボールが奪えていた。とはいえ全体的にはミスが多く、意図の嚙み合わないことも散見され、試合には勝ったが満足できる出来とは言えなかったとは思う。

半田市運動公園は山の中にある。畑の匂いも漂ってくるなか、選手たちはボールを追った。

当然のごとく、阿部は抜きんでていた。派手なプレーは少ないが、前述の指示を絶えることなく繰り返しながら、DFラインをフォローしつつ攻撃の起点となるパスを送る。時に自らも上がっていき、2本目には逆転となるゴールをクロスからアシスト。「上がった甲斐があったわ!」と仲間と笑い合う姿には、チームメイトからの信頼感もしっかりつかんでいることを感じさせた。ハーフ間のミーティングでは監督からも意見を求められる姿があり、「監督は若くて柔軟性もあるので受け入れてくれる」と今後もいろいろな提案をしていく模様。土のグラウンドでのキック精度はまだまだ調整が必要に見えたが、2本目の終盤には代名詞のサイドチェンジも決め、早くもアジャストし始めているように見えた。

「やっぱり楽しいっすね」と試合後に見せた笑顔はあの頃と変わらぬ無邪気さがあり、しかし蓄積された確かな知見は新たなチームメイトたちを間違いなく今よりも上手くしていくだろうと感じさせた。愛知で始まった阿部翔平の新たな挑戦がここからどのような拡がりを見せていくか、今後も注目していきたいと思う。

ミーティングでは監督から意見を求められる場面も。

○阿部翔平選手
Q:まずはこの環境は想像以上でした。

「せめて、というのもおかしいですけど、人工芝ぐらいなのかなって。試合は(笑)。練習は土のグラウンドというのはありましたけど、試合も土というのは。でも実際、高校も小学校も土だったし、大学も土だったし、っていうのはあるので。まあ、けっこうやってきた感じはありますよね、土」

Q:ただ、キックの部分、細かい技術の部分に土のグラウンドはひと手間余計にかかるというのは、このリーグでやっていく上では考慮しなきゃいけないことなのかもしれませんね。

「そうっすね。土の上で精密にやるってのがやっぱり難しくなってきますよね。だから、ある程度幅を持たせてやらないとプレー自体が成功しないみたいなのはありますね。その細かさが捨てられないと、けっこう難しいかもしれないです」

Q:ロングキックも足がボールの下に入りにくいので、ちょっと蹴り方も変わってくる?

「そうっすね。最後の方にひとつ、ちゃんと収まってくれましたけどね、ボールが」

Q:アシストも記録しました。

「アシストしましたね。決めてくれてありがとう、でした(笑)」

Q:それでも細かい技術やスキルは断然上だなというのは思いました。どんな体勢からでも一定以上のレベルを保って技術が出せるというのは、改めて阿部選手の強みですね。

「そうですね。ある程度ならどんな環境でもできるっていうのは。意外とそういうタフさは持ち合わせてるんだなっていうのは(笑)。狙いながらできたりしますね、このレベルとかでもそうは変わらず」

Q:そしてピッチ上の監督のように、ずっと指示を出していましたね。

「ずーっと言ってましたね。でもすごく、彼らはすぐ良くなるというか。見ていて、すぐ良くなれるところはあるので、 今日が初めてなんですけど」

Q:試合がですか?

「僕が入って試合やるのは。だから、今日はある程度、どうやっていくのかなみたいなところではあったんです。去年まではサイドに速い選手とかを置いて、そこから全部崩してくみたいな感じを採っていたんですけど、今日はその選手が来れなくて、じゃあどうやって攻めるのかみたいなことはまた初めての挑戦みたいな感じだったので。それはできたんじゃないかなとは思いますね。ある程度」

Q:今日はボランチでのプレーでしたが、このポジションは経験していますしね。

「まあまあ、そうっすね」

Q:でも、サイドバックからの方が試合は作りやすかったりする?

「作りやすいです。ゲームは。でも、ボランチだと全員に伝えられるので。右サイドにも左サイドにも、満遍なく。キーパーにも言えますし、そういう意味ではチームのレベル向上というところでは、真ん中がいいのかなとは思ったりしますね」

Q:その指示にしても原理原則のところから、そのワンプレーの判断に関して、目の前のプレーに関して、本当に事細かに レクチャーしていましたね。

「うん。やっぱり“褒める”ってしないじゃないですか。監督って。どちらかと言えば怒ることが多いというか。だから、どれが成功かっていうのを理解できていないんですよね。だから僕はできたら褒めるし、良い選択したら、それがミスになっても『今のよかったよ』っていう風に、言ってあげたいし。というのはあるかな。そのことがけっこう前向きの力として働いてくれるなっていうのは、前のチームの時から、社会人の時から感じているので。ここでもそれを繰り返し伝えていきたいなとは思います」

Q:とはいえ、今日の練習試合の1本目はなかなかシュートが決まらなくて、「いやー、今のは決めたい!」みたいなボヤきも聞こえましたね(笑)。全体的なレベルは実戦をやってみて、伸びしろも含めてどう感じましたか。

「今いるカテゴリーだったら全然強いのかなっていう風には思いますけどね。ただ他のカテゴリーに行ったらまだまだだなっていうのはあるので。やっぱりフィジカル的に差が出てきちゃうんで、どうしても。そこがついてくれば、サッカーのレベルも比例して上げられるんですけど、そこがないとどうしても、少し厳しくなってくるだろうなっていうのはある。それはほんとに個人次第ですよね。社会人でやりながら、そういう身体のケアとかまで考えてやるというのは。そこのマインドがないと上がっていっても難しいのかなとは思います。でも、そういう風にやれる、やりたいっていう選手もたぶんいると思うので、そういうレベルに彼らが行けるんだったら、僕も引き上げてあげたいなって思うし。でも一方で、そのあたりを気にしていなくても、こういう風に走って楽しんでるっていうのは、やっぱりそれぞれ目的があるんですよね。チームとしては上に行きたいっていうのもありますし、うまくなりたいっていうのもあるんですけど、楽しみたいという気持ちもある。せっかくの週末をこのサッカーに使ってるんで、そういうのもありなのかなとは思いますけどね」

Q:自分のコンディションやパフォーマンス的には、今はどうですか。今日は延期になりましたが、リーグ開幕の日でした。

「まだ、そこそこっすね。100ではないな。50以上、100以下みたいな。けっこういろいろなところでサッカーしてるんですよ。このチームだけじゃなくて、いろいろなカテゴリーで。もちろん小学生とかから高校生まで。中学生とはまだやってないか、あとはオーバー40とか50のシニアの中とかやったり(笑)。けっこう面白くやってるんですけど。その中でけっこうコンディションを保たせてもらってたりとかして」

Q:ここからさらに上げていくやり方みたいなことは、このカテゴリーのレベルや今の環境の中を踏まえてまた考えていくことになるのですか。

「走れば上がる気はしますけどね。シーズンも始まったばかりですし。あとはチームの狙いをもって走りたいですよ。そうじゃないことをやる子もまだまだいるので。そういうところはしっかりと言いながら、良くしいていきながら、走らなきゃいけないところをたくさん作るみたいことはやっていきたいなと思いますね。監督もそういう意味では若いし、柔軟性があるので、言えば採用してくれると思っているので。そういう風にしてコンディションもレベルも高めていきたいなとは思いますね」

Q:今後もボランチをやることになるなら、どうしても運動量は上げていかなきゃいけないし、置き直しの数も増やしていかなきゃいけないですしね。

「そうすね。でもやっぱり前がちゃんと守備できてないと、範囲が大きくなっちゃうんですよね。それをエンドレスで動いてても、ある意味しょうがないって感じがするんで…(ここでベンチメンバーから「阿部さん出ます!」と声がかかる。1本目、2本目のあと、3本目のラスト10分間の出場へ)」

(練習試合終了後)

Q:見ていると感覚の合う選手や、阿部選手の感覚についてこれるような選手も何人かいたように見えましたが。

「いや、でも基本は合うというのもそうですけど、素直に受け入れてくれてる子がいるというのはありますね。そもそも少し能力を持ってるし、とうのもあったりするんで。それをいかに有効に出してあげるかみたいのは僕の仕事だなって思うので。やっぱりそこに入るとチームのスピードが上がるので、より楽しいなって思う瞬間ではありますね。そのあたりの選手たちというのは何かの選抜に入ってたりとか、良いところでやってたころがあるとか、中京大とかそういうところでやっていたとか、あったりするんですけどね」

Q:すごく荒削りだけど、ポテンシャルある感じがする選手もいました。

「いますよね。ああいう、なんかマイボールにできたり、アタックが強い子みたいなの。本人もそういう特徴はわかってるし、『ぼく、パスとかはもうできないんで(笑)』みたいな。徹します!みたいなのっていいなって思いましたね(笑)。すごくないすか? せっかくの週末に来て、『僕は徹します!』って言うの?(笑)。だから、すごいなと思って、やっぱりサッカーっていうのは」

Q:今日はリーグ開幕戦が延期になって、次はいつ決まるかはわからないのですか?

「わかんないっすね。2節も暫定の8月で。でも、聞くとグラウンドが取れ次第、前に詰まってくみたいな感じでもあるんですよ」

Q:発表されている日程も変わっていくのですね!

「みたいですね。けっこう流動的なんですよ。それはたぶん、相手との都合が合えば、『じゃあこっちでやりましょう』みたいなことは全然ありっていう感じみたいで。試合でお金は発生しないんで、やれることですよね」

Q:ひとまず新しいキャリアの第一歩を目撃できました。

「第一歩が見えましたね。僕も見えましたし。楽しいっすね。僕、やっぱりこっちの方が合ってるなっていうのは改めて感じましたね。本当に、前も言いましたけど、何かでき上がっているものよりも、まだ全然完成しないところで、『こういう世界もあるんだ』というのをやっぱり感じてもらう方が、僕はやっぱり。あー、楽しいなって思いますね」

reported by 今井雄一朗

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