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【広島 1-0 福岡】ラストプレーの歓喜。主役は紫のマエストロ・柴﨑晃誠。

ボールが春の空に高く舞い上がった時、反射的に「危ない」と思った。91分を過ぎた時だった。

走っていたのは、田中達也。DAZNの江本一真アナが「博多の韋駄天」と表現した、福岡のスピードスター。森島司が蹴ったCKのクリアボールが彼のもとに届き、そのままドリブルで運んだのだ。

ここまで福岡のシュートは2本。66分、ジョルディ・クルークスのクロスにフアンマ・デルガドが合わせたシュートは紛れもなく決定的で、大迫敬介のピッグセーブに救われたシーンだった。だが、それ以外にはほとんどピンチらしいピンチもなく、ほぼ広島が押し込んでいた状態。

サッカーの場合、こういう状況下から一発のカウンターで勝負が決まることは、よくあること。田中は前節の対鹿島戦でもキレキレのプレーを連発した選手。かつて同姓同名の名選手が浦和にいて、よくこういうカウンターから一発で決められたものだ。

柴﨑晃誠が必死に追いすがる。だが、ナチュラルなスピードが違う。バウンドしたボールにはバックスピンがかかっていて、田中の身体の方へと向かってきた。まさに、嫌な予感が当たりそうな気配だ。

だが、広島には藤井智也がいた。圧倒的なスピードキング「チーター」のような走りを見せる15番が、田中よりも先にボールに触った。

身体を反転する。体勢が崩れた。ボールに触ったが、しっかりとパスが出せない。無理もない、破壊的なスピードだったから。

だが、近くにいたのが柴﨑だったことは、藤井にとっても、広島にとっても僥倖だった。

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