ニイガタフットボールプレス

☆☆☆無料記事☆☆☆「それでも俺たち、貫くから」【頼もう!感想戦feat.小林忠】~明治安田生命J1第26節・浦和レッズ戦vol.1~

前半のうちに先制されながら、後半、反撃し続けて追いつき、意義深い勝点1を積み上げた浦和戦。本当に見ごたえがありましたね! シーズンも深まっていく中、「やっぱり新潟のサッカーは面白い!」と振り返られることが幸せです。今節の感想戦、vol.1は無料でお読みいただけます。

■蹴り始めたら成立しなくなる

――見ごたえのある試合でしたね。

「そうですね! 面白かったですね~。僕の中で、浦和の印象がちょっと変わったところもあります。あそこまで守備をガチガチにしてきたのには驚きました」

――前半、PKでリードした浦和が勝ち切ろうとした面もあっただろうし、新潟の反撃の圧が浦和を押し込んだともいえると思います。

「ガチガチに守ることが、必ずしも新潟仕様の浦和の戦い方ではなく」

――のらりくらりといなされ、守り切られた鹿島戦(第25節●0-2)とは、ちょっと試合のテイストが違うんじゃないかな。特に後半、『攻める新潟、守る浦和』というがっぷり四つの構図になったこともあり、見ごたえたっぷりでした。

73分の3枚代えからググッとギアが上がって、そこがまたすばらしかったのですが、そこに至るまでも後半、特にゴメス選手(堀米悠斗選手)の工夫あるクロスや縦パスが入り始めた左サイドから新潟が押し込み始めるのを感じました。それだけに、チャンスを仕留めて逆転勝利に持っていきたかったわけですが。

「確かに後半、堀米選手の縦パスから長倉幹樹選手が裏抜けしたり、3人目の動きが絡んできたり、左サイドが活性化していきましたね。56分の左からの攻撃も良かった」

――トーマス・デン選手の斜めのパスをゴメス選手がワンタッチで長倉選手につなぎ、長倉選手がボックス内に侵入して折り返したシーンですよね。後半の新潟の反撃は、本当にすばらしかった。

一方で、ビッグスワンのピッチ状態がやはり気になりました。中継映像を見ても、かなり芝が疲弊しているな、と……。

「選手たちにも聞きましたが、『状態は決して良くはないんだけれど、それは相手も同じだから、言い訳にはできない』という捉え方をみんなしていますね。ただ前半、藤原奏哉選手からデン選手へのパスがずれちゃったり、いつもならテンポよく回せるところでちょっともたついたり、芝の影響はやっぱりあるのかな、と感じたのも確かです」

――ボールをつないで攻めたい新潟のスタイル的には、なかなかしんどいですね。でも、そこは受け入れてやらなきゃいけないというか。いきなりボンボン、ボールを蹴り始めたら、やろうとするサッカーが成立しなくなるわけで。

「あのピッチコンディションでも、新潟の選手たちからは『それでも俺たちのサッカーを貫く』という気概が伝わってきて、やっぱりすごいっす。このチームは」

■巧選手が醸し出す雰囲気

――後半、まずゴメス選手が背後のスペースにグラウンダーでボールを流し込む得意のミドルパスを繰り出して、それに長倉選手もしっかり反応して。そのシーンを見て、『おっ!?』となりました。そのあたりから、新潟が精神的に優位に立って反撃し始めた印象です。

聖籠のピッチコンディションはどうですか?

「聖籠の練習場は青々としているんですけど、ウォーミングアップでロンドをやったりすると、芝がボコッとはがれて選手たちが直す場面があったり。見た目は青々としていますが、実際、ピッチに立ってみると、また感じ方は違うのかもしれません。

ビッグスワンでは10月に日本対カナダの試合があるじゃないですか。何とか回復してほしいです」

――とにかく8月の新潟の酷暑と雨の少なさに、全国ニュースを見ながらとても心配していました。

以前、聖籠のピッチを管理しているスタッフに聞いた話なのですが、年々、夏が暑くなってきて、とにかく芝にとっては厳しい環境だ、と。夏場は朝の3時前くらいから散水を始めても、地面が熱いままで、芝の根のところまでしみ込む前に水が蒸発してしまうらしいんですよ。だから思うように芝が水を吸えないし、弱って病気にもかかりやすくなってしまう、と。天皇杯の川崎F戦、今回の浦和戦でのビッグスワンのピッチを見て、その話を思い出していました。

「この間、アルビレッジの人工芝のピッチの上に立ったんですけど、激ヤバな熱さでした。天然芝も、相当、過酷なコンディションにさらされていると思います」

――だからこそ浦和戦の後半、ゴメス選手が長いグラウンダーの縦パスで長倉選手を走らせたとき、『こんなコンディションではあるけれど、でも俺たちはやっていくんだよ』という意思表示に感じられたんですよね。

「そうですね。ピッチがどうあれ、長倉選手とチームは試合を重ねるごとに連続、連動性が高まっていて、本当に見ていて面白いです。右サイドの長谷川巧選手も、スプリント回数も多かったし、かなりかき回していました」

――巧選手は本当に今、最も注目するべき1人ですね。それこそ試合を重ねるごとに、いい意味でけれんみたっぷりのプレーを見せてくれるじゃないですか。

「黒のバンダナも相まって」

――そうそう(笑)。

「56分の惜しいシーンも、長倉選手のクロスに対してニアに飛び込んだのが巧選手でしたよね。すばらしかったなあ」

――ピンポイントで自分に合えば、遠慮なくゴールを決めさせてもらいますよ、という空気をめちゃめちゃ出していますよね。それが実にいいんですよねえ。

「巧選手の奮闘があるからこそ、後半、松田詠太郎選手との交代がいっそう効いてくると思います。実際、浦和戦でも79分に巧選手と交代してピッチに入った詠太郎選手が、すぐに得点に絡みましたものね。詠太郎選手の仕掛けを試合開始から見たい気もしますが……」

――今のところ詠太郎選手が後半出てきて、一気に右サイドのリズムもテンポも変える起用法がはまっているのも事実です。

「マッチアップする相手は本当に嫌でしょうね。前半から後半途中まで巧選手のエネルギッシュなプレーに対応させられ、今度は詠太郎選手がキレキレのドリブルで仕掛けてくるわけだから。詠太郎選手の分かっていても抜き切るドリブル、上げ切るクロスは、何度見てもスカッとします」

(つづく)

【プロフィール】小林忠(こばやし・ただし)/新潟県阿賀野市(水原町)出身。7歳でサッカーの魅力にとりつかれる。レフティーで、北越高校では左右のMF、トップ下と中盤でプレーし、セットプレーも担当。1年時の関東遠征で新潟のレジェンド安英学氏(当時立正大学4年)に吹っ飛ばされ、心を折られる。2年時に全国選手権16強入りを経験。ケガと不整脈を理由にサッカーと距離を置き、高校卒業後は保育の道へ。専門学校を経て地元のこども園で12年半勤務した後、ひょんなことから2019年途中に日刊スポーツに入社。20年からアルビレックス新潟担当となり、再びサッカーに浸る。憧れの選手は元日本代表の中村俊輔さん。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ