ヴォルティススタジアム

【最終回スペシャル|至高のスタジアムグルメ】CHA-CHA HOUSE COFFEEの米粉チュロス

ずっちゃ、ずっちゃ、てっててれてれーん♪

11月4日(土)の藤枝戦が2023シーズンのホーム最終節か。いろんな飯を食ったなぁ。

さて、今日はサッカーDayではないが鳴門で取材。ひと仕事を終えてドライブがてら車で走っていた。

んっ? 何やら賑わいをみせている場所がある。

『里むすめフェス2023』。

ここにもキッチンカーがたくさん出ている。折角なので見ていくか。

おっ! 芸能人が来ている!?

あそこにいるのは『矢野・兵動』の兵頭さんじゃないのか。大好きな芸人さん。あの話術は天下一品だ。先日、京都出張へ行っていた際に錦市場に立ち寄った。何の番組だったかまではわからないが、新喜劇の川畑泰史さんと2人でグルメロケをしていた。

兵頭さんに1カ月で2度もお会いできるなんて運命的だ。これは神からのお告げ。サインをお願いしてみるぞ!

「す、すっ、すっ、すっ、すっ・・・。すいません! サインをください」(俺)。

「あのー。人違いではありませんか?」。

えっ・・・。えーーーーー!?

「申し訳ございません」(俺)。

しかし、俺はこの人を見たことがある。誰だ!? この人は、誰だった。思い出せ、思い出せ。

!?

なんてこった。ポカスタでスタグルを出店されている『CHA-CHA HOUSE COFFEE』の店主だ。失礼なことをしてしまった。

どうする・・・。平謝りしかできない。お詫びといってはなんだが食べ物を買って帰ろう。

「おす、おす、おすすすすめは何ですか?」(俺)。

「そうですね。うちは[米粉チュロス](500円)です。徳島県産の米粉を用いた揚げ立てのチュロスで“外ザックリ中モッチリ”という食感がウリです。徳島県産の米粉なので、徳島県民の方にたくさん食べていただきたいと思っています。見た目がキャッチーな食べ物ですけど、味もしっかり作っているので長く愛していただけるとうれしいです」(店主)。

それにしてみよう。

おー! 確かに“ザクモチ”で美味しい。

6種のフレーバーがあった中でオススメしてくれた「阿波和三盆糖」(店主)を選んで正解だ。1本を1人で食べるのは多いかなと思ったが食べ始めてみると直ぐに食べ終わってしまっていた。1人1本が限りなく正解に近い。そして、飲み物を買い忘れたが、このチュロスには絶対にコーヒーが合う。

それにしても『CHA-CHA HOUSE COFFEE』ってこの車じゃなかったよな。たしか年代物のワーゲンだったはず。

「お車、ワーゲンではないんですね?」(俺)。

「これは2号車なんです。ポカスタには1号車のワーゲンで行っていますが、2号車は他のイベントや県外に行く時などで使っています。

以前から県外にも行ってみたいと思っていたのですが、ある日、ワーゲンに乗って香川県に行こうとしていたら高速道路で車が火を噴きまして・・・(苦笑)。人生で初めて消火器で火を消す経験をしました。

ワーゲンではあまり遠くに行けないなと思ったことと、徳島県産の米粉を用いた[米粉チュロス]を販売しているのも徳島県をもっとPRしたいという想いがあったので新しいキッチンカーを作りたいと考えるようになりました。実はこのキッチンカーは皆さんの力をお借りしながらクラウドファンディングを募って作らせていただきました。本当に感謝しています」(店主)。

そんな背景があったのか。店主の徳島愛と、支えてくれた人の徳島愛。それにしても立派だなぁ~。

「防災を目的とした『徳島県キッチンカー協会』を立ち上げていて専務理事もしているのですが、1号車のワーゲンだと逆に迷惑をかけてしまって二次災害を起こしかねません(苦笑)。この新しいキッチンカーで出動できるようにしています。車の天井にはソーラーパネルを備えていて発電することもできます。この車はリチウムイオンバッテリーを積んでいて電力を蓄電する仕組みにもなっているんです」(店主)。

南海トラフ地震のことも考えなければならない四国で暮らす人間としては備えが重要だな。

そうだ!

いつもは飯を食っているだけだが、スタグルのことで聞いてみたいことがいくつもあったんだ。この店主は話も上手だし、何か知っていそうな気がする。ドラゴンクエストでもまずは村人に話しかけながら情報収集していくのがゲーム攻略の鍵。人違いから始まった縁ではあるが、この偶然の出会いを活かして探ってみるか。

「あのー。お尋ねしてよろしいですか?」(俺)

「はい。どうぞ」(店主)。

「俺は・・・。違った。私はスタグルを食べ歩いているのですが、いつからスタグルという文化があったのかなぁと思いまして。徳島ヴォルティスのスタグル元祖ってご存知ですか?」(俺)。

「もしかしたら僕かもしれません」(店主)。

ん? んんんっ!?

「すいません。どういうことでしょうか?」(俺)。

「徳島ヴォルティスの前身の時代に“Jリーグに上げるぞ!”って盛り上がりを見せた時が2度あったんですよ。その2度目のJリーグが見え始めた2年前から出店させてもらっています。JFL時代のことで、当時はポカスタではなく、入田のスタジアム(徳島市球技場)でした。

10番をつけていた関口隆男という選手がいまして、その選手が同級生だったんですよ。僕もキッチンカーを始めたばかりの頃だったのですが、友だちを応援したいという意味もあって会社の方に“ぜひ出店させてほしい”とお願いをしました。その時に入田で出店していたのがうちの1軒だけだったので一番初期なのかなと思っているんですけどね」(店主)。

なんという偶然。

『矢野・兵頭』の勘違いから始まった出会いだが、この店主もすべらない話くらいの話術を持っている。いや、これは話術というよりもエピソードトーク。店主の生き様がエピソードからにじみ出てくる。

「ちなみに“僕もキッチンカーを始めたばかりの頃だった”ということですが、元々は何をされている方なんですか?(あっの頃は~♪)」(俺)。

「移動販売を始めて23年目になります。元々は駅前でお店をやっていて、今はイオンモール徳島に店舗があります。

当初は漢字の『茶茶家』という屋号でしたが、徳島県にもカフェブームが到来した頃に横文字の『CHA-CHA HOUSE COFFEE』に屋号を変えました。イートインとテイクアウトの両方の窓口を作りました。ありがたいことにイートインのカフェは直ぐに流行ったのですが、テイクアウトはなかなか難しかったんですよ。

テイクアウトのコーヒーで、口元に飲み口のある蓋付きの紙コップありますよね。あれを東京や神戸で見た時に“すごいかっこいい!”って衝撃を受けて、そのコップを徳島県にも持ち込んだら絶対に流行るだろう、駅前は溢れかえるだろうと思ったんです。でも、まったく流行りませんでした(笑)。

スターバックスが日本にまだ3店舗しかない時代でしたけど、理由は“文化がないけんやな”って気付きました。徳島県内で同じようなスタイルはなかったと思いますし、口元に穴の開いている蓋付きのコップ自体も見つけるのが難しくてコップの蓋を仕入れることに苦労をしましたから。

流行らせる方法はないものかと考えていたのですが、その同時期に東京の代官山あたりにキッチンカーが増え始めていました。自分もキッチンカーがあれば店舗から飛び出して徳島県内の各地に行って広めることができるのではないかと思いました。それがきっかけでワーゲンの『移動式cafe チャチャ号』に乗り始めたんですよ」(店主)。

この店主、厚みがあるのは体の大きさだけではない。

一見、ヴォルタくんの実写版にキャスティングされそうなフォルム。しかし、実はこの体には未来の徳島県を見据える夢と積み重ねてきた人生という歴史がパンパンに詰まってやがるぅ! ありがてぇ~。涙が出る~。かぁ~、感動的だ~! 熱意がアツすぎる。スタジアムに出店している背景には、友情からスタートした23年分の想い。染み込んできやがる、心にぃ~!!

ざわ・・・、ざわざわ・・・・。

まだまだ溢れ出てきそうだ。俺は、この店主から全てのエピソードをむしり取ってやる。

「“徳島のスタグルの魅力”は何だと思いますか?」(俺)。

「そうですねぇ。他会場のJリーグを観に行ったりもしますが、J1クラブにも徳島のスタグルは負けていないって思うんですよ。なぜかというと手間をかけたグルメを出されているお店が多いと感じるからです。カテゴリーも関係あるのかもしれませんが、例えばJ1で常に数万人とか入るスタジアムだと、どうしても手間をかけるのは難しくなると思うんです。食べ物をどんどん提供していかなければいけないですからね。

他に徳島のいいなぁと感じるのはコンコースで完結するスタジアムも多いじゃないですか。構造上のこともあるとは思いますが、徳島はスタジアム外の出店者(屋台村)も大事にしていただいていると感じています。徳島がJ1に定着できたり、強くなっていったとしても屋台村は続けてほしいなぁって思っています。

それと僕が出店しているのはホームのゴール裏側付近なのですが、アウェイの方も結構買いにきてくださるんですよ。そこで揉め事になったりもしませんし、それはサポーターの方の心や懐の広さだと思っています。そういう所も含めていいなぁって思っています」(店主)。

この店主、エピソードが湯水のようにあふれ出てくる。ドラゴンボールで魔獣ヤーコンが光のエネルギーを食べ過ぎて孫悟空にぶっ倒されたように、俺の記憶のSSDが持たないかもしれない。やばいぞ。しかし、職業病だ! 質問を止められない!! 自業自得だ!!!

「スタグルの店主をしていると試合が観えなくて寂しかったりはしないですか?」(俺)。

「車の中でDAZNを見ています。僕自身も気になりますし、試合の合間や試合後に買い物に来てくださる方ともお話をしたいので。入田の時は暇だったので試合が始まったら抜け出して観に行ったりもしていましたけどね。その代わりと言ってはなんですが今はアウェイ戦へ年に1度は行きたいと思っています。今年は水戸戦に行きました」(店主)。

この店主、ポカスタ以外でも見かけたことがあると気になっていたが思い出したぞ。

今年の5月29日、『パナソニック スタジアム吹田(大阪府)』の直ぐ傍にある練習場で行われた『【コラム】練習試合/G大阪戦の雑感』へ取材に行っていた時にいた! 確かにいた!!

「そういう機会もタイミングが合えば行っています。TSVの練習試合も行ける時に行っています。普段公式戦に出場していない選手も見ることができるので楽しいですよね」(店主)。

G大阪の練習試合へ店主が来ていたことに気付いた決定的なできごとがあった。あんな大事なことを俺はド忘れしていたなんて・・・。

あの日、俺は練習試合のコラムを書き終え、焦る気持ちを落ち着かせながら急いで地下鉄の御堂筋線に飛び乗って難波駅まで向かった。

目的は1つ!

『NGK(なんばグランド花月)』で開催されていた吉本新喜劇と、笑い飯やミルクボーイやプラス・マイナスなどが出演していた漫才の【よる公演】を見るためだった。

ギリギリで間に合ってNGKに辿り着き、まずは1Fにあるグッズ売場に顔を出した。

そこに・・・・、店主もいたーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!

「練習試合からNGKのルートは最高でしたね!」(店主)。

洒落のわかる店主。いいエピソードトークだったなぁ。お話を聞かせてくれて、うれしいじゃあ~りませんか。

今週末の藤枝戦、[米粉チュロス]とともにコーヒーも買おう。

肌寒くなってきたのでコーヒーを注文するなら・・・。

ホット、ホット!

ホット、ホット!!

ホッ! ホッ! ホッ! ホッ!

ホッ! ホッ! ホッ! ホッ! ホッ! ホッ! ホッ、ホッ・・・。

至高のスタジアムグルメ 、完。

文・井之柏原敏

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