赤鯱新報

【若鯱通信】第7回:2017シーズン前半戦レビュー U-18高田哲也監督インタビュー「自分たちの力を発揮すれば負けないという自信を植え付けたい」<前編>

育成現場の長としてアカデミーの全カテゴリーを俯瞰しつつ、U-18の指揮を執る。
高田哲也アカデミーダイレクター兼U-18監督の毎日は多忙の極みだ。
しかしその確かな手腕はプリンスリーグを無敗で折り返し、クラブユース選手権でも確かな爪痕を残した。「FC東京と対戦していれば、それが事実上の決勝だったんじゃないか」とは、最高の賛辞だろう。チームは今年初の敗戦を経て、26日から再開するプリンスリーグ後半戦へと歩を進める。
その現状と今後の目論見を、高田監督に聞いた。

「チームのレベルは高い。攻守の切り替えは特にトップクラスだと思う」

Q:まずは直近の大会としてクラブユース選手権のことをお聞きしつつ、前半戦を振り返ってみたいと思います。
まず今年はプレミアリーグWESTからプリンスリーグ東海に降格してしまい、その意味でも大事な1年として考えていました。去年はダイレクターとして関わっていたわけですが、勝てないことに悩んでいましたし、自信を喪失している選手が多いと感じている中で新チームがスタートしました。

そしてちょうどいいタイミングでというか、今年は2年に一度行なっている海外遠征がある年で、スペインに行きました。現地では向こうの強豪チームとある程度互角にやり合うことができて、勝ったり、負けなかったりという結果を残すことができた。そこで自信を取り戻して、あるいは自信をつけて日本に帰ってくることができました。

そのまま船橋招待という大会に参加し、京都橘や桐光、東福岡、矢板中央、東京Vといった相手に無傷で戦い、優勝。ここで「オレたちはやればできるんだ」という自信が確信に変わったところがあります。

ただその後のプリンス開幕戦ではロングボールを次々と蹴られ、今までの試合と状況が違うことに面食らったようなところで結果は引き分け。それでもバタバタしたのはその試合だけで、その後は自分たちらしい攻撃的なサッカーをできるようになって、9試合で7勝2分と一度も負けることなく折り返せたことは評価できることだと思います。まあ、必要のない失点があったのはアレですが…(笑)。それも自分たちのミスからだったり、点差が開いた時に隙を作ってしまったり、自滅のようなものがほとんどだったので、そこは修正しようと話をしています。

そういった流れでクラブユース選手権に臨んだわけですが、愛媛、新潟、広島との予選リーグは全勝。やはり高体連のチームに比べるとクラブユースはしっかり後ろからビルドアップしてくるし、それはむしろ戦いやすさがありました。ピッチ状態には少し悩まされましたけど、1位で予選グループを抜けられました。しかし、課題は後からもお話ししますが、決定機はとにかく多く作るんですが、最後でネットが揺らせていない。フィニッシュワークの質、クロスの質、そこに入るタイミング、もっと細かい個人的な技術のところでも、まだミスが多かった。決勝トーナメント1回戦でも、前半で勝負を決められていたのにという試合だったんですが、後半にスーパーミドルを決められてちょっとバタバタしてしまい、PK戦にまでもつれこんでしまった。PK戦で負けるのはまあ仕方ないところがありますが、勝負を決めきる力がまだまだ足りない、幼いのかなという印象です。

良い形はすごく作っているし、チームでやろうとしていることをみんなで一体感もってやれている。たらればだけど、最後さえ入ればというところでした。冷静になって他の試合を3日間ほど見ましたが、ベスト4に入るだけの力はあると感じましたね。周りの関係者もそういう評価をしてくれていました。「事実上の決勝は、湘南に勝っていたら次戦の相手だったFC東京との対戦だった」と言われていただけに、残念な思いは強いです。それをポジティブに捉えるならば、また一つハードルができたね、ということ。プリンスリーグの残り9試合はおそらく構えられますし、プレミア参入戦でもそうかもしれない。そこも崩していくためには今のままではダメで、質をもっと上げていかないと、相手の攻撃にも耐えられなくなってしまう。点も取れなくなってしまう。だからこそ、「まだ甘いよ」ということを教えてくれた大会として、選手には伝えています。

Q:今月末から再開するプリンスリーグへの準備はいかがですか。
クラブユース選手権の後の4日間をオフにして、10日に久々の実戦として練習試合を行ないました。やっぱりスイッチがなかなか入りませんでしたね。ただ、その中でも要所要所では良いプレーが見られたし、主力の数名は代表などで不在でした。5人もいないとチームは変わってしまいますね。代わりのメンバーたちもやろうとしているのは見えるんですが、一人ひとりの質にこだわるところがまだ物足りない。チャンスだよと焚き付けてみても、なかなか難しいところはあります。

クラブユース選手権では自分たちの特徴は出せたと思うし、できると思っていたところができなかったという部分もありました。それがラウンド16での失点につながってしまったとは感じます。できている部分としてはボールにどんどん人が関わり、中央からでもサイドからでも攻撃できること。この表現で良いのかはわかりませんが、どこからでも点が取れるチームではあると思います。FWもサイドハーフも点が取れる、ボランチも点が取れる、そういう形は自分たちで作り出せています。ボールを大事にしながら主導権をとってやっていく狙いも、同年代ではかなり質は高いです。だけど、最後の質がね。シュートの精度が最大の課題です。このオフ明けからはシュート練習を少し増やして。たくさん打てば入るってわけでもないんですが、少しでも自信も持たせておくことも大事ですからね。

守備のところでは高い位置でプレスをかけて、ボールを奪いきる。そしてそのまま攻めてしまう。そのための攻守の切り替えの速さについてはかなりのレベルでできていると思っています。他のJクラブと比較しても速い。これは今年1年間、継続してやっていくことだと言っています。守備については、スペイン遠征で対戦したチームが球際にすごく激しさがあって、その刺激を受けた良さというのは帰国してからもずっと続いてはいたんですが、時間が経つにつれて最近は…。忘れているわけではないんだろうし、暑くなってきたこともあるだろうけど、前ほど行けなくなっています。その緩さというのが見えたので、暑いからこそ行こうぜと。この夏場でそれができるなら、冬場はもっと行けるよな、と言っています。ベースを上げようじゃないかとね。クラブユースで終わりじゃないし、Jユースカップもプリンスも残っている。チームは来年も再来年もある。そこで1対1で何もやらせなければ、絶対にやられることはないんだから、もう少しこだわっていこうよと。ゴール前の質と攻守の切り替え、そして球際。そして当たり前のことを当たり前にしっかりやろうと。

<後編>へ続く

reported by 今井雄一朗

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ