赤鯱新報

【若鯱通信】第9回:U-18注目選手インタビュー 菅原由勢「“ワールドカップで日の丸を背負った”誇りを胸に、次のステージへ」<前編>

「本当はまだインドにいる予定だったんですけどね」
帰国以来、日に日に増していく悔しさを押し殺すように、彼は笑った。
U-17日本代表の主力選手として戦った“ワールドカップ”の舞台は、
大器のモチベーションをさらにかき立てる刺激に満ちていたという。
菅原由勢の次なる戦いは既に始まっているが、そのためにも聞いておきたい。
世界を相手に闘った経験が、彼にどんな変化をもたらしたのかを。

取材日:10月27日

「歓声でこんなに足が伸びるなんて、と思った」

Q:まずは遅ればせながらU-17ワールドカップお疲れ様でした。あちこちから取材依頼も多くて忙しいのでは?
いや、そんなことないです。ありがたいです!(笑)。

Q:そうやって周囲の人たちが喜んでくれる状況は、どのように感じているのですか。
僕は大して活躍したわけではないんですが、そうやっていろんな方々が「おかえり」って言って祝福してくれて、本当にグランパスの選手で良かったなって心から思いました。

Q:率直に聞きますが、このワールドカップにまつわる期間というのは長かったですか。短かったですか。
正直言えば、長いなと思ったこともあれば、終わってしまえば短かったなと思うこともあって。どっちも感じているというところですね。

Q:もちろん、大会としてはもっと長く試合をし続けている“予定”だったと思いますが。
本当はまだインドにいる予定だったんですよね。帰国は早まってしまったんですが、今はもうJユースカップが始まっているので、頭はそこに切り替えています。ワールドカップのことをうまく還元できたらと思っていますね。

Q:切り替えているところ申し訳ありませんが、今日はU-17ワールドカップのことをたくさん聞こうと思います(笑)。
はい、全然大丈夫です(笑)。

Q:大会に入るまでの準備など含め、良い入り方ができたところはありましたか。
今回は負傷者も多くて、監督はメンバー選考について悩まれたと思います。でも自分としてはあの舞台で自分の力を出すだけでした。そこから集合した時にはみんな良い顔をしていましたし、まず静岡で内容の濃いキャンプができました。そして初戦が大事だということは僕らもわかっていましたし、そこにどれだけ100%で持って行けるか、というのが僕らの中でもキーポイントとなっていました。

Q:やはりコンディション面などを重視したところはありましたか。
自分自身の身体のキレとしては静岡に行く前から良かったので、あまり心配はしていなかったんですが、やっぱり暑さも湿度も全然違う中での試合になるということはあったので。ただ、インドのホテルにもバスタブがあったので、それを使ってケアもできましたし、自分なりの調整はできたと思います。

Q:初戦はやはり緊張しましたか。
多少は緊張もしましたが、そこまでではなかったです。ここまで来たんだし、できないことがあるならそれは課題だと割り切ってやろうと思っていました。だからか、そんなに緊張せずに済みました。

Q:チームとして考えるとどうでしたか。
内容というか、試合の入りの部分で固さはあったんですが、1点取ってしまえば流れるようにという感じでもありました。そこから良い時間帯に先制することもできて、前半のうちに試合を決めることもできたので、良い流れで1戦目は終えられたかなと思いますね。

Q:そしてフランス戦があったわけですが、これはいろんな意味で良い試合になりましたか。
自分は正直言えば、フランス相手にも全然やれると思っていたんですが、相手は日本対策でマークをはがすのが面倒くさい守備をしてきたり、カウンターでメチャクチャ足の速い選手を走らせたりしてきました。そうしたフランスの戦術に、僕らが自分たちではまりこんでしまったところがありましたね。ただ、これも世界大会なんだなということも感じました。

Q:今大会での代表チームは、大会用の戦い方をしたのか、それともやってきたことを貫き通したのか、どちらと言えますか。
コンセプトとしてはボールを自分たちで持っている時間を長くするというものがあったんですけど、フランスやイングランドが相手になるとどうしても技術の差が出てしまいました。そこで多少は割り切って蹴るところは蹴っても良いんじゃないかという話もしていました。それと僕らの代表の原点は「相手よりも走る、戦う」という部分があったので、そこまで戦い方を変えたということはありませんでした。ベースの部分がしっかりとありましたし、すごく大きなものとしてあったので、変えることはなかったですね。

Q:ご自身のプレーとしても、今まで通りに自分らしくやれたという感触でしょうか。
それもありますが、やっぱり世界の選手を相手にすると燃えてくるというか。相手には世界的なビッグクラブの選手もいましたから、自分はDFとして絶対に潰してやろうと思ってもいました。それにワールドカップの大観衆の中で、自分が思っているよりも身体が動いてくれた部分も感じましたね。自分の足って(ボールに対して)ここまで伸びるのか、って思った瞬間もありました。ワールドカップってすごいなって、感じました。

Q:ものすごい大観衆だったらしいですね。
50000人超えでした。正直びっくりもしましたけど、試合中に観客は気にしていませんでした。PKを蹴る時も「いるだけだな」って思っていたぐらいで。

Q:ただし、会場のテンションにはかなり乗せられてしまったと(笑)。
そうですね(笑)。どうしても変なプレーで沸いてしまうところもありましたし、良いプレーでもスタンドは沸きました。でも良いプレーで沸かせてしまえば、自分たちも乗ってやれたので、日本ではなかなか経験できない環境でしたね。純粋に面白かったです。

<後編へ続く>

reported by 今井雄一朗

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