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☆☆☆無料記事☆☆☆「長谷川元希、その決断はシュート」【マッチレビュー】~明治安田生命J1リーグ第3節vs名古屋グランパス~

ホーム開幕戦でチームは新潟らしさを全開にさせた。立ち上がりからしっかりゲームをコントロールすると、攻守に狙いを発揮しながらゲームを進めていく。そして試合終了間際の88分、途中出場の長谷川元希が新潟初ゴールとなる決勝点を奪い、今季初の完封で2勝目を挙げた。

明治安田生命J1リーグ第3節/アルビレックス新潟 1-0 名古屋グランパス
■2024年3月9日@デンカビッグスワンスタジアム
■得点者/[新潟]長谷川元希(88分)、[名古屋]なし
■88分に訪れた歓喜

待ちに待ったホーム開幕戦。気温5.7度という寒さの中、新潟の選手たちの熱いプレーがホームのサポーターを沸かせた。4-2-3-1の新潟は前節から先発5人が変更。今季新加入の小野裕二が初めてメンバーに入り、1トップで先発した。さらに堀米悠斗が今季初先発。舞行龍ジェームズ、宮本英治、小見洋太が2試合ぶりの先発となった。開幕から連敗、いまだゴールのない名古屋(3-1-4-2)は新加入の山岸祐也、椎橋慧也、大卒ルーキーの倍井謙らが初先発するなど、前節から先発6人が変わった。

試合の立ち上がりは名古屋が前からプレッシャーを掛けてきた。16分には高い位置で永井謙佑にボールを奪われ、シュートを打たれたが、枠を外れた。

もっとも前半、名古屋の狙いがはまりかけたのはこの場面くらいで、新潟はパスでプレスをいなしながら、効果的に前進した(28分、新潟のゴールキックに良い形でプレッシャーを掛けながらパスワークで打開され、押し返された場面。名古屋は意気消沈したのではないか)。相手を背負っても力強い小野のポストプレー、GK小島亨介のピンポイントのフィードなども効果的に織り交ぜ、名古屋を押し込んでいった。

最初の決定機は19分。右サイドハーフ、松田詠太郎のパスをゴール正面で小野がワンタッチで浮かせて背後を取ると、回り込んだ左サイドハーフ、小見洋太がボレーでたたく。枠は捉えなかったが、流れるようなコンビネーションからフィニッシュに持ち込んだ。

23分には自陣でつなごうとする名古屋を小野、小見、トップ下の高木善朗がプレスを掛けて左サイドに追い込み、苦し紛れの縦パスをボランチの宮本が回収。すぐさま隣の秋山裕紀にボールを託し、秋山の縦パスから左のスペースに抜けた小野がクロスを上げる。松田がヘディングシュートを狙う決定機を迎えたが、シュートは名古屋GKランゲラックにキャッチされた。

このシーンには、チームが練度を高めようとしている要素が詰まっていた。前から守備をはめて三手目、四手目で奪って攻めにつなげるのは、高知キャンプのトレーニングでも意欲的に取り組んでいた部分だからだ。新潟は前半、名古屋に意図的な攻撃をほぼ許さず、0-0で試合を折り返した。

後半も、新潟はコンパクトなブロックを状況に応じて上下させながら好機をうかがう。57分には秋山が2センターバックの間に落ちての3枚回し。際立ったのはハーフウェーライン手前という、その高さだ。舞行龍の縦パスを内側に入り込んでいた藤原奏哉が相手を背負いながら的確にリターン、舞行龍のスルーパスに松田が抜け出し、クロスを送り込む。シュートは枠に飛ばせなかったが、ゴール前に一人入っていた小野がすばらしい動きで相手DFの前に回り込んでフィニッシュに持ち込み、サポーターを沸かせる。

長いボールを使って揺さぶりを掛けてくる名古屋に対し、ブロックを組んで応戦する時間が増えた後半。その分、名古屋の背後に生まれたスペースを、途中出場の谷口海斗、長倉幹樹、さらに前半から運動量の落ちない小見が走力を生かして脅かしていく。

名古屋にほとんど決定機を作らせなかった新潟にとって、最大のピンチは82分。途中出場の中山克広に広大なスペースに抜け出されるカウンターのピンチに。だが懸命に戻った藤原がシュートコースを限定し、グラウンダーのシュートを小島が冷静に股を閉じてストップした。

そして88分、歓喜の瞬間が訪れる。押し込み、攻め続ける流れで一度はボールを奪われたトーマス・デンだったが、すぐに奪い返し、攻撃につなげる。途中出場の長谷川元希がドリブルでボールを運んでいくと、ゴール前に谷口、左に長倉、右には小見が準備する中で、その決断はペナルティエリア手前からの左足シュート。相手DFの足に当たってコースが変わったボールは、弧を描きながら名古屋ゴールに吸い込まれた。まさしく、己が何者かを示す一撃であった。

雪が舞い、アイシテルニイガタがこだまするビッグスワンに、勝利を告げるホイッスルが鳴り響く。今季初の完封で2勝目を挙げたチームは、今季初の連勝に向かって加速していく。

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