【広島 1-0 福岡】永井龍/インスタグラムに託した想い。
永井龍は必死で走っていた。福岡のゴール前から広島のPA前まで約80m、必死で、本当に必死で、走る。
福岡のカウンターを防ぐために、力の限りに走る。
アウェイの左サイドバック・志知孝明が後ろから追いかけてきた。接触。倒された。ファウルはない。
クロスはこぼれた。拾ったのは福岡の主将・前寛之。彼にはミドルもあれば、クロスもパスもある。危ない。
そうはさせない。
前に対して、紫の20番が襲いかかった。
奪った。
そのまま、永井は駆け上がる。ドリブル。運ぶ。走る。速い。ハーフウェイラインを超えた。
志知が追いかけてきた。身体が絡んだ。倒れた。
ファウル。志知は「違うでしょ」とアピールするが、判定は覆らない。
危機を救った男は、ここで交代した。
深々とピッチに向かって、頭を下げる。バックスタンド側から、外に出た。タッチライン沿いを歩く。
その男に対して、永井龍に対して、スタンドから大きな拍手が鳴り響いた。
確かに、PKは外してしまった。だがその直後、彼が見せたこのプレーは紛れもなく、チームを救った。
このプレーだけでなく、永井がここまで見せてきた献身を、攻撃をつくる頑張りを、粘りを、闘いを
スタジアムに集まった人々は、みんな知っていた。
だからこそ、拍手を贈ったのだ。
だが永井は、ここで拍手を贈られたことに、気づいていなかった。
彼の耳には、全く、拍手の音が聞こえていなかったのだ。
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