ニイガタフットボールプレス

【Voice of the Pitch】~トーマス・デン インタビュー~vol.2「フィロソフィー」

ローテーションは今季のチームの大きな特徴で、そこにはCBも含まれる。そのラストピースとしてシーズン終盤に登場すると、守備でも攻めの姿勢を貫くチームの戦いを大いにバージョンアップさせた。コンディションを整えるまでに時間を擁したからこそ、持てる力を思う存分、爆発させるつもりでいる。

■すべてのパスが意味を持つ

――選手をうまくローテーションさせながら戦ってこられたのは、高いレベルで競い合えているからこそです。トーマス選手にとって、センターバック(CB)の競争はどのようなものに感じますか?

「それぞれに持ち味、強みがあります。そして重要なのは、みんながチームのフィロソフィーを理解し、プレーで表せているところです。それだけに、競争はかなりシビアなものだと感じます」

――松橋力蔵監督が推し進めているサッカーのコンセプト、フィロソフィーを、どう捉えていますか?

「まずは攻撃性です。このフィロソフィーに沿いながら、選手たちの特長がよく引き出されているんです。しかもワンタッチプレーがとても効果的に入ってくるので、サッカーに流動性が生まれる。

それからボール保持ですね。ただ保持率が高いだけでなく、どのパスにも意味がある。だからボールを受ける前に、次の次、さらにその次くらいまで考えながらプレーすることになるんです」

――そうしたフィロソフィーは、トーマス選手のプレーにもポジティブに影響しそうですね。

「間違いないです。とてもいい影響を受けながらプレーできていますよ。原則にただ従ってプレーするのであれば、ロボットがやっているサッカーのようになってしまいます。でもリキさんのサッカーでは、自分のアイディアや特長をうまくプラスしながらプレーすることができるんです。間違いなく、とても良いサッカーです」

――シーズン終盤、松橋監督のサッカーを公式戦で体現できるところまで来れたからこそ、先日、オーストラリア代表にも久々に選出されました(9月22日、25日の国際親善試合ニュージーランド戦。トーマス選手は25日の試合でプレー)。

「代表に呼ばれたのが4年ぶりで、自分にとって2試合目の出場でした。チームにとってはワールドカップ前最後の親善試合ということで、アーノルド監督としてもいろいろなところをチェックしなければならない試合だったと思います。オーストラリアで1試合、そのあとニュージーランドで1試合を行い、私はニュージーランドで行われた試合に出ましたが、とてもいい経験になったというのが率直な感想です」

――代表で活動している間、アーノルド監督とは、どのようなコミュニケーションを取ったのでしょうか?

「代表に合流する前から、少し電話で話をしていました。それから自分が出た試合は2-0で勝利したのですが、監督も私のパフォーマンスに満足していました。

言われたのは、『新潟に戻ってから残りの数試合に、しっかり集中して臨んでくれ』ということです。ワールドカップのメンバーに選ばれるかどうかは監督が決めることですが、今回の親善試合で私が代表に復帰できたことを、監督も非常に喜んでくれましたね」

――11月のワールドカップに臨むオーストラリア代表のメンバーは、いつごろ決まるのでしょうか?

「はっきりしたことは分かりませんが、おそらく今月の終わりから来月初めあたりだと思います」

――オーストラリアの対戦相手を見ると、初戦のフランスは強敵ですが、続くのがチュニジア、デンマークということで、グループステージでドイツ、スペインと同組の日本よりも決勝ラウンドに進む確率が高いのでは?

「いや、簡単ではないですよ(笑)。ワールドカップは戦術的にもメンタル、フィジカル的にもしっかり準備して臨まなければならない大会です。しかし、とにかく今回は準備期間が短い。いつもであれば1カ月くらい準備する期間がありますが、今回は集まって1週間ほどで初戦のフランス戦を迎えることになります。非常に難しい試合になるのは間違いないです。フランスだけでなく、デンマークはヨーロッパの予選で好調だったし、チュニジアも伝統国です。簡単な試合は一つもないですね」

(つづく)

【プロフィール】
Thomas Jok Deng / 1997年3月20日生まれ、ケニア / オーストラリア出身。182㎝、73㎏。DF。背番号3。スピードとジャンプ力、しなやかな身のこなしを生かしてボールを奪い去り、積極的に攻撃にも関わっていくCB。メルボルンビクトリー(オーストラリア)、PSVⅡ(オランダ)、メルボルンビクトリー(オーストラリア)から2020年、浦和レッズに加入。22年、アルビレックス新潟に完全移籍で加入した。ナイロビ(ケニア)で南スーダン出身の両親の間に生まれ、6歳でオーストラリアに移住、本格的にサッカーを始める。年代別のオーストラリア代表に選出され続け、昨年はU-24 代表キャプテンとして東京オリンピックに出場した。今年9月の親善試合で4年ぶりにA代表に選出され、11月のワールドカップ出場も期待される。

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