「川崎フットボールアディクト」

【コラム】【いしかわコラム】vol.6 板倉滉、自信を深めたプロ先発2試合目のパフォーマンス


■「ケンゴさんからボールを取りたい」
思い返せば、ちょうど1年半ほど前。プロになったばかりの彼にロングインタビューする機会がありました。

新人としてこのときの意識して取り組んでいるメニューを聞かせてもらったのですけど、身体作りを含め、自分自身の現状をしっかり認識して、先を見据えて取り組んでいる選手だと感じました。実際、プロになってから感じた周囲との力量の差は、想像していたよりも遥かに大きかったそうです。

「試合に出るという目標はありますが、まわりのレベルが高いですし、自分に足りないところもわかってきているので、まずは焦らずにじっくりとやっています。毎日『慌てるな。落ち着いて。今、やるべきことはやる』と自分に言い聞かせています」

プロになり、もっとも面を食らったのが「スピード」だったそうです。パス、動き、判断・・・トップチームはあらゆる意味でのスピードが段違いで。

例えば、チームでの紅白戦。
チームの控え組に入っている板倉がマッチアップするのは、大久保嘉人、小林悠、そして当時所属していたレナトでした。Jリーグ随一の攻撃陣と対峙するわけで、それまでのU-18の試合では大柄な体格を生かしたフィジカルコンタクトからのボール奪取という武器が、彼らの前ではまるで通用しなかったのです。というよりも、自分の間合いに飛び込ませてすらもらえません。ボランチでプレーするときも同様で、中盤で対峙する中村憲剛や大島僚太にも簡単にあしらわれていました。

「ケンゴさんとリョウタさんを相手にすると、まったくボールが取れないですね。自分の強みは当たりなので、ガツンと当たりにいきたいのですが、行くとダイレクトでパスをはたかれてしまう。そこでケンゴさんが後ろを向いているときに、うまく視野から隠れて奪いにいこうとしても、それでもポンポンと回されて取れない。ケンゴさんには『後ろに目がついているんですか?』と聞きたくなりますよ(笑)。ポジショニングも巧みで、ボールを受けるときに自分の背後に隠れてからスッと出てくる。5分×2本の紅白戦でも物凄く大変なので、試合の対戦相手は本当にキツいでしょうね。でもなんとかケンゴさんからボールを取りたいので、そこを考えながらやっていくトレーニングは楽しいです」

このときから約1年半。
麻生グラウンドでの練習を積み重ねながら、日々、しっかりと成長を遂げています。ここ最近は、コンスタントにベンチ入りしており、確実にチームの戦力として計算されつつあります。

横浜F・マリノス戦の勝利で、チームはチャンピオンシップ出場権を掴みました。
フロンターレのエンブレムをつけてプロサッカー選手として等々力でプレーすることが夢だったかつての少年が、クラブ初優勝の瞬間に選手としてピッチで立ち会う・・・・そんなストーリーを、今からこっそりと期待しておきたいと思います。

(取材・文/いしかわごう 写真/江藤高志)

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