「川崎フットボールアディクト」

宮代大聖1G1A。インサイドハーフ瀬古樹の活躍もあり2-1で逃げ切りに成功/天皇杯3回戦 vs水戸【レポート】

天皇杯3回戦
7月12日(水)(19:03KICKOFF/Ksスタ/2,498人)
水戸 1 – 2 川崎

■左サイドの連携

鬼木達監督は天皇杯3回戦の水戸戦において、前戦の横浜FCの先発から9選手の入れ替えを敢行した。大胆な采配に思えたが、対する水戸は先発11人全員を入れ替え、さらにシステムも4-4-2に変更していた。

フロンターレは次節、首位横浜FMとの大事な直接対決が控えているが、水戸も降格圏の21位金沢とは勝ち点3差の18位と後が無い状況で、切迫度で言えばフロンターレよりも上ということだとも言える。

そんな水戸戦で個人的に注目していた左サイドについては、期待通りに名願斗哉と佐々木旭が先発。この両者の縦関係は、6月25日の大宮と7月2日のFC東京との練習試合、2連戦で、目に見える形で改善できており、公式戦でどこまでの連携が出せるのか、楽しみだった。

そんな二人の縦関係に注目しつつの試合は佐々木の積極的な攻撃参加が目立つ序盤となる。8分に名願からのパスを受けた佐々木が個人技で左サイドを突破してマイナスクロスを上げた場面を筆頭に、攻撃的な姿勢を示し続けていた。

対する名願は、9分に中央に運びパスを繋げた場面など、周りをうまく使う部分では良さを出せていた一方で、見たかったドリブルでの突破はほとんど見られず。実戦でのドリブル突破の難しさが改めて浮き彫りに。

ちなみに名願は62分間の自らのプレーを振り返り「持った時は自信を持ってできているので、悪くはないと思うんですけど、相手が怖いプレーっていうと、もっとゴールに仕掛けるところだと思うので。そこはまだまだ自分に足りてないところだと思います」と述べて、より仕掛ける姿勢が必要だとの認識を示している。

また佐々木は名願との連携について「最初、守備のところで練習試合からしっかり話していて、うまくできてたと思います」と解説したあと「攻撃のところは自分たちの良さというのはお互いに分かっていたと思うので。そこを活かし合いながらできてたのかなと思います」と述べて手応えを示していた。名願、佐々木それぞれの成長と、そして両者の連携のこれからには引き続き期待してきたいと思う。

なお、前半は少々落ち着かない展開になっていたが、そうした現象について、名願のこのコメントはヒントになる。

「最初の方はボールが入ったら、仕掛けようと思ってつっかけたりもできてたんですけど、途中からボールを失くしたくないっていう、チームの気持ちというか、があってロングボールとかが増えちゃって、なかなかゲームが落ち着かない状況になってしまって」

また名願自身、ポジショニングで迷いがあったようで、そうした部分でも反省の言葉を口にしていた。

「自分がポジションを、内側に取るのか、外に張ってたほうがいいのか、あんまりはっきりしないままゲームを進めちゃっていたなというのがあって。そこは自分が反省しないといけないと思います」

ちなみに右ウィングで先発した宮代大聖については、ゴール前に入り込むことができる選手だということで、ワントップの瀬川祐輔との連携で攻撃を作れていた。その宮代に大きな展開でパスが入ると、すかさず右サイドバックで先発の松長根悠仁が攻撃参加して右サイドからの攻撃に厚みを付けており、良かった。

■先制点の瀬古樹

試合は前半25分の先制点で動く。水戸のパスをカットした瀬古樹を起点に、ショートカウンターを発動。宮代からの折り返しのラストパスを蹴り込んだ瀬古は、自らのゴールシーンを次のように描写している。

「いい奪い方というか相手のミスですけど、奪ったボールを縦につけて、そのままゴール前に入って行って、自分にボールが来たので。決めるだけでした」

またアシストの宮代は「今日は全体的にカウンターというか、ショートカウンターっていうのが多かったので。スペースがあった中で、いろいろな選択肢があってっていうのが多かったと思うんですけど。そこでいい判断ができたのかなと思います」と振り返っている。

前半に課題があるとすれば、追加点を奪えなかったという部分で鬼木監督もこの点については課題として会見で表明しているがこれは今季のチーム全体の課題でもあり、改めて精度を高めてほしいところだ。

なお、瀬古については状況を見ての上下動が的確で、攻守においてサポートを続けていて素晴らしかった。その瀬古の動きについて鬼木監督に聞いてみたところ「特別大きな指示をしているというよりも、インサイドの選手に求めていることをやってくれていると思います」との説明に加え「プラス、彼の戦術眼と言いますか、そういうものは非常に良いものを持っていると思っています」とのことで納得の説明だった。

ちなみに橘田健人に瀬古の働きを聞いたところ、瀬古の動きに連動した遠野大弥のポジション取りも良かったとのことで左右のインサイドハーフそれぞれの働きを褒めていた。このあたりはキャプテンらしいバランス感覚だった。

■追加点

試合は後半に水戸に持たれる時間帯が増えたが、橘田はその要因として「足が止まっていたので」と指摘。また水戸の濱崎芳己監督は「自分たちがやるべきことがはっきりしたこと」が後半の攻勢の理由の一つだとして「ある程度前半の経験で、できるんじゃないかというところを感じていた」のではないかとして、そうした感覚をチーム全体で共有できたところがあるのではないかと話していた。

後半開始早々の47分に水戸に決定機を作られるなど苦しい展開になったが、58分には瀬古からのパスを受けた宮代が反転で持ち出してシュートにまで行く場面を作るなどして追加点を狙った。

1-0の試合は、80分に動く。きっかけは途中交代出場の高井幸大で、水戸のスローインを頭で跳ね返すと、これを拾った橘田が前方の宮代に鋭くパス。素早く反転した宮代に対し、左斜め前に瀬川祐輔が。右横には山田新がランニング。そんな中、宮代の選択はストライカーらしくシュートだった。

「前半からああいうショートカウンターでバイタルエリアが空いてっていうのは何度もあったので。思い切って振った結果、ラッキーな部分もありましたけど。決まって良かったなと思います」

シュートを打たなければ何も始まらないという意味では、責任を背負う形でのシュートと、これをねじ込んだ決定力は称賛に値するものだと言えた。

■1失点しながらも逃げ切り

残念なのはこのゴールの直後の81分に水戸の寺沼星文に1得点を許した甘さ。

フロンターレとしては、2得点目を奪った後も水戸に対し緩むこと無く前線からプレスを掛けたが、これを水戸に外され、逆にカウンターを打たれてしまった。2点差にして水戸の気持ちを折ったつもりでいたところ、直後に1点差に追いつかれ、水戸を勢いづかせてしまった。このあたりの試合運びの拙さについて橘田は「2点目を取るところまでは良かったので。そこでやらせないことが大事ですし、あれで1点、入れられたからまた相手も、行けるという風に、勢いに乗ってきたので。そこでそういう失点をしないようにやっていきたいなと思います」と反省していた。

水戸の試合終盤の猛攻の中、90+1分には唐山翔自に決定的なシュートを打たれるが、上福元直人をすり抜けたシュートは高井がゴール直前でクリアして同点ゴールとはならず。

松長根に代わり、69分からピッチに入った高井はこの場面について「いや、自然にです、自然に」と流れの中のポジショニングだったと強調。過度に自慢することはしなかったが、GKが前に出た際のセオリーのカバーリングができており、そういう意味で「自然に基本の動きができていた」というファインセーブになった。

あれが決まっていたら、ホームの地の利のある水戸に逆転される試合展開もあり得たはずで、5年前の2018年の天皇杯3回戦と同じPK戦にまでもつれ込んでいた可能性もあった。フロンターレとしては中2日で横浜FM戦と対戦することもあり、チームを救うファインセーブだと言えた。

試合はそのままスコア動かず、2-1で終了。フロンターレがラウンド16に駒を進めている。なお対戦するのは横浜FCを下したJFLの高知ユナイテッドSCで、試合会場は高知県立春野総合運動公園陸上競技場とのことで7月13日に発表された。8月2日(水)19時KOとなっている。

(取材・文・写真/江藤高志)

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ