【U-18レポート】思い通りに行かない部分での苦戦と、思い通りの得点で見事な逆転勝利で歓喜のプレミア開幕戦に。
■高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WEST 第1節
2024年4月7日 11:00 KickOff トヨタスポーツセンター第2グラウンド(天然芝)
名古屋グランパスU18 3-1 ファジアーノ岡山U-18
得点者:49’末宗寛士郎(岡山)73’野中祐吾(名古屋)86’野中祐吾(名古屋)90+5’鶴田周(名古屋)
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なかなかヤキモキもさせられたが、ある意味では実に名古屋U-18らしい爆発感のある開幕戦勝利だった。相手の岡山U-18はこれがプレミア初昇格ということもあり、サポーターも多数が来場。我らが名古屋ユースサポーター“YB”たちとの応援の競演も雰囲気よく始まった今季の公式戦初戦は、三木隆司監督率いる新チームの課題と可能性の両方を大いに堪能できる好ゲームとなった。
今季からトップチームと同じ3-4-3のシステムを採用し、選手たちの役割やチームの挙動も昨季までとはかなり変化した中でのプレシーズンは練習試合などの状態も良く、新鮮味も相まって期待感の高い開幕戦だったが、立ち上がりは苦戦した。フィジカルも強く、ポゼッションの質も良い岡山U-18の攻撃の前に名古屋は守備の対応で苦慮。ウイングバックが上がったその背後のスペースを執拗に狙われ、3バックの左右の選手がカバーしなければならないエリアと人数の負荷が高く、組み立ての落ち着きや厚みが出せないままに、1トップの大西利都やシャドーの西森脩斗、神田龍らに頼る単調な攻撃ばかりが繰り返された。
相手のポゼッションによる左右の揺さぶりにも苦しめられながらも、今季はボランチがメインになる八色真人や今季は捲土重来を期する野村勇仁らがボールタッチの回数を増やしてからは展開も改善。左右ウイングバックの伊澤翔登や池間叶は高い個人能力で反撃の起点ともなっていたが、彼らがより良い位置でプレーできるようになってからは、そのひとつ後ろの森壮一朗や神戸間那らが攻撃にかかわることが増え、森は良い縦パスで、神戸は意外性のある盛り上がりでアクセントを加えて徐々に展開を押し返していった。
攻撃に多彩さが出てくれば相手の対応も変わり、大西や西森脩などのプレーにもキレが増してくる。12分には縦パスを受けた大西が惜しいシュート、22分には神戸の右サイドでの持ち運びから生まれたチャンスで左右に分厚く攻め、最後は池間のシュートでこれも決定機。45分にはコーナーキックから森が狙い、アディショナルタイムには大西がまたも惜しいシュートを放って岡山のゴールを脅かした。ネットを揺らすまでには至らなかったが、3-4-3ならではのサイドの突破力と今季は佐枝篤コーチ指導のもと、得点力増を目論むセットプレーに威力を見せたことは後半につながる良い仕掛けであったと言えるだろう。
だが後半は開始早々の4分に縦のコンビネーションから岡山の末宗に決められ先制を許し、追いかける流れに。「特に今日は後半にうまく意識が合わなくて」と八色真人も語ったように、シンプルに前線を狙うプレーとビルドアップの意図が嚙み合わず、セカンドボールが拾えないばかりかミスも目立って劣勢に陥った。三木監督は52分に神田を杉浦駿吾、西森脩を松嶋好誠に代えて八色のポジションをひとつ上げ、よりボールが持てる布陣に変更。オンのプレーが得意な松嶋の投入によってさらに中盤でのボール保持が落ち着き、杉浦と八色のシャドーがタメを作って全体を押し上げることにはつながっていたが、セカンドやクリアが相手にしか行かない流れは止まらず。八色も言ったこのあたりの「すり合わせ」は次節以降の大きな課題になっていきそうな気もする。
試合が動いたのは66分の野中祐吾の投入からだった。この日は季節外れに気温が高く、岡山にも足がつる選手が続出する中、名古屋の野村もこの時間で足がつり、ベンチは野中をチョイス。「(杉浦)駿吾と(松嶋)好誠が呼ばれた時に自分も行くんかなって思ったんですけど」と出番を待っていた野中はこれまた想定とは逆の左に入り、池間がボランチへ。今季はウイングバックと3バック左がメインになる池間の3ポジション目はもともとがこのポジションということもあり、違和感どころか頼もしいばかりのパフォーマンス。池間は前半から独力で局面を変えるプレーを連発しており、早くも格の違いを見せ始めてもいた。彼が中盤で試合を作るようになり、松嶋が持ち前のドリブルをより前で出せるようになり、シャドーがより前で勝負できるようになっていたことも、ここからの逆転勝利の呼び水となっていたことは間違いない。
試合は練り上げてきたセットプレーによって大きく変化した。試合前日、ふらりと立ち寄ったトレーニングを見ていると、最後にみっちりと行われていたのがセットプレーだった。聞けば今季は5点以上取るという意気込みで練習していると佐枝コーチも選手も胸を張る。72分の杉浦の強烈なシュートが弾かれて得たコーナーキックのキッカーは八色。ニアに鋭く飛び込ませたボールに反応したのは杉浦と野中で、2枚目に突っ込んでいった野中が押し込んで同点ゴールである。「1点は絶対に取ってやろうと思っていた」と有言実行の一撃は、今季のチーム公式戦初得点という“開幕”を告げる号砲にもなってチームを勢いづけた。
1-1になって岡山に足がつる選手が増え、そういった部分でも優位に立った名古屋は86分に逆転。1点目とは逆サイドの左からFKを今度は松嶋が蹴り、またも野中が目ざとく押し込んだ。「まさか自分が2点取ると思ってなかったんで(笑)」と自分に驚いていた野中は2回ともビッグジャンプでゴールを喜び、逆転にはベンチメンバーまでフルスプリントで“ゴール裏”に集結。雄叫びを上げる選手たちに、このテンションの高さには鈴木陽人や貴田遼河ら先輩たちの影響も見た。アディショナルタイムにはその直前に交代出場していた中原蒼空の仕掛けから松嶋を経由して、やはり交代出場の鶴田周が右サイドで仕掛けて右足を強振。強烈なシュートがネットを揺らし、試合を仕留めた。後半怒涛の攻撃を見せるのもここ数年の名古屋ユースらしく、新体制となってなお彼らのアイデンティティを感じる部分には頼もしさを感じた。
試合後にはサポーターたちと風チャントを歌い、勝利のジャンプで締め。開幕戦からこれが見られるだけでも景気がよく、次節以降への弾みもつくというもの。まだまだ課題は多いが磨きがいのある新布陣、セットプレー、選手の組み合わせも同時に感じられ、期待感のある船出になった名古屋U-18の2024年。長いようで短い1年間の戦いは、まさしく幸先の良いスタートで飾られた。
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