赤鯱新報

【U-18レポート】五月晴れ、快晴のホームゲームに打ち上がった4発の花火。仲間のためにと躍動した選手たちが、難敵相手に大勝を収めた。

■高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WEST 第5節
2024年5月5日 11:00 KickOff 豊田市運動公園陸上競技場
名古屋グランパスU-18 4-1 ヴィッセル神戸U-18
得点者:4’山田海斗(神戸)14’八色真人(名古屋)45+1’西森脩斗(名古屋)65’大西利都(名古屋)83’杉浦駿吾(名古屋)
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この試合はいつもは撮れない集合写真も撮ることができた。気合の入った表情の選手たち。松嶋好誠の手には富川勇斗のユニフォームが。

プレミアリーグ5節はいつものトヨタスポーツセンター第2グラウンドではなく、同じ市内の豊田市運動公園陸上競技場での開催とあってクラブもPRを強化。結果、797人と普段の倍以上の観客が詰めかける盛況の試合となり、その期待に応えるように名古屋U-18が躍動した。試合開始早々に先制されるもすぐに追いつき、前半のうちに逆転すると後半にも2得点を追加。スタメンのFW3人全員にゴールが生まれ、4得点すべてがファインゴールという最高のエンターテイメントは、彼らユースの試合に魅力を感じる人々を確実に増やしたに違いない。

立ち上がりは厳しかった。ピッチ中央にブロックを形成するようなヴィッセル神戸U-18の戦い方に名古屋は苦戦。ボールをつなごうにも壁は厚く、なかなか前線にボールを届けられないままに失点を喫した。「神戸のセットプレーが強いことはわかっていた」(西森脩斗)とはチーム全体の共通認識だったが、そこに隙を見せてしまったのは序盤の時間帯だからこそに反省は必要だ。ただ、良いことではないが前4試合のうち3試合で先制を許し、逆転もしくは同点に追いついてきた選手たちは落ち着いていた。「逆転できる力はあるから逆転はする」とは池間叶の自信の一言だ。失点のあとに焦らず戦況を理解し、どこに突破口があるかを考えられるチームはそこから、一気に試合をひっくり返していった。

待望の今季プレミア初得点に西森脩斗もこの表情、そしてスタンドに向かって駆け出す。

ポイントはアグレッシブな守備だった。神戸の守備を把握すると、次は「脩斗のところで前進はできていた」(杉浦駿吾)という起点を足掛かりに、高い位置で相手のビルドアップに狙いを定める。前で引っかけての速攻、つまりファストブレイクが生まれ出すと、14分にまずは杉浦のアクションから八色真人が豪快ミドル。「流れが悪かったので、とにかく力強く。ゴールも見ずに」と打ち込み同点に追いつくと、前半の終了間際には伊澤翔登のクロスを西森脩斗が頭で流し込み逆転に成功。西森脩は5節にしてようやく今季のプレミアリーグ初得点となり、ハードワークも報われた。

後半は前に出てくる神戸のベクトルを利用し、名古屋の攻撃が多角的に。サイドだけでなく中央からの崩しも増えていくと、65分に大西利都が右サイドの角度のないところから叩き込み、83分にも八色のスルーパスから杉浦がダメ押しの4点目。後半の得点はどちらも中央の高い位置が起点であり、「あそこが空くのはわかっていた」という八色の言葉にもあるように、名古屋が試合を上手く運んだ。ピンチも相応にあったが萩裕陽の好守もあり、3バックの青木正宗、神戸間那、森壮一朗らのプレーもアグレッシブに機能。きっちり抑えて、かつ攻め続ける90分間は、攻め続ける名古屋の方が足がつっているぐらいに果敢だった。

多くの観客に素晴らしい試合を見せただけでなく、この日は大切な仲間にも勝利を届けたかったと杉浦は言う。欠場が続いている富川勇斗がこの日は観戦に訪れ、試合前後には仲間たちと時間を共有。杉浦は「勇斗が来てくれていたりして、やっぱり誰かのために戦うエネルギーっていうのはこの試合、本当に大きかったです。一番はそこで、この試合の結果を導いてくれた」と語る。富川もロッカーで「活力をもらっている。元気にしてもらっている」と声を掛けたそうで、「誰かのために闘う」というトップチームのテーマも受け継ぎつつ、彼らがこの日を走りきったことには感動も覚えた。

健闘を称え合う選手たち。インテンシティの高い、動きの多い好試合だった。

試合前にはU-10の選手たちがエスコートキッズを務めたり、ボールパーソンにみよしFCの選手が来ていたり、場内アナウンスで伊藤ケンと千賀翔太郎が美声を響かせたりと何かとトピックには困らない一戦は、無用な失点以外は満点の出来と言えるだろう。快晴のピッチで得た大勝を自信に変え、U-18はまた次節のアウェイゲームへと笑顔で向かっていった。

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