【クラブニュース】名古屋グランパスがフロント陣の新体制を発表。新社長に久米一正元GMが昇格し、会長には何と豊田章男トヨタ自動車社長が就任！（8900文字）

2015年04月16日 20時40分　
カテゴリ： クラブニュース • レポート

チームが土曜日の清水戦へ向け非公開練習を行なっている最中、名古屋駅近くのトヨタ産業技術記念館に多くの報道陣が集結していた。この日行われた名古屋グランパスの取締役会にて、新たなフロント陣の人事が承認。前社長の佐々木眞一氏が副会長に昇任し、久米一正GMがクラブ史上初となる常勤の社長に就任、取締役の中林尚夫氏が専務に昇任した他、会長にトヨタ自動車社長の豊田章男氏の昇任が発表された。

ボールを手にフォトセッションに応じる豊田章男会長(左)と久米一正社長。日本サッカー界最強のタッグが誕生した。

この4名はそれぞれが代表権を持つ取締役であり、それぞれの役割を持って今後のクラブ運営にあたるという。久米新社長は「グランパスの歴代社長は日本の経済界のリーダーばかり。自分に務まるかと不安にも思ったが、自分にしかできないこともあると思った」と就任を決意したいきさつを披露。豊田会長は「2010年、グランパスに私がどれだけ勇気づけられたか。恩返しをしたい」とグランパス愛を熱く語り、報道陣を唸らせた。豊田会長、久米社長を中心とした新体制による名古屋グランパスの、今後の動向から目が離せない。

フォトセッションのワンシーン。日本代表の体脂肪率の話題にかけて、「久米さんは体脂肪率20％以上」との豊田章男会長の一言に、久米一正社長も大爆笑。

豊田会長、久米社長の就任会見の様子は以下の通り。（全文掲載）

【役員人事について】
●佐々木眞一副会長：
「副会長に就任しました佐々木でございます。社長時代には皆様に大変お世話になりました。副会長となりましても、限りなくグランパス愛を貫いていきたいと思っております。私からは今回の役員人事の狙いにつきまして、少しお話をさせていただきたいと思います。

今シーズン、名古屋グランパスは『愛されたいクラブ宣言』を発表しました。これはホームタウン活動を充実させ、地域の皆様から愛される、そしてチームを本当に強くする、それからスタジアム。名古屋のスタジアムは残念ながら瑞穂競技場が規格として小さく設備的にも改善の余地があるということで、立派なスタジアムを何とか作ろうという三本柱で皆様に本当に愛されるクラブを目指す。これを実現するために、どのような役員が適任であるかを考えた今回の人事であります。クラブ創立当時はトヨタ自動車社長でありました豊田章一郎氏がグランパスの初代社長としてトヨタグループや名古屋の財界、行政の方々に働きかけたことでグランパスの支援が大いに盛り上がったわけであります。

今回の『愛されたいクラブ宣言』をしたことで、創立時の志をもう一度思い出しまして、さらに進化させた形でのクラブ運営を考えたと理解していただきたいと思います。そこでトヨタ自動車社長である豊田章男氏は大スポンサーの社長であることもさることながら、自らもスポーツマンであります。またスポーツを支援する形で社会への恩返しをという考えを強くお持ちであることはご承知の通りだと思います。

この度、会長を引き受けて頂くということに関しては、株主様からも全面的なご賛同を受けております。また社長人事につきましては、昨年までクラブライセンスの確保で苦しんでおりました。経営的にも、体質改善が進みまして、クラブライセンスの問題も一段落し、これを機に一段のチーム強化に専念することができる社長として、久米元GMを。ご存知の通り、チーム作りの現場はよくご存知ですし、これまで他のクラブやJFAでの要職を務めたご経験もあり、適任であると考えた人事であります。皆様方には今まで通りまたさらに不断のご支援、ご鞭撻をお願いして、私からの挨拶とさせていただきます。ありがとうございました」

【代表取締役会長就任の挨拶】
●豊田章男会長：
「みなさんこんにちは。この度、名古屋グランパスがより地域に愛されるクラブになるために、地元企業の一員として、少しでもお役に立てるかと思い、会長就任をお引き受けしました。名古屋グランパスはJリーグ開幕当初から参加を続けている歴史あるチームであり、トヨタとしてもクラブ創立以来様々な形で支援を続けてまいりました。地域の皆様、出資企業・スポンサーの皆様、そしてサポーターの皆様のご支援もあり、2010年には初のリーグ優勝を遂げることができました。しかしここ数年、優勝争いに加われず、下位に低迷しているグランパスの現状は、一人のファンとしても大変悔しく、残念であります。今の順位はグランパスの定位置ではないと思っております。

今回、新体制に代わりますが、久米社長はこれまでチームの強化責任者として手腕を発揮して頂いており、グランパスの現場を一番よく知っている方でもあります。今後グランパスが、Jリーグやアジアのタイトル争いの常連となるためには、いま目の前の勝負にこだわり、結果を出すと同時に、中長期的な視点で選手を育成し、チームの基盤を作ることが重要だと思われます。現場をよく知る久米社長がクラブの経営全体を見ることで、チーム・フロント一丸となった強固な体制の元、チームの強化が進むものと期待しております。

先ほど、佐々木副会長からも『愛されたいクラブ宣言』についてのお話がありましたが、グランパスが地域により愛されるクラブになるためには、サポーターの皆様にとって選手、クラブがより身近なものとなることが必要と考えております。私はスポーツの持つ力によって、地域社会がより豊かになれる、元気になれると信じております。今後は地域やサポーターの皆様や出資会社を含めたスポンサーの皆様と心を一つに、グランパスの会長としてより強く愛されるクラブ作りを進め、スポーツを通じた地域の活性化に貢献したいと思います。皆様どうぞよろしくお願いします」

豊田章男会長昇任の会見には、スポーツ記者だけでなく経済系の新聞記者も多数が参加。「グランパスに恩返しがしたい」と熱っぽく語る様からは、本気度がうかがえた。

【代表取締役社長就任の挨拶】
●久米一正社長：
「みなさんこんにちは。この度、株式会社名古屋グランパスエイトの社長を仰せつかりました久米でございます。今日は大変お忙しい中、たくさんの皆様にお集まりいただきましてありがとうございます。厚く御礼を申し上げます。私は2008年から名古屋グランパスにお世話になっておりまして、今年で8年目のシーズンを迎えております。実は昨年、佐々木副会長より社長の打診を受けました際、本当に私でいいんだろうかと悩みました。皆さんご存知の通り、初代が豊田章一郎元社長、現在のトヨタ自動車の名誉会長を始め、歴代の社長は日本経済のリーダーたる方々ばかりです。サッカー畑の私に本当に務まるのだろうかと、いろいろ考えました。しかしよくよく考えている内に、そんな自分だからこそできる何かを求められているのかな、と感じたりもしました。

ちょうど私は今年還暦を迎えます。同期が引退していく年齢に、必要として頂けたことを意気に感じまして、お引き受けした次第でございます。2015年、クラブは『愛されたいクラブ宣言』を表明し、様々な取り組みを初めております。この宣言には3つの骨子がございます。
一つ目はホームタウンのすべての皆様にもっと身近にもっと楽しく、もっとドキドキワクワク感のあるチームになるように。
二つ目はチームがアジアから世界水準を見つめて、Jリーグそしてアジアチャンピオンとしてクラブワールドカップに常時出場を狙えるチーム作りを進めていこうと。
3つ目、スタジアム。新たな熱狂空間を創造する。パロマ瑞穂スタジアムと、豊田スタジアムの二つのスタジアムで非日常感あふれるエンターテイメント感を創出する。この3つでございます。

かねてより私は『サポーターは情熱だ、選手は魂・心だ、フロントは頭脳だ』と言い続けてきました。愛されたいクラブ宣言を通して、サポーター、選手、フロントが良好な関係を構築し、維持していくことが真に皆様に愛されるクラブ作りになっていくんだと思い、目指していきたいと思います。ご承知の通り、今季はここまでナビスコカップは2勝1分でグループリーグ1位と奮闘しておりますが、リーグ戦では1勝2分2敗と成績が振るいません。例年の課題ではありますが、スタートダッシュに失敗しております。今年もサポーターの皆様の期待を裏切る形となっていまして、大変ん申し訳なく思っております。ホームタウンに元気を与えて、クラブの掲げる理念、『このまちの元気と笑顔のために』を実現するために、チーム強化を持続して、2010年に優勝した時の輝きを取り戻すべく、勝利にこだわった、諦めずに、投げ出さずに、頂点を目指していきたいなと思っております。今後ともぜひご支援、ご声援のほど、よろしくお願い申し上げます」

社長に就任した久米一正元GM。「トヨタにしっかりとした提案ができるかは、私の腕の見せ所」と自信を語った。

（残り 5575文字／全文: 9471文字）

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