赤鯱新報

相手のパワーはしのぎきるも、決勝点を取るには至らずスコアレス。【U-18プレミアリーグWESTvs米子北:フォトレポート】

■高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2023 WEST 第16節
2023年10月1日 11:00 KickOff/トヨタスポーツセンター 第2グラウンド(人工芝)
名古屋グランパスU18 0-0 米子北高校
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前節で久しぶりに勝利を収めた名古屋U-18は今週もホームでプレミアリーグWESTを戦った。米子北高を迎えての一戦に選手たちも気合十分に試合前の円陣で叫ぶ。

見ているだけで疲れるようなタフな試合を90分耐え抜いたものの、連勝とはならなかった。主力に欠場の多い苦しい台所事情からすればこれを健闘とすることもできようが、それでも勝つチャンスはしっかり作れた試合だけに、終了の笛を聞いた瞬間の名古屋U-18の選手たちの悔しがり方も納得はいく。前週に連敗を止め、「ターニングポイントをつくろう」と有言実行ができた喜びも束の間、やはり勝負はそう簡単なものではなかったようだ。「そういう相手に対しては、前期だったら最後の最後でこちらが隙を作ってやられたりっていうことが多かった」と石橋郁弥は一定の手応えを感じつつも、やはり勝てるチャンスがあったことに浮かない表情だった。順位表では上位の相手に対し、相手の持ち味にしっかり対抗しての勝点1は悪くはない結果でも、頂点を目指す者にとってはこの引き分けはやはり痛い。

この日のMVP級の活躍だったのが大田湊真。愚直にロングボールを放り込んでくる相手に対し、高い打点のヘディングで防波堤になり続けた。

ロングボール中心の米子北の戦い方には、真っ向勝負で対抗できていた。「キーパーもすぐに蹴ってくるのはわかっていた」と野田愛斗が話すように、ピッチを大きく使うというよりは縦にダイナミックな相手の特徴は、つまるところ空中戦の勝率とセカンドボールの回収率が主導権争いのカギとなる。この日は長田涼平が欠場だったが代わって大田湊真の相棒を務めた青木正宗がしっかりとした対応を見せ、ほぼ無敵だった大田と共に名古屋陣内の制空権を握って試合の流れを渡さなかった。後方が安定すれば味方の動きも定まり、周辺の選手たちも明確にセカンドボール回収に動けたことも大きく、また野田や内田康介らボランチも空中戦に強みを見せたことも米子北の攻勢を許さなかった一因として見逃せない。

石橋郁弥はキレキレだった。ダブルマークは当たり前の中、縦への突破をバシバシ決めていく。

ただし米子北の4-4-2ブロックは分厚く緊密で、「外回しのプレーが多くなったり、ゴール方向に仕掛けれないっていうシーンが多かった」(野田)とややワンパターンな攻撃に終始する傾向があった。それでも石橋の突破力はマーク2枚を軽々いなすだけのものがあり、特に前半は左サイドでの崩しがひとつの攻め手となっていた一方、その後のフィニッシュにどう持ち込むかという部分には課題も残る。石橋はカットインでも違いを見せたが、米子北のブロックの間隙を縫うにはシュートの難易度は高く、それは逆サイドの八色真人も同様だった。ならばとクロスに選択を切り替えても、そこには数的優位を保つ相手守備陣が構えており、西森悠斗や野中祐吾の飛び込みもやはり難しい選択にはならざるを得なかった。

高体連特有とも言えるパワフルなスタイルに、一歩も引かなかった名古屋U-18。全員がフィジカル面でも相手に負けずに食らいついた。

両チームともにシュートの少ない前半だったが、20分過ぎに試合が止まったところで名古屋の面々が修正をかけ、ゲームを優位に進めていったのは見事だった。野田曰く、「テンポが遅かったので、相手のスライドが間に合っていた」という部分に修正をかけ、先手、先手をとっての攻撃に自らを補正。石橋もそのことで仕掛けやすくなったとのことで、試合の流れと彼らの狙うがしっかり噛み合っての戦いにはチームの成長も感じるところだ。ボール回しの速さでスペースをつくり、そこにサイドバックも含めたインナーラップを絡めたところも効果が高く、伊澤翔登、池間叶の特徴も上手く活かして戦えたことも良かった。

怒涛の猛攻も、相手の決定機もあった後半の戦いを経て試合はスコアレスで終了。悔しそうに天を仰いだのは内田康介。

それだけに得点が欲しかったのが残念なところで、90分を通して空中戦の強さを維持してくれた大田らに報いることができなかったことはチーム全体としての反省点か。後半は米子北もやり方を工夫してきたところがあり、縦一辺倒だった攻撃にサイド攻撃の割合を増やし、かつロングボールの競り合いで大田らを避けてやや下がった位置でのフリックを狙わせるなど二の矢、三の矢も放ってきた。後半は名古屋8本、米子北13本と数字的にはシュートの飛び交うオープンな戦いであり、お互いの守備陣、そして守護神たちのファインセーブが試合を動かさせなかったところもある。

結果、どちらも譲らないまま90分が経過し、得点なしの引き分けで試合は終了した。負けはしなかったが、勝ってもいない、手応えとしては勝てた試合という雰囲気は双方の選手たちの反応を見るに明らかで、仕留めきれなかったことを石橋も野田も受け入れ、その上で悔しがった。この結果を受け、暫定で順位は6位となり、次節はアウェイで神村学園との対戦を控える。ホームで逆転負けを喫した相手だけに、アウェイであっても勝ってリベンジといきたい戦いに、野田は「サッカーの本質である決めるか、止めるか、というラストのところの質をトレーニングでもっと上げていきたい」と愚直に挑む気概を口にした。まだまだ苦しい戦いは続くが、成長する選手たちの気持ちは常に前へと向いている。

reported by 今井雄一朗

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