赤鯱新報

【フォトレポート】好チームであるからこその、超えるべき壁の出現。開幕戦で勝利した広島ユースにまさかの大敗。U-18プレミアリーグWEST写真レポート。

プレミアリーグ再開初戦のスタメンはこの11人。伊澤翔登が右サイドバックに戻り、鈴木陽人は右サイドハーフへ。杉浦駿吾がローマに”留学”中なので、那須奏輔と組むのは西森悠斗が選ばれた。

トップチームと大枠で言えば悩みは同じということでもある。今季のプレミアリーグWESTでは序盤から好調で、貴田遼河のプロ契約や2種登録選手のトップ帯同による主力の不在にも負けず、チームの総力で上位争いを続けてきた名古屋U-18だが、その強さ故に相手の分析も進み、明確な対策をもって対峙されることが増えてきた。「ここ最近はそういうチームが増えてきている」。懸命に中盤から勝機をうかがい、チームの攻守に良い流れを生み出そうとしていた野田愛斗は昨今の対戦相手の傾向をそう語り、そこにまんまとしてやられていることに危機感を見せた。長田涼平も「古賀監督から『前期と後期じゃ全く別のリーグだ』と言われていた」と悔しげで、開幕戦は5-2と圧倒した相手に1-4の大敗を喫したことに、守備陣としての反省も口にした。

劣勢の続くなかでは、ボランチの野田愛斗にもややストレスが感じられた。

とにかくボールが、攻撃が前に進まない試合だった。その理由を野田は「自分たちの武器である速さを、ブロックを敷いて封じてきた」と言い、立ち上がり3分に警戒していたはずの広島ユースのエース、中川育にカットインシュートを沈められ、さらにメンタル的にも先手を取られた。先制したことで広島ユースは前に出る圧力をさらに強め、球際の争いでも名古屋U-18は劣勢に。もう一つの強みであるサイドの突破力も、右の鈴木陽人、左の石橋郁弥には徹底マークが待っており、伊澤翔登、池間叶の両サイドバックも守備に追われてなかなか前に出てこられない。起点のできない攻撃は奪われた際のマネジメントも整えにくく、28分にはカウンター気味の速攻で2失点目。守備が完全に後手を踏んだ失点に、名古屋U-18の焦りは目に見えるようだった。

前半途中から鈴木陽人は中央でもポジションを取るようになった。西森悠斗との入れ替わりを流動的に、相手をかく乱しにかかる。

切り替えての後半は選手の配置を明確に変え、狙いも明確に定めて反撃に出る。前半途中から右の鈴木とFWの西森悠斗が流動的にポジションを入れ替え、相手の目先をひっかきまわしてチャンスメイクすると、後半はその形をポジション変更として継続。「陽人はより狭いスペースで前を向く力がある」(野田)ことで、守備を中央に引き付けてのサイド攻撃という流れが生まれ、攻撃の質が上がるとチーム全体も前に出て行けるように良化した。61分の那須奏輔のゴールもしっかりチームが前に出て行ったからこそのもので、右でつくった流れを野田がやや強引なドリブルで持ち込み、相手DFとの競り合いのこぼれ球を那須がねじ込んだ。しかし後半開始16分での1-2というスコアは同点、逆転へのきっかけとなるに十分だったが、ここで長田の言う「今日は立ち上がりだったり、プレーが切れた時、たとえば飲水タイム後とかに失点があったので」という「それは前からの課題」が首をもたげる。

75分には石橋郁弥に代えて西森脩斗がピッチへ。しかしその直後に失点し、求められるプレーはよりシビアになってしまった。

75分、名古屋U-18は石橋に変えて西森脩斗を投入し、さらに攻勢を強めようとしたが、その直後、同じ75分に失点をしてしまう。偶然か、それは交代をした左サイドを破られ、クロスはピサノアレクサンドレ幸冬堀尾が何とか触れたものの、ボールの行先には広島ユースの選手が。落ち着いて決められ、1-3と離されると、リスタート直後のDFラインのボール回しをインターセプトされ、連続失点。那須のゴールで一気に上がった反撃ムードはあっという間に焦りと厳しさの蔓延する空気感へと変わり、以降は交代策を含めて効果的な攻撃はついぞ繰り出せずに終了の笛を聞いた。振り返れば、広島ユースの”名古屋対策”にしてやられた感が強い、悔しい敗戦となった。

サポーターの待つゴール裏に挨拶に来る名古屋U-18の選手たち。気落ちする表情に、サポーターたちからは温かい声が飛んだ。

試合後に話を聞いた野田も長田にも、共通していたのはコミュニケーションという課題だ。野田が「もっと早く気づいてっていう改善みたいなことは試合中にできないと。もっとそこは自分たちができないといけないところ」と言えば、長田は「もっと全員で声をかけて、1回気を引き締めて入らないと、また同じような展開になってしまう」と失点の原因となった部分に「会話」が足りなかったと振り返る。もちろん彼らが黙ってプレーしていることはなく、それぞれに気づいたことや要求は口にしながら試合を進めていたが、彼らが問題視するのは勝負のキワといった部分に対して、どれだけアラートになっていられたかということでもある。鼓舞する声掛け、戒める声掛け、試合状況に対する変化の声掛け、コミュニケーションにはいろいろあるが、まだまだ猛暑の続く中での集中力を維持する意味でも、勝負強さを演出するような声の使い方は確かに欲しい。

この敗戦によって広島ユースに順位では抜かれたが、まだまだ首位の静岡学園を追うチームとしての地位を失ったわけではない。どうにもトップチームと境遇が似通ってきてしまうのは”親子”故なのか、しかし高校生は日々変化し、驚くべき進化を1週間で遂げることもしばしばある。野田はそのためによりシビアな練習を求め、「練習でプレミア以上の強度を出していかないと、この舞台で勝ち続けるというのは本当に難しい」と決意を見せた。長田はもっと頼もしい。「また1から自分たちで、この1週間をやっていきたい」と言った後に、良く通る声で付け加えた。「悔しいけど、次は勝ちます」。クラブユース選手権から尾を引く嫌な流れも、断ち切れるのは自分たちだけである。

reported by 今井雄一朗

□試合フォト

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