無料記事「新潟戦の借りは返せなくてもホーム・JITリサイクルインク スタジアムの力を借りて再び自信と活力を取り戻す勝利を挙げたい」【2021明治安田生命J2リーグ第32節 甲府対山形 プレビュー】
2021年10月2日(土曜日)甲府対山形(14:00 KICK OFF/JITリサイクルインク スタジアム)
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山梨日日新聞の電子版(有料)の山形戦の前打ち記事のコメント欄を見ると「へーむりずらね」、「ここ数年、毎年同じことを言ってないかな」という書き込みがあった。”へーむりずらね”は甲州弁の音とリズムのよさにも感心したけれど、新潟戦の結果を受けてそう思う人が出てくるのは無理がないことだし、”昇格してほしい”という思いがあるからこその書き込み。興味がない人なら腹も立たない。
甲府のJ2リーグでの立ち位置(営業収益の相対順位)が一昔前の上位から中位へと下がる中で、頼まれもしないのにそのことを金額を挙げたりして言い訳がましく何度も書いてきた。お金が全てではないけれど、お金がなければ専用の練習グラウンド・クラブハウスを作って選手によりいい環境というか――以前は甲府よりも環境面でも資金力でも”下”だと思っていたクラブに抜かれ――環境面の改善もできないし、アスリート性が高い選手の獲得も難しい。
”昇格してほしい”という想いは以前と変わらないし、クラブも現場もその想いに応えたいと置かれた環境でベストを尽くし、少なくともベターな結果は出し続けてきた。伊藤彰監督が就任して19年が5位、20年が4位という成績は客観的に見てもベターだと思う。”もっと上手くやれたんじゃないか”と感じる試合はあるけれど、若手中心に舵を切りはじめ、彼らが経験を積んで翌年に向けて一歩前進したかと思えばJ1クラブに抜かれていくから継続性を持ってチームを作ることは難しい。それでも、J1クラブと競合しない(甲府に内々定してからJ1クラブがオファーを出してきた選手もいた)ドラフト中位から下位の選手を獲得してチャンスを与えながら伸ばし、”幻の”プレーオフ圏内に今季もいる。現場の選手・スタッフは満足はしていないけれど、昨季は――甲府の中で――高額年俸の選手がカットを受け入れ、勝利給も大幅に減らしたか無しをチームとして受け入れて寄付で助けてくれたファン・サポーターと痛みを分かち合った。甘やかしたり、憐れんでほしいとは思わないけれど――クラブがアイディアを絞り出し、努力して環境改善が進んだとはいえ3カ所の練習グラウンドを転々とするなか――J2リーグで昇格争いができるヴァンフォーレ甲府というクラブでサッカーができることを幸せだと思い、誇りを持って戦っている選手・スタッフが置かれた環境以上の結果を出していることには敬意を持って欲しい。その上で――”ミラクル”という言葉を頭に付けないと”昇格”という言葉を使い難くなったが――小さな可能性を信じ、信じよう、と気持ちを作り直して山形戦に挑む選手・スタッフと一緒に戦ってくれるファン・サポーターが増えると素晴らしい。
今節ホームに迎える7位・山形は6位・甲府と2ポイント差。今節も前節の3位、4位対決も順位には意味がなくて、昇格圏との差を縮めるために戦う。今節は長崎対京都、町田対磐田があり、昇格圏の2チームが3位グループと戦う”ゲキ熱”の第32節。前節新潟に負けたので”ゲキ熱”感がチョット下がってしまったが、真心を込めて長崎と町田with太田修介を応援しないといけない。
山形との試合はここ最近の記憶では山形に主導権を取られる嫌な思い出が多いが、ホーム・JITリサイクルインク スタジアムという大きな後押しがある。3-0とかで勝てれば素晴らしいが、今節もギリギリの勝負覚悟。ウィリアン・リラが家族に不幸があって――ブラジルに帰国はしないが――今節はスキップするので、ワントップに入る三平和司がリラとは違う特徴であるカウンターでの繋ぎの巧さや周囲の選手と日本語で連携を取れる守備のスイッチをどう入れるかは見どころ。そして、シャドーには一時期よりも運動量で苦労しているように感じる中村亮太朗と宮崎純真が入るので、捻じ込める中村の上手さと三平の巧さが宮崎を活かすラストパスに繋がるんじゃないかと期待する。
シャドーの守備では中村の運動量には不安を持っているが、新井涼平はちょっと甘めのプレッシャーでも押し込まれたときはラインをエイヤで上げる選択することもあるのではないかと思う。相手が変われば狙いも戦い方も違うので判断も変わるが、パワーで押し返すことができなかった新潟戦の失点場面の一つの修正としてラインを上げる方が――プレッシャーが掛かっていない時は上げたくないのが本意だと思うが――ベターだと判断するかもしれない。「前線の選手にプレッシャーを掛けよう、掛けに行こうという意志があるが、どう掛けていくのかという点ではまだ整理されていないと思うところがある。相手の立ち位置や能力を見て判断するが、新潟戦以上にラインを上げることが可能なのか…。新潟戦はプレッシャーが全く掛かってなかった訳ではないが、蹴られる感覚はあった。前半は裏に抜ける選手が多くなかったけれど、後半はウチのラインの裏がよく見えていたと思う。その配球を意識させられた難しさがあったが、”そこが問題”と指摘されるなら相手の能力に関わらずに上げて蹴られて…くらいの気持ちをもう1回持ってもいいのかなぁと思うところがある」と新潟戦のオフ明けに話した新井。
相手の守備がセットされた状況ではそうそうは決定機を作れないと思うので、高い位置からプレッシャーを掛けて、ショートカウンターを1回でも多く繰り出したい。表裏一体の攻守も、まずは守備で強さや固さを出すことが勝利の可能性を高めると思う。また、押し込まれたボールをディフェンスラインがクリアした時に前線の選手がラインアップに連動しながら拾われたボールにプレッシャーをしっかり掛けることも重要。これがなければ折角上げたラインを直ぐに下げざるを得なくなるからだ。前線の選手には酷だけど、これはやらないと甲府の勝ち方にはならない。新潟に負けて失った勝ち点3は戻らないけれど、大幅ではなくても確実に進化しているダイナミックなラインコントロールをベースに自信と活力を取り戻す勝利をみんなで挙げたい。
(マツオジュン)