赤鯱新報

【名古屋vsV三重】レビュー:肝を冷やした辛勝に、それでも得られたチームの上積み。結果良ければ次へのビジョンはそれでも広がる。

波に乗る三重は64分に梁賢柱をトップ下に入れてさらに形を変化させると、名古屋のディフェンスは完全に後手を踏む。大きな展開だけでなく、右ワイドの池田直樹とトップの田村翔太の連係を梁がサポートし、噛み合っていないにも関わらず前に出続ける名古屋の背後を陥れることが格段に増えた。たまらず長谷川監督は長澤と河面に代えて和泉竜司と森下を入れ、全体のパワーを取り戻そうとしたが、もとが攻撃的なふたりである。とどめを刺そうという攻め気の裏を使われる展開自体は変わらず、むしろ加速し、71分にはついに決壊した。「トップ下の15番をフリーにさせすぎた」とは藤井の悔恨である。チャンスの後の速攻に隙を突かれ、要注意だった15番、梁のスルーパスをエースの田村にねじ込まれた。その5分後、今度は後方からのフィードを田村にワンタッチで裏に落とされ、抜け出した梁が仕留める。3点差は1点差になり、あれほどあった優位性はどこへやら。残り15分の攻防に、緊張感が増した。

結果から言えば名古屋は何とか逃げきったわけだが、危ないシーンはまだ何度かあった。相手のパワープレーに対してもはっきりとした対応がなく、ボールキープで時間を浪費するわけでもなく、時に逃げるようにロングボールを蹴り、相手の攻撃回数をむやみに増やしもした。野上や藤井の個人技によって最終ラインでの優位性は辛うじて保てていたが、紙一重の場面が彼らにもあったのは否めない。藤井は「何かあっさりと失点してしまったので、そこは自分たちDFラインがしっかりチーム全体を引き締めなきゃいけなかった」とうつむいた。勝ったことは良しとして、それでも反省しなければいけない点がこの試合には多すぎた。メンバーがかなり混成だった、相手に未知数なところが多かった、アクシデントも重なった。それは考慮すべき要素でも、ましてカテゴリーが3つも下の相手に3点先制の試合を、苦戦の終わり方にしてはいけない。

ただ、勝てたことでポジティブな面を抽出し、次への上積みへと変えることもまたできる。野上や河面の活躍はリーグ戦メンバーのテコ入れにもつながっていくだろう。酒井と内田の負傷の具合が気になるところだが、それも石田と貴田の勇躍が穴埋め以上の期待感を呼ぶ。他会場ではいくつかのジャイアントキリングが起きている中、“順当に”勝ち上がれたこともしっかり評価すべきこと。要らぬ冷や汗はかいたが、結果は結果だ。反省すべきは反省し、得たものがある選手はモチベーションへとそれを変え、より強く戦えばいい。一発勝負の怖さを味わえたことは、次の戦いをより堅実で強力なものへと変えてくれそうな気もする。

reported by 今井雄一朗

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