赤鯱新報

三木隆司U-18監督インタビュー「育成と結果が両立する、厳しく楽しいグループにしていきたい」後編

トップチームが一新の感も強いシーズン始動を迎えるなか、U-18もまた新たな節目を迎えている。2018年から6年間もの長期にわたり監督を務めた古賀聡氏が退任し、昨季はトップチームのヘッドコーチだった三木隆司新監督を迎えての1年がスタート。1月から始まった新体制は先日のミズノカップで矢板中央や甲府U-18などに快勝するなど上々の滑り出しを見せている。今回はそのカップ戦優勝の余韻の中で三木新監督を直撃。新体制における指導や育成方針などをざっくばらんに語ってもらった。

後編
結果を求めることと、育成は同じものとしてやっていく。

Q:1年間の計画みたいなものは立てますか。こういう時期にはこうなっていてほしいな、というような。
「そこは現状、1ヵ月経って、プレミアやプリンスにはやっぱり勝ち負けもあるので、ある程度は両方を求めていかなきゃいけないけど、計画通りに行くとは思えないんです。でも完璧にここで、こうなってっていうことよりも、僕の考え方自体、じゃあ目標があって、そこから逆算して全部考えていくというよりも、積み重ねをした上で達成する、というタイプなんですよ。やっていった先に何があるのか。1日、1日の積み重ねができないやつが、できていないのに“ここ”だけを見ていてもね。本当に逆算してできるのであれば、そっちの方が効果的なのかなとも思うんですけど、でも、僕自身があんまりそこを理解できてないというか。どうやったらそうなるのかの成功体験がちょっと少ないかなと。自分自身がね。指導者としてもそうだし、計画するという部分は僕自身の苦手分野なので、逆に勉強しなきゃいけないかもしれない。でもたとえばトップで健太さんが『こうなりたいから』という考えだったり、その計画を全部言ってるかといえば、別に言っているわけでもないんですよ。だからそこは難しいとこだなって。僕が本当に思っているのは、まず今ができないやつが何言ってんのかって。できているやつが目標から逆算してっていう順番かなとは思う」

Q:まずは逆算できるところまで行こうよ、と。
「そうですよ。まずはもっと一人ひとりのベースを上げなきゃいけないし、だからチームとしてどうこうっていうのはあんまり考えてないです。チームのこういう形が、得点パターンが理想だな、とかも、それは居る選手の特徴によっても、試合に出ている選手の特徴によっても変わるから、そのイメージは特に僕自身が持っていないです」

Q:逆にちょっと楽しみだったりするんですか。どう変わってくるかなとか。
「そうですそうです。ゴールひとつとっても組み合わせでどういうのが出てくるかなとか。でも、いろいろなアイデアを 出した中でどう選ぶの?っていう風にはもちろんしますけどね。攻撃はもう全部どうぞ、とは言わないですけど(笑)。そのあたりはあまり決めてないですね。いろいろな個人の良いところも反省点も毎試合出てくるし。そこでちょっとずつプラスにしていけるような感じですかね」

Q:そもそもU-18の監督に言われた時の心境や、決めるまでの気持ちはどんなものがありましたか。
「いや、基本的に自分がやりたいからできるっていうものではないじゃないですか。どのカテゴリーでも。トップチームでも。『いや、俺はここしかやらないですよ』って言えるだけの力だったり、自信があればいいかもしれないですけど。僕はまだまだ、トップチームの監督をやったことがあるわけじゃないし、ここをやってくれと求められたなら、『はい』っていう感じですよ。頑張ります、と」

Q:監督をやること自体への興味や関心は強かったのでしょうか。
「U-15の監督をやって…、でも監督か…。決めるのは監督ですからね。トップは尚更に。でも、アカデミーは何と言うか、もちろん監督が決めることはやりますけど、クラブがどういう風にやりたいというクラブのフィロソフィーがあって、そこに僕しかできない、僕じゃなきゃできないことや、井口(大輔コーチ)じゃなきゃできないこと、佐枝(篤コーチ)じゃなきゃできないこと、(中村)亮太(コーチ)じゃなきゃできないことが、集まればいいかなと。僕ひとりでやろうなんて、全く思ってないです。みんなで。フィールドだったら4人で見てやった方がそれはいいだろうし。4人の目で見た方が、選手も見られてると思うから。監督がドシッとしているのも、もちろんそれはそれで良いのかもしれない。でも、僕はドシッとやるつもりも、してやろうとは思ってないから。選手にとっては、高校生には監督って存在は強いのかもしれないけど。古賀さんが監督の時も、僕はコーチとして遠慮せずに言う、選手に伝えるっていうことはやってましたから。そこに遠慮して、自分が思ったことを言えないと、選手にとってはあんまり良くないんですよ。たぶん感じないと思う。僕が言ってることをそのままなぞるだけで、伝わんないと思うので。理解して伝える。コーチも理解して伝える。僕に足りないところだったり、見えてないところだったりは、たぶん傍から見たらわかると思うので。第三者だからわかるところはコーチは言えばいい。とは思っていますけど。井口や佐枝や亮太がどう思っているかはわかりませんけど」

Q:でも三木監督は扉を開けて、それを歓迎すると。
「僕がひとりで全部なんかできないですよ。全然できないです。だからスタッフがたくさんいるわけじゃないですか。トップチームもそうでしょう。ひとりで全部なんて絶対無理ですよ、いろいろなサッカーをするとか。このサッカーもできるし、このサッカーもできるよっていう人なんていない」

Q:得意分野と不得意分野は絶対ありますね。
「ビルドアップがすごく上手い、しっかり丁寧にポゼッションしてってやる人が、堅守速攻のサッカーできるかって。やってないじゃないですか。そんな人はいないと思いますよ。だからこそ、みんなでやるんです。別にどこかに偏るつもりもない。何でもやった方がいいと思う。相手が嫌なことを感じてやったらいい。でも、練習でやらなきゃいけないことは、それなら余計にたくさんある。たとえば練習だったらやっぱりロングボールは出ないから、どうしても少なくなるじゃないですか。じゃあ、そういう相手にどうすんの、ってなる。だったらそういう練習していた方がいいのかもしれない。みんながそうやって考え始めると、たぶん練習の中でもいろいろなシチュエーションが出てくるんです。『こういうのやっといた方がいいじゃないですか』『こういうのもやっといた方がいい』っていう意見が出た方が、選手にとってはいいのかなとは思います」

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