【PRIDE OF HIROSHIMA】櫛引一紀/それでも、サッカーは楽しい
櫛引一紀は、優しい男である。
G大阪戦前日、彼が移籍後初のベンチ入りを果たすかどうか、わからないでいた。野上結貴はコンディション不良のため、G大阪戦でのメンバー入りはない。では誰が選ばれるのか。CBの控えを入れないという選択肢もゼロではない。
もしメンバー入りが決まっているのなら、やはりコメントをとっておきたい。でも、もしメンバーから外れているのに、記者からコメントを求められても困るだろう。傷つけてしまうかもしれない。
思い悩んだ。でも、やっぱり聞こう。
櫛引のパフォーマンスはしっかりと上がっている。守備のところでの安定感に加え、ビルドアップの能力はやはり高い。経験による落ち着きも感じる。
キャンプの頃、チームにまだ慣れない状況でミスを繰り返し、失点に絡んでしまった。本当にもったいない。当然、彼は評価を落とし、メンバーにも絡めない。先発のチャンスだったルヴァンカップ札幌戦では体調を壊してしまう不運。
辛いことの連鎖。
しかし、決して下をむかず、なげやりにもならず、櫛引は続けた。そういう人間性だとわかっていたからこそ、強化部は彼にオファーを出したのだろう。
そういう選手が「メンバー入り」という一つの段階にたどり着いたのなら、やっぱり言葉を聞いておきたい。
「櫛引選手、メンバーには入りましたか?」
ドストレートな質問。しかし、櫛引は笑顔。
「いや、まだわからないんですよ」
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