ニイガタフットボールプレス

【レビュー】~明治安田生命J1第12節柏レイソル~「前に進む意志」

3連敗中の重苦しい空気は、チームにはいっさいなかった。あふれ出るのは、ゴールを奪うために、ただひたすら尽きないエネルギー。だからこそ、スコアレスドローが明るい兆しとして感じられるのだ。

■明治安田生命J1第12節(デンカビッグスワンスタジアム)
アルビレックス新潟 0-0(前半0-0) 柏レイソル
[スタッツ / 13SH5、6CK4、21FK9]
■キックオフ / 5月7日(日)14:03
■得点=[新]なし、 [柏]なし
■入場者数 / 17,998人
■天候 / 雨、気温 / 16℃、湿度 / 90%
■審判 / 主審:池内明彦、副審:渡辺康太、鈴木規志、第4の審判員:坂本晋悟
※VARの機材が手配ミスにより試合会場に到着せず、VARは実施せず。

【メンバー】
[新潟]4-2-3-1:GK21阿部航斗、DF25藤原奏哉、5舞行龍ジェームズ、35千葉和彦、31堀米悠斗、MF8高宇洋、19星雄次(49分OUT)、14三戸舜介、13伊藤涼太郎、16小見洋太(74分OUT)、FW9鈴木孝司、SUB GK39西村遥己、DF15渡邊泰基、50田上大地、MF17ダニーロ・ゴメス、20島田譲(49分IN)、33高木善朗(74分IN)、FW23グスタボ・ネスカウ、監督:松橋力蔵

[柏]4-2-3-1:GK46松本健太、DF16片山瑛一、50立田悠悟、4古賀太陽、2三丸拡、MF6椎橋慧也、5高嶺朋樹、28戸嶋祥郎、14小屋松知哉(83分OUT)、10マテウス・サヴィオ、FW19細谷真大(74分OUT)、SUB GK21佐々木雅士、DF22ブエノ、24川口尚紀、MF11山田康太(83分IN)、30加藤匠人、FW49ドウグラス、9武藤雄樹(74分IN)、監督:ネルシーニョ

【警告】<新潟>藤原奏哉(55分、ラフプレー)、堀米悠斗(76分、反スポーツ的行為)、<柏> 細谷真大(33分、繰り返しの違反)、高嶺朋樹(45+2分、ラフプレー)、立田悠悟(50分、ラフプレー)、武藤雄樹(85分、ラフプレー)

【退場】<新潟>なし、<柏>なし

■カウンタープレスから攻め立てて

3連戦の3試合目にしてビッグスワンに戻ってきたチームは、3日前の前節・横浜FC戦(●0-1)からGK阿部、MF小見以外の9人を変更。前節に続いて、再びターンオーバーを取った。

一方の柏は前節から先発は変わらず。対照的な選手起用でゲームは始まった。

序盤、攻める新潟を、柏は4-2-3-1のブロックを組み、ミドルゾーンで迎え撃つ。一定のところまで新潟が前進すると人を捕まえにくる柏だが、新潟はテンポよくボールを動かし、ブロック攻略に取り掛かる。

狭く、厳しいところへのパスにチャレンジできるのは、4試合ぶりに出場するFW鈴木の存在が大きかった。ほれぼれするポストプレーがチームのパスワークを加速させる。

鈴木のエネルギッシュな守備も際立った。しかも、鈴木だけではいのだ。柏に圧を掛け、ボールを奪う隙を逃さない集中力と迫力が、チーム全体に満ちていた。最初のビッグチャンスになった9分の三戸のシュートも、右サイドから攻め込み、一度は柏ボールになりながら、すかさず星が奪い返すカウンタープレスから生まれている。

直後、柏陣内の右サイドに寄せてプレスを掛けると、苦し紛れの横パスを左サイドで小見がカット。その流れで堀米が深い位置からクロスを上げ、CKを得た。伊藤のCKを鈴木が頭で狙い、跳ね返りを蹴り込んだが、オフサイドの判定に。一連の流れの中で、柏の選手にハンドがあったかどうか、VARによる確認は機材の未着によりかなわなかった。

相手ゴールに向かうパワーを攻守で発揮しながら、新潟の時間が続く。15分にも、奪われたボールをすぐに奪い返すところから決定機を迎える。センターバックの舞行龍からパスを受け、サイドバックの藤原が右サイドを縦に仕掛ける。一度は柏MF小屋松にボールを奪われるも、藤原は即座に体を入れて奪い返し、三戸がボールを落ち着かせて攻め直す。舞行龍の縦パスを中に入って受けた三戸がフリックし、タッチライン際に攻め残っていた藤原につなげる。三戸が走るコースを見極めた藤原が絶妙な縦パスを通すと、鋭い切り返しから三戸がクロス。ゴール前で鈴木が相手DFを引っ張り、ファーでフリーの小見が渾身の右足シュートを放つ。しかし、柏GK松本の好セーブに阻まれた。

良い守備から良い攻撃につなげるチームは、3連敗中の苦しい状況にあることを感じさせなかった。カウンタープレスをたびたび発動できたのも、それだけ新潟が切り替えで上回っていた証しだ。カウンターアタックは柏の武器だが、自分たちがゴールを奪うためにボールを奪い返す、その意識が自ずとリスクヘッジとなり、よく機能していた。78分、ロングボールでFW武藤に抜け出されたシーンは、GK阿部が鋭く間合いを詰めてシュートブロック。数少ないピンチをきっちりと防いだ。

時間帯によってはコンパクトさを保てずにパスを奪われたり、プレスが効かなくなる場面もあった。プレーの強度と密度を上げていく取り組みは引き続き必要だ。

それでも連敗を3で止めるスコアレスドローに物足りなさではなく、明るい兆しを感じられるのは、前に進もうとするチームのエネルギーに触れられたからに他ならない。

象徴的だったのが27分のシーン。右サイドでのカウンタープレスでボールを奪うと、中央で伊藤が華麗にターンして左に展開。パスを受けた小見は3人に囲まれ、転んでボールを失いかけた。だが、あきらめずに左足を伸ばして伊藤につなぐ。ペナルティー・エリア内で受けようとした伊藤が相手に体を入れられ、転倒すると、小見が脱兎のごとく寄せて柏にそこからの攻撃を許さなかった。

チームが見せたのは、まさに松橋監督の言う、「ネットを揺らせるまで攻め続ける」姿勢そのものだ。勝利は、その先に待っている。

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