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【広島 3-1 京都】劇的な茶島雄介のゴールを生み出した、普段のトレーニング

 練習は嘘をつかない。

 スポーツ界でよく言われるこの言葉が、筆者は嫌いだった。幼い頃、何度練習しても、放課後に頑張ってやっても、鉄棒や跳び箱ができるようにはならなかった。サッカーでも、ボールを止められるようにはならなかった。

 練習量が足りなかった?そうかもしれない。だが、勉強でもなんでもそうだが、努力が少しでもいいから成果に繋がっている実感がないと、「頑張ろう」というモチベーションはあがってこない。

 筆者はやがて、自分にはスポーツをやるのは無理なんだなと思うようになった。自在に身体を動かせる人に憧れたし、人間の闘いがつくる物語に小説や映画よりも魅力を感じたから、スポーツを嫌いにはならなかった。でも、自分にはできないと確信した。

 プロ選手には、このような心理には縁がないと思っていた。プロになるような人物は筆者から言わせれば運動神経の怪物であり、「やれ」と言われればすぐにできるように見えた。

 だが、それは間違いだったと、この仕事を始めて気づいた。

 プロのレベルで闘おうとすると、どんな怪物たちでも練習してもうまくいかないことが少なくない。単純なパス、シュート、クロス、守備。練習しても練習しても、「うまくなった」という実感が湧かないことが多くなる。

 ミヒャエル・スキッベ監督が選手たちから信頼を受けるのは、人柄やカリスマ性だけではない。彼のトレーニングが成果を出してきたからだ。昨年、来日した時から始めたクロス練習。8対8のミニゲーム。フィールドにたくさんのポールを立ててゲートをつくり、そこにボールを通しながらのポゼッション。決してトレーニングメニューが豊富だとは言い難いが、狙いが明確。選手たちは自分たちが成長しているという実感を持てているからこそ、指揮官に対するリスペクトを欠かさない。「このチームで成長できると実感した」と森島司も語った。

 先週、指揮官はクロス練習の時に、これまでに言わなかったことを選手たちに語った。

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