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【広島2-0札幌】厚別の歴史に刻んだ勝利

試合先日、「札幌のアウェイ戦では勝てていない」という事実が話題になった。

「そうですね、確かにいい記憶がない」

城福浩監督は冷静に語った。

そこで僕は、一つの試合のことを思い出した。

「大丈夫です、監督。デーゲームの厚別では全勝です。明日も大丈夫です」

指揮官は笑った。

「そうですね。わかりました」

実は、厚別でのデーゲームの闘いは、たった一度しかない。2012年5月26日、3-1での勝利。得点者は佐藤寿人・山岸智、そして症状に苦しんでいた森﨑浩司の直接FKでのゴール。記者会見で森保一監督が浩司の頑張りを思って、思わず絶句した試合である。

実はデーゲームの厚別はこの試合だけ。それでも全勝なのは間違いない。少しでも、空気を盛り上げたかっただけのことだが、そういう情報を入れるだけでもメンタルが違うと思った。

実は厚別ではここまで2勝2敗(J2・カップ戦含む)と特別に相性が悪いわけではない。ただ、2敗の負け方が非常によくなかった。初めて厚別で戦った時は、ヴァレリー監督と藤本主税の対立が表面化し、藤本が前半途中で交代させられ、ペットボトルを蹴り上げるという事態。それでも0-2からなんとか追いつくが、ウィルと播戸竜二に決められ2−4で敗戦。

そして今年のルヴァンカップでは、0-1から浅野雄也のゴールで追いつくも、そこまで攻守にチームを牽引してきた野津田岳人のパスをかっさわれて、ドウグラス・オリヴェイラに決められて敗戦。カップ戦タイトルを失った。

だからなんとなく、悪いイメージがあるが、一方で勝利した試合も劇的。2012年だけでなく2003年もそうだった。

前半からJ2での独走体勢を築いていた広島だったが、夏場に大失速。第22節・甲府戦でシーズン2敗目を記録すると、そこからの8試合で1勝2分5敗。あっというまに首位から転落し、自動昇格圏外の3位に転がり落ちた。第30節の水戸戦も0-1での敗色が濃厚だったが、サンパイオの劇的なアディショナルタイムゴールで引き分けに。ただ、チーム状態は傍目から見ても最悪に近く、サポーターの間からは昇格を絶望視する声もあがり始めた。

そんな時に迎えた厚別での札幌戦。小野剛監督(当時)はそれまでの4-3-3から3-5-2に変更。右ワイドに松下裕樹、FWに中山元気を抜擢して勝負に出た。終始、泥くさい闘いに徹し、マルセロと中山のゴールで勝利。ここから7連勝を飾って息を吹き返した広島は第43節にJ1復帰を決めた。

きっといける。

歴史を振り返って、なんとなくそう思った。

試合当日、札幌は青空。2012年5月26日を思わせる空気感に、いい予感に包まれた。

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