山梨フットボール

無料記事「なんとなく上手くいっていない試合を、なんとなく戦ってしまい、なんとなく負けた」【2020明治安田生命J2リーグ第28節 群馬1-0甲府 レビュー】


2020年10月21日 群馬1-0甲府(19:03K.O/正田醬油スタジアム群馬/入場者数 810人(新型コロナウィルス感染予防対策のため、入場可能数の50%以下の制限付き)/天候 晴 弱風/気温 14.1℃/湿度 65%)

得点者 53′ 大前元紀(群馬)
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位に勝って20位に負けるというこのことだけで風当たりが強くなるのは当然だけど、選手・スタッフが一番悔しい思いと不甲斐ない気持ちに塗れている。群馬戦後、練習は普段通りにやっているようでも終わった後で独り低い壁にボールを蹴る選手がいたり、メンバー外選手のゲームを人を寄せ付けない雰囲気を出しながら見つめていたりでまだ傷ついているように見える。ただ、ファン・サポーターにとって首位に勝って20位に負けるということは受け入れ難いし、共感の欠如を埋め合わせる言も思い浮かばない。スパッと切り替えて戦ってほしいし、上位がやたら引き分けるか3~4敗しないと大逆転ができないんだから、”14連勝する”というくらい割り切って言霊から始める勢いを出してほしい。コロナ禍の過密リーグ戦は過去のデータが当てはまらないと思って進むしかない。

合前の雰囲気では大前元紀に対する評価というか警戒はそれほど強くないと感じていたけれど、始まって見たら充分に効いていた。甲府のプレスは大前にはほとんど効かずで、大前経由で繋がれ剥がされることが目立っていた。大前に入ったボールが繋がらなかったのは数回だけだったと思う。7分のCKで大前が蹴ったボールを青木翔太が頭で合わせて河田晃兵が好セーブでCKに逃げたシーンがあったが、この試合は大前と青木のコンビで群馬がチャンスを作り続けた。結局この2人にやられてしまうことになるが、前半は甲府のやりたいサッカーができていなくても0-0で凌げば後半勝負ができる力があると思っていた。

津佑太は中学卒業まで所属していたトラベッソSCの秋山実理事長(享年70歳)が群馬戦の2日前に亡くなり、この試合に勝って成長を報告したかった特別な想いがあった。だからこそ前半からいつも以上に声を出して闘っていたし、右サイドでは太田修介と宮崎純真のスピードがあるアタッカーが前半から実りそうなアタックを見せていた。飲水タイム後は甲府のプレスとポゼッションが決定機に繋がりそうな雰囲気は作れていた。

半、伊藤彰監督は宮崎を下げて藤田優人を右のWBに投入した。この交代が安定感をもたらせたかもしれないが、1対1で積極的に仕掛けることができる宮崎を欠いたことで攻撃の質ではない勢いを削いだように感じた。宮崎が足部を痛めていたのが理由だと思うが、中位以下のとの試合では出場機会が少ない選手の渇望感をチームの活力に取り入れないと難しい。前半もゴールキックを繋ぐとアンカーのところを抑えに来る群馬に手を焼いていたけれど、後半も同じことが起こったが”繋ぐ”ということについてはチームとして勇気を出せなかった。

して、53分に失点の場面を見ることになってしまった。甲府のCKから受けたカウンターで、リスクマネージメントはできていたのに、防ぐチャンスが3回はあったのに決められてしまった。最初のチャンスは右サイドのスペースに出されて青木が走り、新井涼平がマークに行くも寄せたところで股抜きを狙われ、それが閉じた足に当たってワンツーのようになって躱されて失った。金沢戦の2失点目を思い出させるサイドでの入れ替わりをやられた。新井自身の寄せ方に後悔が残る場面でもあるけれど、そのときに後ろの広いスペースをケアするために何人の選手が全力で戻っていたのか…というところに甘さがあった。結果として。

島や福岡相手ならもっと危機感があって戻っていたんじゃないのかという後悔はみんなが持っていると思う。そこから青木が大前に出したボールは絶妙で素晴らしかったけれど、河田が出ることができたボールだと思う。簡単な判断ではないから、”出て間に合わずに躱されたら…”というリスクを一瞬で天秤にかけたと思うが、これも失った一つの要素。その前の場面で山田陸が戻っていながらも大前に寄せることができなかったことも一つの要素。全てにおいて気は抜いていないけれどもっと危機感を持っていれば…と言いたくなる場面。そして、最後はあの場面で決めた大前は流石だけど、大前でなければプレッシャーを強く感じて外したかもしれないという他力の要素があったと思う。

だ、時間は充分に残っていたのに焦ったり、イライラした選手が出てきたことは残念。61分にドゥドゥがイエローカードを貰った場面は、甲府のスローインなのに大前がわざわざタッチラインの外に出てきてドゥドゥの前に来て邪魔をする挑発をした。それに対するドゥドゥのひじを出して押した行動はイエローだけど、レフリーはコントロールするべき場面。岩上祐三がわざわざ遠くから走ってきてドゥドゥの前に来て倒されたパフォーマンスをしたのだって挑発。負けるとこういうところにイライラするけど、レフリーがコントロールできなかった場面でサッカーの魅力を怒りや憎しみで削ぐことを放置したようにも感じる。もちろん、ドゥドゥもセルフコントロールをしなければいけない。

半の終盤は途中出場の金園英学が浮き球の競り合いでかなり高い確率で勝って頭にボールを当てる強さをみせて、セカンドボール次第の場面は作れていたがチームの攻撃としては単調。セットプレーも工夫がなく単調。河田も表情には出さなかったが、蹴ったボールには精度の低下という焦りが出ていた。連戦の選手に疲労感もあったので単調にならざるを得なかったのかもしれないが、岩上に「相手は蹴ってくるだけだから跳ね返すだけだった」と試合後に言わせてしまったことも悔しい。若いチームとはいえ、経験値が高い選手が最後は何人もピッチに立っていたんだから、ピッチの中から流れを変えることができなかったことは残念。そして、ここまでの積み上げや自信が、”群馬相手になんとなく上手くいってない”ということを乗り越えられなかったことが悔しい。

(マツオジュン)

試合が終わった瞬間に涙がこぼれた今津佑太。亡くなった恩師への想いの強さと賭けていた気持ちの強さに心が揺さぶられた。それだけに残念で悔しい。「泣いてないよ」と山梨に帰ってから言った今津だが、「『まだまだだぞ』と言われていると思ってやるしかない」と受け止めようとしていた。

 

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