【今日という日の歴史的写真】2013年5月18日/佐藤寿人、通算4度目のハットトリックを城福浩監督率いる甲府との闘いで決める
なんで、そこでフリーにさせているの。ディフェンス、何をやっているの。
甲府の立場からすれば思わず、そう叫びたくなる。だが、違うのだ。佐藤寿人は、たまたまフリーになったのではない。フリーになるべくして、なっていたのだ。
もちろん、失点には多くの場合、大なり小なり守備にミスはあるものだ。しかし寿人をマークしていた青山直晃は、日本代表招集経験を持つ名DF。そう簡単には出し抜けない。
では、佐藤寿人にとって通算4度目となるハットトリックは、どういう流れで生まれたのだろう。
まず前提として、広島は甲府を3−1とリードしており、しかも相手は一人退場していたという事実をあげておかねばならない。城福浩監督率いる甲府はJ1に戻ってきたばかり。この年の後半戦のような、J1残留を強く意識した守備ブロックをつくる闘いではなく、城福監督らしいボールを自分たちで動かしていこうというサッカーで序盤戦を戦っていた。C大阪・大分・横浜FMを相手にボール支配率で上回り、ここまでの11試合で3勝5分3敗で11位。J1復帰初年度のスタートとしては、まずまずと言えた。
しかし、この日の広島戦は、城福監督としては想定外だったと言えよう。開始早々に先制点をあげたのは彼らにとっての必勝パターン。先制した試合ではJ2時代も含めて26試合連続負けなしを続けていた。しかも得点の形が美しい。羽生直剛が福田健介とのワンツーで右サイドを突破し、ニアに飛び込んだオルティゴサにピタリ。ボールも人もしっかりと動いていた「ムービングフットボール」が炸裂した瞬間といえた。
だがその直後、佐藤寿人の強烈なミドルシュートによって広島は同点に追いつく。
44分、オーバーラップを仕掛けた水本裕貴の豪快なミドルが決まって逆転。大宮戦で重傷を負った増田卓也がスタンドで見守っている中での得点に、よき先輩・水本も喜びの表情を隠せない。「試合前に、マス(増田)に点をとってくださいと言われていた。とにかく今日は決めるよと言っていました」とまさに「予告ゴール」だ。
75分、石原直樹の飛び出しを後から引っ張った松橋優が「得点機会阻止」ということで一発退場。PKを寿人が冷静に決めて3-1と2点差となった。
それでも甲府は諦めず、城福監督も失点直後に攻撃的な選手を入れて、チームを鼓舞した。だが、当時の広島は、相手が前がかりになればなるほど、破壊力を増幅させる。後からの正確なビルドアップが奏でる「疑似カウンター」である。
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