ニイガタフットボールプレス

☆☆☆無料記事☆☆☆「このオフの補強を査定します」【2024年が動きだす! feat.北條聡】vol.1~

みなさま、本年もどうぞよろしくお願いいたします。2024年の『ニイガタフットボールプレス』は、北條聡さんとの対話からスタート。今オフの移籍の動向について、まずはJリーグ全体を眺め、やがて本題の新潟へと話が展開していきます。Vol.1は無料でお読みいただけます。

■その代わりに新潟は

――2024年も、どうぞよろしくお願いいたします。

「よろしくお願いします! いやあ、今回の新潟の補強ね」

――さっそく本題ですね。

「がんばった方といえるかな」

――あれ? 若干、辛口ですか?

「いやいや、決してそういうわけじゃなくて。新潟がどうこうという以前に、Jリーグ全体的に『このチームの補強、すごいな!』とびっくりするようなところが、なかなか思い当たらないよね。

それも致し方ないところはあるんだけれど。いい選手は海外に持っていかれちゃうから」

――三戸舜介選手が、新潟からオランダのスパルタ・ロッテルダムに移籍したように。

「そうなんだよ。そんな時代の流れもあって、Jリーグの移籍市場は、誰もが知っている有名選手が国内で動くというより、『あ、この選手はこんな能力、可能性を持っているんだ』と新たに発見、発掘するようなフェーズに移りつつあると思う。実際、J2の選手がJ1に個人昇格するケースがすごく増えているよね」

――あるいは、J3から一気にJ1へ。僕は去年、FC今治から鳥栖に移籍した原田亘選手が活躍しているのを目の当たりにしているだけに、“発見・発掘のフェーズ”という北條さんの指摘は、とてもリアルに響きます。

「これだけ有望な選手が海外に行くようになっちゃうと、補強は本当に難しい。このオフのマリノスやフロンターレを見ても、『え? あなた方、タイトルを逃しましたよね? 奪還するだけの戦力、整いますか?』という気がしないでもない。リーグ全体からすれば、それだけ他のいろいろなチームに上位に行くチャンスがあるシーズンになりそう、ということなのかもしれないけれど」

――Jリーグ移籍市場を生態系としてとらえると、このオフは神戸と名古屋がピラミッドの頂点にある印象でしょうか?

「そうだね。補強した選手の顔ぶれはもちろん、数を考えてもね。神戸に関しては去年、J1初優勝を果たしたわけだけれど、レギュラークラスに取って代わる選手という観点からすれば、今回は戦力の層を厚くするイメージなんだと思う。

確かに去年の神戸の先発イレブンの顔ぶれは豪華だった。新加入の選手たちが、そこにどれだけ割って入っていけるか。それが、これから問われていくことになる。

J2の長崎から加入した鍬先祐弥選手は、間違いなく良い選手だよ。彼が、パッと神戸のボランチに入ったときにどうなるか。そういう意味では、鹿島から加入する広瀬陸斗選手も未知数なところはある。新天地だし、“これからどうなるか”というのは、当然といえば当然なんだけれどね」

――新戦力を発見し、発掘するという話にも通じますね。

「名古屋は去年の夏、藤枝から久保藤次郎選手を獲得したように、すでにJ2にもしっかりと目を向けている。このオフも甲府から井上詩音選手を、山形から小野雅史選手を、清水から中山克広選手を獲得しているよね。

ただ名古屋の場合、多彩な顔触れを構築したところで、長谷川健太監督がどういう選手起用をするかは、また別の話でさ。そのあたりは、また議論が盛り上がりそうなところではある。新潟には関係ない話題だから、掘り下げないけどね。

神戸も資金力はある。彼らが去年、結果として示したのは、必要なお金をちゃんと投じて実力者を獲得していけば優勝する、というヨーロッパの王道なんだよ。資金力の豊かなチームは、やっぱり神戸のようなスタンスを取ってほしい。Jリーグのためにも。

選手の立場からしても、歓迎されるんじゃないかな。きちんと対価を支払ってくれることによって、夢が膨らむ。そういうクラブはとても大事でさ。そうじゃないと、ますます有望な選手が海外に流出しかねない」

――本当にそうですよね。

「しかも、ひとたび海外に行っちゃうと、日本に戻ってこなくなっちゃう。壁にぶち当たって日本に戻ってくるのではなく、次々とステップアップしていく日本人選手がたくさん出てきているからね。

そんな流れ一辺倒にさせないためにも、神戸のようなクラブがJリーグには必要なんだよ。これまで講じてきた策のすべてが“当たり”だったとは思わない。だけど、実力と名声にこだわって選手を獲得し続けてきたことが間違いじゃなかったと、リーグ優勝という形で見事に証明してみせた。資金力があるのであれば、神戸のように王道を行くクラブがないとね」

――うーん……資金力の勝負ということになると、新潟は旗色が悪くなってきますね。

「その代わり、新潟はすばらしいフットボールを志向している。『これまでと違う発想のフットボールで勝負して、優勝します』という、近年のフロンターレやマリノスに通じるよ。

そういう意味では、必要な人材をきっちり供給し続けられるかというのが、なおさら新潟にとっては大きなポイントになってくる。選手だけではなく、監督やコーチングスタッフ含めてね。だから、このオフの補強を査定するのであれば、新潟最大の評価ポイントは(松橋)力蔵さんが3年目の指揮を執ることだといえるよ」

(つづく)

【プロフィール】北條聡(ほうじょう・さとし)/フリーランスのサッカーライター。Jリーグ元年の1993年にベースボール・マガジン社入り。ワールドサッカー・マガジン編集長、週刊サッカーマガジン編集長を歴任し、2013年に独立。古巣のサッカーマガジンやNumberなどに連載コラムを寄稿。2020年3月からYouTubeでも活動。元日本代表の水沼貴史氏、元エルゴラッソ編集長の川端暁彦氏と『蹴球メガネーズ』を結成し、ゆる~い動画を配信中。同チャンネル内で『蹴球予備校』の講師担当。2021年3月から”部室”と称したオンラインサロンも開始。もう何が何だか……。

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