「川崎フットボールアディクト」

初の開幕3連勝とその裏にあるタフさ/プレミアEAST2024第3節 vs前橋育英【レポート】

■チーム初への挑戦

2024年4月21日にプレミアEAST2024第3節が行われた。川崎U-18はAnkerフロンタウン生田にて、前橋育英と対戦した。


プレミア昇格3年目の川崎U-18は、今季ここまで開幕2連勝中でチーム初の開幕3連勝を目指しての一戦ともなった。

「プレミアに上がって開幕3連勝したことがないというのはもちろん自分たちの耳に入っていたので。なんとしても勝ちたいと。チーム全員が3連勝してやるという思いで入っていました」

そう話す柴田翔太郎は、2点を先行したあとに課題はあったが、そこまでは自分たちらしさの結果だと話す。

「2点取るまでプラン通りというか、いつもの自分たちのサッカーができたんですけど」

開始5分に八田秀斗がCKのセカンドボールを蹴り込んで先制。

「もともとコーナーキックで(加治佐)海がヘディングで合わせるという作戦だったんですが、そのボールが越えてきたときに念のために、(ファーに)居てってコーチに言われていて。そしたらうまくボールが来て。胸でちょっとずらして左足で押し込めて良かったです」(八田)

さらに前半15分には分厚い連続攻撃の末に加治佐が蹴り込んで2点目。

「柴田が背後に抜けて、1対1になって外して(GKに弾かれたセカンドボールを)。自分が(決めた)。(カバーに入った)相手に触られたのもあって、危なかったです(笑)」(加治佐)

この2点目は湧き出るように次々と選手が関わるゴールで、これぞフロンターレという得点だった。

開始15分までに2点を先行した川崎U-18がさらなる追加点を奪えそうな勢いも見られたが、ここで前橋育英が底力を見せる。

前橋育英に差し込まれた理由として考えられるのが間延びしてしまったという部分。2点を先行した余裕がでてしまったのかもしれないが、その展開を加治佐は反省。

「2点取った後にすごい、チームとして間延びしちゃって」

また長橋康弘監督は足が止まったのだと指摘する。

「ちょっと足が止まってしまってですね、やっぱりあの辺で逆に前育さんに1点入ったら分からないぞっていう勇気を与えてしまったのがあの時間帯なのかなと思っています」

その結果、3点目を奪えず、逆に29分に前橋育英の白井誠也にゴールを許し、前橋育英に勢いを付けさせてしまった。形勢が逆転した形になったが、そこで川崎U-18は踏みとどまった。1点のリードを保ったまま迎えた後半、どう入ったのか。八田はハーフタイムに現状認識し、修正を施したと話す。

「ハーフタイムに受けに回っちゃってて足が止まってるって話になったんで。そこをしっかり全員で体を動かそうっていうのと、3点目取れるように、しっかり全員で攻守で圧倒できるように。まず走り負けない、球際負けないというところを意識して後半入りました」

■粘りの後半

1点差に追いつかれて入った後半、一進一退の展開が続く中、選手たちはどう考えていたのか。

「3点目を取りに行くという意識で、絶対取りに行くという意識で。受けに回ると押し込まれるので。自分たちが3点目を取って相手の息の根を止めるっていうところは意識して前から行きました」

そう話す八田はリスクのあるその判断ができる理由として今季から取り入れた強度の高い練習を上げた。

「今年から、そういうきついトレーニングもしてて。走り負けないっていう自信があるので。そこはきつくても前から行ってリスクを負ってでも3点目を取りに行こうっていう話はしました」

練習に裏打ちされた自信だと言えるが、具体的にどんな練習をし始めたのか。

「筋トレはもう自分たちで増やして。フィジカルコーチの方が付いたので。一人一人が自分に足りないものっていうのを探して、練習前に自分たちでやって。で火曜日、水曜日ってきついトレーニングをしてっていういいサイクルができているので。そういうのが繋がっているかなと思います」と八田。

ちなみに以前から火曜日はかなり強度の高いインターバル走が毎回入っていた。そこに新たに加わったのが水曜日のミニゲームだと八田は説明する。

「水曜日の最後にも、やっぱりきついゲームっていうか。ジュニアのコートで6対6で、もうひたすら走りながらボール使うっていうトレーニングを入れて。前までは、火曜日だけがきついトレーニングだったんですけど、今年から水曜日もきつくなって。週2回フィジカルやってるぐらいの体感なので。結構そういうのが、今は後半足が止まらないので。効いてきてるかなと思います」

齊名優太(さいな ゆうた)

なお、後半もペースが落ちないチーム作りについて長橋監督は「去年出た課題ですね。後半すごく足が止まってしまって自分たちのサッカーがなかなか展開できないというところ」があったからだという。それを今季は「立ち上げから後半、足が止まらないチーム作りをしていこうというところで。かなり厳しいトレーニングを選手たちと一緒にやっています」とのこと。「何かその辺の効果というのは開幕から3試合ですけれども、見られるのかなというふうに思っています」とその練習の手応えを口にした。

知久陽輝(ちく はるき)

香取武(かとり たけし)

矢越幹都(やごし みきと)

児玉昌太郎(こだま しょうたろう)

関徳晴(かん のりはる)

恩田裕太郎(おんだ ゆうたろ)

藤井漣祐(ふじい れんすけ)

選手個々が個性を出した川崎U-18は、走り負けない試合運びができており、得点は奪えないまでも、失点も許さず。最終的に2−1で川崎U-18が勝利した。

ちなみにこの試合にはCBでキャプテンの土屋櫂大が不在。トップチームに帯同していたためだが、その穴を埋めたのが楠田遥希だった。

加治佐は土屋不在について聞かれ「楠田(遥希)が、前節に続いてセンターバックに入ったと思うんですけど。本当にボランチとかセンターバックとかどこでもできる選手で。今日も素晴らしい活躍だったと思うんですけど。どう土屋選手が抜けた穴を埋めようというのは、楠田が埋めてくれていたので。あまり考えなくて良かったです」と楠田の働きに感謝。

また楠田自身は「2試合目の先発ということで、前回の試合より緊張がない状態で、思いっきりプレーできたかなと思います」としつつ前橋育英対策として「2トップの選手を抑えることと、攻撃参加でチームに貢献することを意識して、やりました」と話していた。

最終ラインからの配球に加え、ドリブルで持ち運んで突破するなど、CBらしからぬ動きも見せて強みを見せていた。今後が楽しみなプレーぶりだった。

この勝利で川崎U-18はプレミアリーグ昇格後、開幕から初の3連勝を飾り、首位に立っている。

■コメント

長橋康弘監督と、八田秀斗、加治佐海、楠田遥希、柴田翔太郎の各選手です。

◯長橋康弘監督

「素晴らしい先制点があって、選手もそこで2点目を取るまですごく良い形で波に乗れた部分もあるんですけれども。ただ、2対0になった後の時間帯、本来だったらあそこで畳み掛けるようなもう1点、もう2点というところでやらなければいけないところを、ちょっと全体的に足が止まってしまい、難しいゲームにしてしまったのかなという印象です。後半その辺のところも選手たちはしっかりと意識しながら、立ち上がりから、しっかり足を止めずに頑張ってくれたのかなと思ってます」

――今年初めて1点差の勝利でまた成長に繋がったと思うんですけど。
「こういうチャンスが結構あっても、どうしても入らないゲームって去年も一昨年もあったんですけど。ただ、そういう難しいゲームでも1点差でも勝ち切るところというのは、今後のリーグ戦まだ1年間長いので。自信にしてもらえたらと思います」

――開幕戦で試合の入りに課題があって。今日とその前の試合はいかがでした?
「立ち上がりの入り方はだいぶ目が合ってきて。選手たちも自分たちでやろうとしている部分が見られますので。成長しているかなと思っています」

――2点取った後の試合の運び、その辺の課題はどうだったんでしょうか?
「ちょっと足が止まってしまってですね、やっぱりあの辺で逆に前育さんに1点入ったら分からないぞっていう勇気を与えてしまったのがあの時間帯なのかなと思っています」

――高体連のチームは初めてだと思いますけれども、前橋さんの印象はどうでした?
「プリンスでともに戦っている時から、ボールを大事にするようなコンセプトでチームを作ってくるというところは、私たちも意識しているところであったので。その当時から何か、学びながら。切磋琢磨しながらお互いが成長していったような印象がありますので。今日も絶対難しい時間帯はあるだろうということは想定していました」

◯八田秀斗(はった しゅうと)

――ゴールシーンは?
「もともとコーナーキックで海が遅れてヘディングで合わせるという作戦だったんですが、そのボールが越えてきたときに念のために、居てってコーチに言われていて。そしたらうまくボールが来て。胸でちょっとずらして左足で押し込めて良かったです。

――ゴールパフォーマンスの意味は?
「今リハビリで、もう復帰したんですけど、前十字をやってた増田陽太(ますだ ひなた)選手のMのパフォーマンスを頼まれていたので。そのMです」

――今日は前橋育英でしたが、どんな狙いを心がけて自分の仕事をどう意識してやってましたか?
「Jヴィレッジカップでも決勝戦で一回戦って、そのときにセカンドボールの回収の面で、相手のボランチの選手に負けてたんで。そういうところは今日負けないようにっていう気持ちで入りました」

――去年までは攻撃的なMFかFWで、今年はボランチで、それについては?
「守備の部分は、去年までは攻撃的な部分が求められていて、あまりやってこなかったので。難しい部分がありますが、守備面でもボールを奪う部分と、セカンドボールっていうのは自分で1年間チャレンジしていこうと思うので。攻撃のいい部分を出すことと、自分の苦手な守備の部分というのをしっかり相手に負けないようにやっていければというのは意識してやってます」

――矢越(幹都・やごし みきと)選手との役割分担は?
「ミキトの方がパスセンスだったり、そういう部分は絶対にあるんで。少し自分はリスク管理っていうか、相手のFWを抑えながらも、ミキトと距離感近くしてというのは二人で話をしてるので。少し自分が守備に回ることも多いんですけど。そこは臨機応変に対応しながら、どっちがどっちっていうのはあまり決めてなくて。ボール状況に合わせて二人で合わせてるっていう感じです」

――1点差に追いつかれた後に押し込まれている時間も長くて。そこでどういう意識でやっていたんですかね。追加失点をケアするのか、取りに行くのか。
「取りに行くという意識で3点目、絶対取りに行くという意識で。受けに回ると押し込まれるので。自分たちが3点目を取って相手の息の根を沈めるっていうところは意識して前から行きまします」

――リスクある判断だと思いますけど、そこはフロンターレらしさってことなんですかね。
「そうですね。今年から、そういうきついトレーニングもしてて。走り負けないっていう自信があるので。そこはきつくても前から行ってリスクを負ってでも3点目を取りに行こうっていう話はしました」

――次、昌平高校戦ですが
「昨年昌平高校はアウェイで、朝早い時間で負けちゃってて。そういう準備の部分っていうのは絶対に怠ってはいけないと思いますし、4連勝に向けてしっかり1週間またいい準備をできるように頑張りたいです」

――サポーターについては
「この生田は声出しできないんですけど、声かけだったり拍手っていうので、本当に背中を押されて。それが最後の後半守りきれたことに繋がったと思うので。本当にありがたいので。次も応援お願いします」

◯加治佐海(かじさ うみ)

――得点シーンを振り返ってください。
「柴田が背後に抜けて、1対1になって(GKに当たって)外して、(セカンドボールを)自分が。相手に触られたのもあって、危なかったです」

――前橋育英、5番と20番のセンターバックが強力で、どんなことを心がけてプレーしました?
「相手チームはすごくビルドアップが上手で。ボールを持たれる時間が長かったんですけど。FWとして行くところを決めて、守備のところは行くところを決めるということと、あとはしっかり競るということを意識してました」

――崩しの狙いってどんなところでしたか?
「背後を前半の途中からなくなってしまったので。後半を狙って、という話をしてました」

――2点取った後に1点取られて。チームの中で焦りとか、そういうのはどうでした?
「2点取った後にすごい、チームとして間延びしちゃって。相手に1点取られて苦しい時間も続いたんですけど。チームで話し合って、まだ勝ってるよっていうので、みんなゴール前で粘ったりして。粘り強く勝てたと思います」

――開幕から3連勝っていうところですけど、そこに関してはどう思われますか?
「今3連勝していて、チーム状態は引き締まってるんですけど。ここから4連勝、5連勝と目指していく上で慢心は良くないなっていうので。また来週の練習からしっかり締め直して。4連勝、5連勝と伸ばしていきたいです」

◯楠田遥希(くすだ はるき)

――攻守に渡って大活躍でしたが。
「2試合目の先発ということで、前回の試合より緊張がない状態で、思いっきりプレーできたかなと思います」

――前回のFC東京戦はかなり緊張があったんですかね。
「初めてのスタートだったので。すごく緊張しました」

――今日は自分の役割的にどんなことを意識してたんですか?
「2トップの選手を抑えることと、攻撃参加でチームに貢献することを意識して、やりました」

――かなり攻撃参加が目立ってたんですけど、それは自分の武器として?
「そうですね。今日は特に際立っていたかなと思います」

――自分の良さとか特徴とか、どういうところが?
「対人の部分だったり、パスというところは自分の武器だと思っています」

――土屋(櫂大)選手が抜けてということでしたが、競争意識とかライバル意識は?
「自分はまだカイトくんより、全然なので。少し近づけるように頑張りたいです」

――今後に向けて何か取り組んでいることとかは?
「もっと守備のところだったり、攻撃の部分でさらに今以上に向上させて行くところが目標です」

◯柴田翔太郎(しばた しょうたろう)

――今日の勝利については?
「プレミアに上がって開幕3連勝したことがないというのはもちろん自分たちの耳に入っていたので。なんとしても勝ちたいと。チーム全員が3連勝してやるという思いで入っていましたし。2点取るまでプラン通りというか、いつもの自分たちのサッカーができたんですけど。やっぱり1点取られる前あたりからは相手の流れになって、そこで1失点してしまったんですけど。優勝するチームってのはこういう苦しいゲームを勝ち切ると思うので。そこは内容には満足していないですけど、まず勝ち点3を積みながら、そういう課題を超えられたのは、ひとつポジティブに取っていいのかなと思います」

――やっぱり今日は皆さんの中では苦戦したっていう認識なんですかね。
「前半は、やっぱ立ち上がりから2点取るまでは自分たちのサッカーができたんですけど。ある程度相手もそれを消しながら、わかりやすく2枚の前線のターゲットに当てながら、徐々に相手の時間にしてきた中で、相手の流れを持ってかれたところがあったので。それも後半、続いてしまったっていうところがあったんで。もっと自分たちの時間にして、もっと相手陣内でやりたいという思いもありましたけど。後ろを中心に粘り強く、最後のところ守れたのは良かったかなと思います」

――こういう試合を逃げ切った、勝ちきったというのは力強さというか、自信になるのでは?
「去年はやっぱこういう試合で取りこぼしてしまったり。そういう先輩たちのゲームっていうのを経験した選手たちが多くいるので。やっぱり優勝するチームはこういう苦しい試合をものにするよねっていう話もあったので。絶対勝ち切るっていうところがありましたし。欲を言えば、3点目を取ろうということで後半入ったんですけど。やっぱり3点目が取れなかったっていうのは、ひとつ課題なのかなとは思いつつ。まあやっぱり最後後半ゼロで終われたっていうのは、サイアク失点しなければ勝てたので。そこは良かったかなと思います」

――柴田選手のサイドで言うと、特徴のある攻撃ができてたように見えましたが。
「ちょっと今日、自分としては満足していなくて。っていうのも、やっぱりある程度プレミア3年目なので。タテを消されてるのは分かってはいるんですけど。前回のF東戦で言えば、少しウイングが攻め残りする形だったので。自分の前のサイドハーフと相手のサイドバックで1-1になってオーバーラップすれば2-1を作れて。自分の良さを持っていけるっていう中で、どんどん上がっていったり、仕掛けたりというのができていたんですけど。今日、相手も10番を戻して。2-2の同数の形で、相手も縦を消しながら、自分の良さを消すような守り方をしていたので。その中でちょっと工夫しながらやってたつもりではいたんですけど。前半はあまり良さを出せずに。後半はタテを切られていましたけど。タテに行って最悪当ててコーナーを取って、自分がコーナーを蹴れるので。ちょっと割り切りながらやってたところがありました」

――やっぱりこういう試合でサポーターが来てくれるのは、引き続き嬉しいものですかね。
「そうですね。やっぱりホームだったので。負けたくなかったですし。トップチームとかぶっていないというのがあったので、絶対に今日、勝ってやろうという思いがチーム全員にあったので。それがサポーターの皆さんの前で嬉しいなと思いました」

――土屋くんが居なくて、彼って主軸じゃないですね。その穴と皆さんにやっぱ大きいと思うと思うんだけど、そこら辺をどうなんですか?
「いや、もちろん、彼が居るのと居ないのとでは、キャプテンですし、チームを締められる選手でもありますし。攻撃でも上手い上手い選手なので。居るのと居ないのとで変わるところはあると思いますが、前節からハルキ(楠田遥希)が出ましたし、彼も今日、本当に素晴らしいプレーをしてましたし。そうやって誰が出てもフロンターレっていうのは同じようなサッカーができるので。それが強みだと思いますし、まだまだメンバーに入ってきてない選手も同じようなクオリティーでできる選手がいるので。そこは困ってないですし、個人的には悔しい思いがあると思うので。こういう活躍で自分はもっとユースで期待されている場があるので。そこでコツコツやっていくことが大事だと思います」

(取材・構成・写真/江藤高志)

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