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【広島 1-2 新潟L】このスタジアムに相応しいチームになりたいと、柳瀬楓菜は言った

真っ赤な顔をした中村伸監督が記者会見室にやってきた。

椅子に座る。溜息が出る。

開口一番、彼はこう語り始めた。

「サンフレッチェ広島レジーナとして初めて、新しいスタジアムでのプレーとなりました。新しい歴史の1ページを開くゲームということで、4600人以上の方がスタジアムに足を運んでいただき、背中を押してくれたことに感謝してます。同時に、本当に悔しい思いが、今までにないぐらい込み上げてきてます」

声は、震えていた。言葉が流暢に流れてこない。いつもとは全く違う雰囲気だった。

「私自身の想いとしては、レジーナにとって当然、今日のゲームは本当に大事な一戦であり、何が何でも勝ちを手繰り寄せたいという気持ちを持って、ゲームに挑んだ。ただ、もしかしたらその思いが選手たちに影響して(力みが出て)、攻撃の最後のクオリティのところで少しスピードを上げすぎたり、少し合わなかったり。選手たちが力の入るような送り出し方をしてしまったんじゃないか。選手たちに申し訳ない気持ちあります」

筆者は、監督の言葉を聞きながら「そんなことはない」と心の中でつぶやいた。

力が入るのは当たり前だ。新スタジアムのオープンに加え、4612人というレジーナ史上最多のファン・サポーターがつめかけて応援してくれたのだ。力まないほうがおかしい。

以前、「サッカースタジアムといっても、広域公園第一球技場もそうだから」という声も聞いたが、広域公園とは全く雰囲気が違うことは理解できたはずである。大きな屋根に反響する声援、スタンドの角度が急でピッチに覆い被さってくるような雰囲気。彼女たちは、今まで味わったことのない空気だったはずである。

街なかスタジアムならではのエピソードもあった。

このスタジアムの近辺を歩いていた人たちが、サポーターが次々とスタジアムに入っていく様子を見て「何をやっているんだろう」と気になって近づき、そのままチケットを買って観戦した人たちが、少なくなかったということ。実際、前日までは「4000人」が予想だったのに、蓋をあけてみれば612人も増えている。

レジーナに魅力を感じてくれたのか、新スタジアムに惹かれたのか、それはわからない。でも、4612人の人々が新しいスタジアムに来て、レジーナの試合を見てくれたことは事実だ。監督が自身の「送り出し方」について言及し、反省する気持ちはわかる。だが、それはもう、致し方のないこと。たとえ違うアプローチだったとしても、おそらくは力むし、おそらくは堅くなる。

選手入場の前にサポーターが歌った「スモーク・オン・ザ・ウオーター」は、言うまでもなくディープパープルの名曲であり、かつてトップチームの応援での定番だったチャント。ビッグフラッグの掲揚も含め、サポーターの強い想いがスタジアムを支配した。緊迫度が増したレジーナにとっての新スタジアムのデビューマッチ。緊張しない方がおかしいし、鼓舞されない方が不思議だ。

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