「川崎フットボールアディクト」

岡野一恭平、復活ゴール。五木田季晋、後期初得点で今季等々力最終戦を勝利で飾る/プレミアリーグ第18節横浜FCユース戦【レポート】

■岡野一恭平
10月15日に、等々力で高円宮杯JFA U-18サッカープレミアリーグ第18節横浜FCユース戦が開催された。川崎U-18の選手たちにとって等々力開催試合は憧れの舞台。その等々力での今季の公式戦最終戦となった。

川崎U-18のメンバーリストを見て、まず気になったのが岡野一恭平の名前。開幕から先発に名前を連ねていた岡野一は9節の横浜FCユース戦で一旦ベンチ外になると、ベンチに戻ってきた10節のFC東京戦において後半74分に途中交代出場。ただし接触プレーのため、84分にベンチに下がらざるを得なかった。

腰を痛めての交代だったが、敵地でFC東京U-18を3−1で下した試合後も、一人ベンチで頭を抱えていた岡野一の姿が記憶に強く残っている。

そんな岡野一のことが気になっていたのは、彼が負傷したからではなく、そのドリブルの破壊力が高校生離れしているように見えたからだ。タイプは違うが、三笘薫の突破力に通じるものが感じられるレベルで、そんな彼への評価は、2年生ながら11番の背番号を背負っていることからも伝わってくる。

その岡野一に関しては、長橋康弘監督がリハビリの期間の取り組みを評価。

「本人すごくリハビリ中も、本当に向き合ってて。復帰した時には更にパワーアップした姿を見せるということで、やってくれてました」

結果的に先制点を決める岡野一の働きについて「何とか結果出してもらいたいって思ったら、やってくれたんで。やっぱキョウヘイ、すごいなと思いますけど。やっぱりケガの時に頑張ったことが、今日出たと思います」と手放しで褒めていた。

■試合前の課題

この試合を前にした川崎U-18の課題を上げるとすれば、前期に発揮していた圧倒的な得点力が陰りを見せていたということ。前期に戦った11試合全試合で得点した川崎U-18は、33得点7失点の圧倒的な数字を見せていた。

ところが後期に入り、得点力に陰りが見えはじめる。無得点で敗れた2試合を含め、横浜FCユース戦までの5試合で3得点しか上げられなかったのだ。守備も4失点と攻守にバランスを欠く状態が続いていた。

そんな状態で迎えた横浜FCユース戦は、立ち上がりからお互いに攻めあぐねる展開に。共に思うようにシュートにまで行けない試合は、前半38分に動く。岡野一に対するラフプレーで、ヴァンイヤーデン・ショーンが一発レッドの退場処分となる。

この結果得たFKとそれに続くコーナーキックで川崎U-18が決定機を演出すると、前半のアディショナルタイム3分までの時間帯で横浜FCユースを押し込む流れを作った。

大関友翔は「前半、ちょっと自分たちが攻めあぐねる時間もありましたけど、相手の選手が一人退場したってこともあって、(後半は)優位に試合は進められたのかなと思いました」と試合を振り返っている。

■後期初の複数得点

数的優位の後半は大関の言葉どおり、優位に試合を進められてはいたが、退場者を出した横浜FCユースが少し引き気味に布陣したこともその一因。そのあたりの試合運びについて大関は「やっぱり一人退場して、やることもはっきりして、相手は。5枚しっかり引いて守ってくるってところで難しさがありました」と話している。

ただし大関はトップ昇格するということもあり、そうした相手であっても「違いを見せられないといけないと思うので、そういったところはやっぱり課題が残ったかなと思います」と反省していた。

守備を固める相手に対してはセットプレーが有効だ。ということで迎えた64分に川崎U-18はCKを得る。キッカー大関が蹴ったボールは途中交代出場の浅岡飛夢を経由して最後は岡野一が蹴り込んで川崎U-18が先制点を決めた。

「大関さんがいいボールを上げて、ヒユウくん(浅岡飛夢)がそらしたところを、自分の目の前にいいところにこぼれてきたので、決めれてよかったです」

そう話す岡野一は焦れずに攻め続けた後半の試合展開について、

「相手も一人減った中で、引いてくるっていう、ブロックを作ってくるっていうのはある程度考えられたんで。焦れないでサイドからの攻撃だったり、中からの攻撃だったりっていうのは、意識してて、それがコーナーにつながって、コーナーで決めたので。良かったです」と振り返っている。

ほぼ付け入るスキを与えない試合展開の中、追加点がほしかった川崎U-18は後半アディショナルタイムの90+1分に大関からのパスを受けた五木田季晋がファインゴール。1点差で粘る横浜FCユースを突き放し、勝利をぐっと手繰り寄せた。

「キシン(五木田季晋)も、なかなか得点がない中で欲しかったと思いますし、そういったところで自分がそのアシストをできたっていうのはすごく嬉しかったです」(大関友翔)


前期の7得点の五木田は、後期6試合目にしての初得点で、ようやく1つ責任を果たせた形。

「ほっとしたのが一番かなというふうには思います。でも、これから本当に、もっと取っていかなきゃいけないし、今1点目っていうのはもう遅いと思ってるんで。これからどういう風に取っていけるかなっていう感じかなというと思います」

そう話す五木田について長橋監督は「本人が絶対一番苦しかったと思うんですよね」と話し始めると「彼の良さって、そこだけじゃなくて守備のところもね。すごくチームに貢献してくれているんですけど」と守備でチームには貢献してくれていたのだと説明。だからこそ、点を取るために必要な指導を続けていたと話してくれた。

「大事なのが、そういうこぼれ球だったり、クロスにしっかりとタイミングを合わせて入っていく。こういうことを本当にコツコツやっていくことで、絶対にボールがこぼれてくると、いうところは、本人と話しながら進めてはいたんですけど。ようやく取ってくれて、スタッフが一番喜んでくれてて良かったです」

点を取るべき人が取ると、チームは盛り上がる。一巡したことで研究が進んだのか、前期ほどの戦力差を示せていない川崎U-18ではあるが、ここからの巻き返しに期待したい。

なお、試合の方は川崎U-18が2−0で勝利。今季最後の等々力での試合を無事に勝利で終わらせている。

ちなみに入場者は驚きの3,505人。昨季の矢板中央高校戦で3,784人という数字を残したことはあったが、これは試合後にJ1優勝報告会が行われたことも影響している。今回は純粋にユースのみの集客で、そういう意味で価値ある数字となった。

リーグ戦残り5試合に向け、弾みを付ける一戦にしてほしいと思う。

■リーグ戦残り試合
第19節 vs桐生第一高校@アースケア敷島 10月22日
第15節 vs柏U-18@日立柏総合グラウンド 10月30日
第20節 vsFC東京U-18@保土ヶ谷 11月20日
第21節 vs横浜FMユース@横国大 11月26日
第22節 vs青森山田@麻生 12月4日

EASTで優勝した場合
プレミアリーグ2022ファイナル vsWest優勝チーム 12月11日

(取材・文・写真/江藤高志)

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