SIGMACLUBweb

【2020年紫熊の戦士】川辺駿/中央から崩す中心的存在

鳥栖戦が終わって、もう4日目。チームはもうC大阪戦に向けて、舵を切っている。木曜日のトレーニングでは戦術的な要素がふんだんに詰まったトレーニングを敢行。ここでその内容を書くことは差し控えるが、一つ言えるのは、決して「対策ではない」ということだ。

かつて城福浩監督は徹底的に相手対策を落とし込み、守備や攻撃のポイントを選手たちに叩き込んで本番を迎えていた。しかし、昨年6月の対湘南戦以降、城福監督は自分たちがどういうサッカーをやりたいのかを明確に提示し、そこに磨きをかけることを念頭においてトレーニングを行った。広島の若者たちが目に見えて成長してきたのは、その時期以降である。森島司はその前の浦和戦で鮮烈な活躍を見せていたが、彼が本質的な能力を発揮しはじめたのは夏場以降だ。そしてもう1人、大きな成長を見せた選手がいる。

川辺駿である。

彼の能力に対しては何の疑いもない。しかし本質的なことでいえば、ボールを握って主体的なサッカーをやっている時に、彼の技術や戦術眼は効力を発揮する。ボールを触れない状況でもスピードや身体能力の高さでチームに貢献できるが、やはり川辺が生きるのはポゼッションの高いゲームだ。昨年の広島は城福監督の「自分たち主体で」という方向性の転換もあり、後半戦にはボール支配率がグッとあがった。それに伴って若きMFの力がいかんなく発揮されるようになった。局面を変えるパス、攻撃を構築するコンビネーションは、彼を中心に構成されるようになった。青山敏弘が「ハヤオに期待したい」と語り、森崎和幸が8番を譲りたいと思うほどに。

青山敏弘のスペシャルが一気に得点チャンスを生み出す、いわゆる「キラーパス」であるとするならば、川辺駿の特別なプレーは鹿島戦で見せた60m以上にも及ぶスプリントでゴール前に現れるロングスプリントだ。体力もスピードもある新8番だからこそできるプレーであり、過去の広島のボランチでこういうプレーができたのは青山ただ1人。ただ、青山がミハイロ・ペトロヴィッチの徹底したポゼッション戦術で台頭したように、川辺もまた主導権を握ったサッカーでないとスペシャリティは活きない。ポジションを捨てて一気に走るのは、主導権を握った局面でないと難しいからだ。

彼が広島に復帰して以降、常に厳しい課題を突きつけ続けてきた城福監督は、現在の川辺をこう評す。

(残り 1594文字/全文: 2570文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ