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進歩はしているが/広島1-1鹿島

寒くて、凍えそうなカシマスタジアム。試合開始から強風が吹き荒れ、記者席のMacbook AirやiPadが吹き飛びそうな雰囲気すら、感じた。

アウェイの鹿島は、本当に様々なことがやりづらい。

前日のトレーニングを茨城県内のサッカー場で行ったのだが、ここでトレーニングをやろうとすると必ず、雨が降る。まだ今年は小雨で、降ったり降らなかったりでよかったが、昨年は大雨で選手も取材陣もびしょ濡れ。2007年のナビスコカップ(現ルヴァンカップ)準々決勝第2戦の時には台風が襲ってきた。

スタジアムも今は新型コロナウイルス感染拡大を防ぐという名目で、取材陣はカシマスタジアムに入った時刻や会社名、名前をQRコードで登録せねぱならず(カシマスタジアム独自のルール)、記者控室は試合後のZOOM会見以外では使えない(エディオンスタジアム広島は短時間ではあるが試合前に使える。スタジアムによってルールが違う)。

さらにしんどいのが、階段ののぼりおりだ。今は多くのスタジアムで取材陣はエレベーターが使えないのだが、カシマスタジアムの記者席は4階(ただしM3階という設定があるので、実質は5階)にあり、そこまで急な階段を上らないといけない。さらにそこからスタンドの急勾配の階段をかなり上らないと記者席には辿り着けない。構造上、致し方ないとはいえ、パソコンなどの機材を抱えての「登山」は、心肺と足の筋力が鍛えられる。

さらに強風と激しい雨だ。ハーフタイム、通路には水がたまり、トイレに行く途中であやうく足を滑らせそうになった。もし転倒し転落したらと思うと、背筋が寒くなる。

ただ、選手たちは勇敢に戦った。

「強風で、自分たちのボールが戻され、相手のボールが伸びてきた」と野上結貴が語っていたが、そういう環境下であっても、できることをやり抜いた。

ザーゴ監督は試合後、「サッカーをやろうとしているチームとそうでないチーム」と広島を揶揄したが、この試合を解説した戸田和幸氏はその表現について疑義を呈していた。

確かに広島は深いゾーンで守備をせざるを得ない状況ではあった。だが、それでも流れの中での決定的なシーンは広島の方が多く、鹿島は得点シーン以外は攻めあぐねていた印象を受けた。横浜FM戦の時はただただガードをあげ、ロープ際で相手のパンチを防いでいたイメージだったが、鹿島戦ではしっかりとフットワークを使い、ヒット&アウェイができていた。実歳、広島の3度の決定機は、高い位置でボールを主体的に奪ってからのショートカウンター。堂々と難しいアウェイ戦を戦い、堂々と勝点1を奪った試合。予算額で倍近く違うビッグクラブの監督から批判を受ける筋合いはない。

ただ、いい形で先制したからこそ、唯一の流れの中からの被決定機で中央を崩されて失点したことが悔しい。

このシーンの悔しさは、相手にバイタルエリアを使われたしまったことだ。

今季、広島は「BOX IN」(ペナルティーエリアの中に侵入する)と「BOX OUT」(自陣ペナルティーエリアから相手を追い出す)をテーマとして取り組んでいる。特に「BOX OUT」については、昨年のAWAY・FC東京戦での教訓が源泉だ。この試合では広島が圧倒的にボールを握りながら得点できず、FC東京にワンチャンスを決められてしまったのだが、その失点シーンでは人数が揃っていたにも関わらず、最終ラインが深く入りすぎてしまったことで、相手にPA内に多数侵入を許し、決められてしまった。その屈辱が、守備の改善に向けてのテーマとなった。

「この失点シーンでは、(当時と比べて)PAの中でスティせず、少しでもラインをあげようとしていたところは、改善されている。ただ、東俊希が(後ろに)残ってしまったためにオフサイドはとれなかった」と城福浩監督は分析している。

だが、確かに進歩はしているのだが、結果的に荒木遼太郎のBOX INを許してしまい、そこで失点したことは現実だ。

荒木の抜け出しは 素晴らしい。だが、彼にラストパスを出させなければ、この失点はなかった。

「もちろん、エヴェラウドのスルーパスは素晴らしい。ただ、その仕事すらさせない状況には持ってこれた」(城福監督)

上図は、失点シーン直前のポジショニングである。

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