赤鯱新報

【U-18ミニインタビュー】杉浦駿吾 「10番をつけて、大きなプレッシャーの中で今年はサッカーをしたかった」

今季の名古屋ユースの背番号10を背負うのは、エースストライカーとしての重責も担う点取り屋である。各年代別の日本代表の常連であり、昨年はクラブが戦略的パートナーシップを結ぶイタリアのASローマのユースチームへの練習参加も経験。今季はトップチームの沖縄キャンプにも参加するなど、クラブからの期待度も感じられる逸材は今季2種登録もされ、さらなる注目を集める存在にもなった。プレミアリーグも開幕し、負傷でやや出遅れたところもあった杉浦だが4節までですでに3得点と調子を上げてきており、今後さらなる活躍も求められるところ。彼とともに2種登録された西森悠斗と森壮一朗に続き、ようやく杉浦にも話を聞くことができたので、ここにお届けする。

Q:今シーズンは序盤でやや出遅れたところ感もありましたが、戻ってきてしっかり結果も出てきました。ようやく本格的にシーズンが始まったという感じでしょうか。

「プレシーズンを通じてチームのやりたいことがだいたい形になってきている中で、そこに自分が入れていなくて。復帰した時はそれが一番の焦りというか、自分だけちょっとそれが理解できてないなっていうのは感じたので、そこに焦りはあったんですけど。プレミアリーグが始まってしばらくしたら慣れてきたので、今はもう特に焦りとかもなく、目の前の試合に集中してやれています」

Q:トップチームの沖縄キャンプ参加から始まったようなところもあった2024年でもありますが、3年生になるということも含めて、どういうシーズンにしようという気持ちで始まったのでしょうか。

「個人としてはやっぱり、まずはユースの絶対的存在になるっていうところと、自分がチームを勝たせるっていうところ、トップの試合に少しでも絡んでいくということを目標として掲げていました。チームの中での役割は自分が決めて勝たせるだけじゃなくて、自分のプレーだけじゃなくピッチ外でも目を配って、自分がもっと引っ張ってチームを動かす。キャプテンは(青木)正宗なんですけど、その立場に乗っかりすぎずに、自分なりの色を出していけたらなと思ってシーズンを始めました」

Q:3年生、最上級生になるとやはりチームに対しての自分の態度や考え方は変わると思いますが。

「最高学年として…でも、去年も自分はそういうつもりでやっていたんで、そこはあんまり変わりはないんです。でも年上の選手がいなくなって、チームの底上げというか、チームの総力は上が突き抜けていかないと上がらないと思うので、下を見ないわけじゃないですけど、まずは自分が突き抜けていけたらなって。人間性のところでもそうですけど、最高学年としてまずは上が突き抜けていくんだっていうのは意識しています」

Q:プレミアリーグ3節での2得点など、杉浦選手の状態も上がってきていますが、今シーズンの自分が出したいパフォーマンスや成長しなければいけない部分など、この1年の自分の成長については?

「一番の課題はフィニッシュの質もそうですけど、やっぱり強度や連続性のところはまだまだ、沖縄キャンプの参加も通しても足らないなというのは感じたので。課題を挙げれば連続性のところです。でも自分はゴール前での強みというのはあるので、そこは絶対に伸ばしていきたいなって思います」

Q:まずは背後を取ってシュートを打つ、ゴールを決めることが杉浦選手の持ち味だと思います。プロを目指していく上でも、先ほどの突き抜けていく部分でも、自分の特徴はどう捉えているのですか。

「トップチームのキャンプに行ったことで、ユースで強いとか、ユースで速いとか、そういうものはトップに行ったら全然だったので。フィジカル的要素はもっと上げなきゃいけないですけど、トップ基準にしたら今そこで突き抜けるのは難しいです。だからやっぱり止めて蹴るとか、外すとか、奪われないとか。そういう個人戦術のところに本当にもっと目を向けてレベルアップできれば、全然狙える目標も大きくなると思うんです。一番の差を感じたのはフィジカル面ですけど、そこはすぐには埋まらないというのはわかったので、それなら、日々運ぶ、外す、奪われない、サッカーの根本的なところをもっと追求していきたいなって思いました」

Q:それを経験できたことで、やはり普段の練習や公式戦の中での意識も上がりましたか。

「はい。以前はやっぱり、ちょっとフィジカルのところはごまかしていた部分があるんですけど、試合になったらそんな『ミスったからフィジカル使わない』とかはありえないので。ちゃんと振り返りとか、サッカーに目を向ける時間というのは確実に増えましたね」

Q:沖縄での札幌との練習試合で2得点、3点目も取れそうでしたが、ああいう経験は励みになるというか、自分を確かめられたようなところもあったのでは。

「まあ、あの試合は相手のテンションがっていうのもあったんで。励みにはなりましたけど、そんな自信にというよりは、過信しすぎずに謙虚にやっていこうかなと思いました」

Q:そして2種登録されたことでプロの試合に出られる資格を得たわけですが、純粋にそう登録してもらえたことで考えるようになったことはありますか。

「2種登録してもらったことに対しては本当に嬉しいですし、ユースの選手としての責任というのは大きくなるんで、そこでも成長できるのかなっていうことは思っていて。でも登録されて終わりだと納得いかないというか。ここから本当にユースで結果残して、トップに行くチャンスがあれば、そのチャンスをつかめるように日々を無駄にせずにやっていくのが一番現実的なのかなって思うので。ほんとに毎日毎日を大切にしていきたいと思います」

Q:沖縄キャンプ参加の時の、トップの選手やスタッフとのコミュニケーションはどうでしたか。

「稲垣選手とかは食事の時とかに、本当に普通に同じチームの選手のように話してくれたりしたりしましたし、スタッフでも吉村さんとかはユースで一緒にやっていたので話もして。そこで、トップの選手たちは本当によく会話するなっていうのは感じました。やっぱり年齢とかもあって固まっちゃう部分もあるとは思うんですけど、その中でも稲垣選手とかは本当に話しかけてくれるし、永井選手も話しかけてくれました。その人間性という部分は鑑というか、お手本にする要素が多かったので、ほんと勉強になりましたね、そこは」

Q:そのコミュニケーションの中で何かヒントを得たとか、タメになることを聞いたとか、ありましたか。

「稲垣選手からはフィジカルのところは、もう高校生のうちから本当にやっておいた方が良いというのを言われて。キャンプの途中でそういう話をしてもらって、僕もそれは感じていた部分ではあったんですけど、トップの選手が言うなら本当にそういうことなんだろうなと思ったりして。そういうサッカーに関することをけっこう話してもらいました」

Q:チームはプレミアリーグを戦っている最中で、これから他の大会も始まってきます。今のチームの状態は、取り組んでいることなども含めていかがですか。

「やっていることは絶対に間違っていないですし、状態としてもまだまだ成長できるチームではあると思うので。けど、やっぱりもっと個人個人がボールを受ける勇気だったり、個の領域というか、個の力、個人戦術というのは自分も含めてもっと上げていければ、組織もレベルが上がると思うので。そこは三木さんとか佐枝さんの言うことをしっかり聞いてくいうか。その考えの中で自分たち選手の色も出していけたらいいなっていうのは思ってます」

Q:プレミアリーグはの成績も悪くない立ち上がりになっています。良い勝ち方もできていますし、得点の取り方も手応えをつかめていると思います。さらにできるな、みたいに感じている部分はありますか。

「今年のチームは『1、2、3、4、5』と使いたい、狙いたいスペースの番号を決めていて、たとえばニアゾーンのところが2とか、相手センターバックの背後が1とか。チームにそういう共通認識があるので、そこを使うための、使い方とか使う回数とかはほんとにこの数試合でだいぶ良くなってきているんです。でも、その先のクロスの質とか、シュートの質とか、コンビネーションのところはもっと高めていく必要があるのかなって思います」

Q:その番号は優先順位だったりもするのですか。

「いや、そういうことでもなくて、自分たちのゴールの近く、相手のFWの後ろが『5』で、そこから近い場所から順番に『5、4、3、2、1』みたいな感じで。これはわかりやすいので、それもやりやすさになっている感じですね」

Q:なるほど。たとえば『もっと2番に人が欲しいな』とか『3番のゾーンもっとちゃんとしよう』とか、わかりやすく修正もできそうですね。

「はい。『3番の取り方』とか。『そういうシーンになったら受け手はポジション変えて』みたいな。チーム全体としての戦術の中に個人の考えがないとうまくいかないんで。ほんとにそこは頭も使うし、そこは成長できてるのかなって思います」

Q:もちろんトップ昇格がいまの目標の一番だと思いますが、プロになるということに対する今の自分の気持ちというのは、どういったものがありますか。

「トップの練習に行って、(鈴木)陽人とか見て、そんな簡単じゃない世界なんだなっていうのは改めて感じました。プロに対する思いで言えば、でもサッカーで生活していけるって本当に幸せなんだろうなって、選手たちを見て感じたので、自分もそうなれたら本当にいいですし。それを夢としてやってきたんで、そこはひとつ、また夢に向かう活力が増えたなっていう風には感じます。でもそのためにはサッカーだけじゃないっていうのもわかったんで、ほんと人間性のところも高めていかないといけないなっていうのは思いました」

Q:個人的な感想ですが、すごく顔つきが変わったような気がしています。1年ごとにもどんどん変わってきているとは思いますが、去年に比べても今の方がすごく引き締まって見えます。外見だけじゃなく、自分の変化は自分で感じていますか。どこかのタイミングで自分がグッと、変わった感覚があるだとか。

「でも、これまでは良い時にケガしてというのが続いていたので、劇的に変わった瞬間っていうのはないんです。でも、やっぱり代表とかローマに行かせてもらったという経験は本当にでかいなって思います」

Q:U-17日本代表での経験は、相当に悔しかった経験でもあるのでは。

「ケガして、ギリギリ大会前に復帰したんですけど、入れずに。そうですね。悔しかったっすね。あれは。アジアカップの大会中とかは、そんな個人の事情を出せないし、出さないのが、チームのために動くのが普通なので。大会中は思うところもありましたけど、やっぱりチームのためにっていうのが一番にあったので。本当、悔しさを押し殺してやって、終わって帰ってきて。ワールドカップに向けて頑張ろうってなっていた中でケガしちゃって。運もありますけど、そこは実力不足だったのかなと思いますね」

Q:逆にローマでの練習参加はすごくポジティブな経験だったんじゃないかと思います。今の自分にどんな影響あった出来事でしたか。

「ローマに行って、帰ってきた時には本当に個人戦術が、ローマは練習時間をすごくそれに割いていたので、そういう個のところが大切なんだなって感じて。その時にローマの選手とインスタ交換してるんですけど、この年代で移籍してるんですよね。ほんとにもう、こういう世界なんだなっていうのは思って。なんか、自分が行った時にローマの服着てた選手が、今は別の服着てローマの選手と握手してる写真が上がったりしている。ほんとにシビアな世界なんだなって感じて。それを見られるってだけでも、だいぶ自分にとってプラスの経験になってるなって思います」

Q:単純に言葉が通じない環境自体はどういうものでしたか。

「その時はほんとに、苦痛というか(笑)。だったんです。でも、今思えば、そういう違う環境で何ができるかっていうのは、ひとつこの先もポイントになってくると思うんで。その点では、あの時の自分は何もできなかったなって。言葉の壁を越えられずに、何もできずに終わっちゃったなって。だから今は日本ですけど、1年生に最近は絡みに行ったりっていう、新しい挑戦は少しずつですけどしてるって感じです」

Q:違う環境とのコミュニケーションを積極的に取ろうと。今まではあまりやってこなかったことなのですね。

「ひとつ上とはよくかかわらせてもらっていて、でもそれは小さな頃からやっていたのでほぼ同い年みたいな感じでやらせてもらっていたんです。でも年下とはあんまり喋ったことがなかったので、そこはもうちょっと広げてみようと」

Q:今季はまだ始まったばかりですが、今後のシーズンの目標、自分が個人的に達成したいことは何になりますか。

「個人としてはトップ昇格とトップチームデビュー。プレミアリーグでは2桁ゴールというのを掲げています。チームとしてはもちろん優勝で、それには自分が点を取れればそれでいいっていうわけにはいかないので。もう自分は3年生で、10番背負っている中で、どれだけチームに影響をもたらせるかっていうのは、もたらしていかないといけないなっていうことを掲げてやっています。得点という結果にプラスして、チームのエンジンになれるように。それは目標として設定していますね」

Q:背番号10は付けたかった番号ですか。

「10番は…はい、そうっすね(笑)。7番でも良かったんですけど、(西森)悠斗が7番で自分が10番になったのは、自分が『10番つけたい』って言って、チームメイトも受け入れてくれたからで。10番つけて、大きいプレッシャーの中でサッカーをしたかったんで。いい選択したなって思いますね」

reported by 今井雄一朗

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