ミヒャエル・スキッベ監督の魅力を考える/エルゴラッソ寺田弘幸記者との対談
CHAPTER
①プレシーズン、監督不在の不安から
②粘り強く、何度も繰り返す練習
③楽しそうにプレーしている選手たち
④大切なのは、パーソナリティ
⑤チームの強みを引き出す力
プレシーズン、監督不在の不安から
中野「今回はスキッベ監督のサッカーについて、話をしたいと思っています。
特に鹿島戦の後にはいろんな媒体でサンフレッチェを取り上げてもらっていて、それだけインパクトのある勝利だったと思う。
これまでスキッベ監督がやってきたことを、チームを追い掛けてきた僕たちで一回整理しときたいなと思っています」
寺田「はい」
中野「プレシーズンを迫井深也ヘッドコーチをはじめとした日本人コーチ陣でやっていかざるを得ない状況でしたね。
そのキャンプでやってきたことといえば、ほぼほぼプレッシング。細かい戦術的な指導は難しい状況だったので、監督が来日するまではすごく不安だった」
寺田「キャンプを見たときは、まずプレスをかける、ハイプレスを第一優先にするサッカーに変わるっていう意識付けを、すごくしているんだなと思っていました。
どこからボールを取りに行くのか、どこまでリスクを冒すのか。
その辺りをトライしながら見極めていたと思うんです。
ただ、僕が宮崎キャンプで見た金沢とのトレーニングマッチがすごく出来の良くない試合だったじゃないですか。ジュニオール・サントスと永井龍の2トップでスタートしたんですけど、ぜんぜんプレスがハマらなくて、チームも全く機能していない。
やっぱり、プレスがハマらないとチームは機能しないんだなって、強烈に印象付けられましたね」
中野「あの金沢戦はそういう意味でも、プレシーズンの試合としては、非常に良いゲームになった。課題が明確になったからね。
前がプレスに行けないと後ろも連動できないことがはっきりとして、プレスがかからなければJ2相手でも厳しい試合になることが分かった。
実際、メンバーがガラリと変わった2本目は、まったく違う内容になった。素晴らしいプレスから、ずっと押しこんでいたからね」
寺田「あの変わりようは、すごかったです」
中野「コントラストが明確になった金沢戦があったからこそ、プレスが生命線だとはっきりした。
スキッベ監督がやろうとしているプレスは、相手のプレーを限定させるなどというものではなく、ボールを全力で取りに行く。
ハマればどの相手に対しても良い試合はできるんじゃないかと思ったし、逆にハマらなかったらどの相手にも苦戦すると思っていた。
ただ、開幕戦の鳥栖戦は悪い方に出てしまったね」
粘り強く、何度も繰り返す練習
寺田「開幕戦でできなかったことがルヴァンカップの徳島戦でできて、札幌戦も良かった。
チーム全体でボールを取りに行く態勢になっていったと思いますけど、取ってからどうするのかっていうプランが希薄でしたね。
基本的には『速く攻める』がコンセプトだったと思うんですけど単発になりがちだし、ボールを取りに行くのにパワーを使うので、そこからさらに出て行くのも難しい。
プレスはハマっても点を取るのに苦労した。それが次の段階でしたね」
中野「プレッシングサッカーをやるチームは、必ずそこでぶつかるんだよね」
寺田「はい。FC東京との試合は、その典型的な試合でした。あれだけプレスがハマって押しこんだのに、とった点は1点だけ」
中野「FC東京戦も川崎F戦も、相手の監督が『広島にすごくやられた』という話をしていたけども、結局はウチが勝点3を奪ったわけではなかった。
得点も、2試合で1点。そしてこの時期、スキッベ監督がやったことはクロスの練習だったでしょう。最初は守備をするDFがいたけども、最後はフィギュアだけでDFがいなくなった」
寺田「すごくシンプルな練習でしたね」
中野「しかも、最初は全然、ゴールにならなかった。30本やって2本しかゴールにならない」
寺田「本当に入らなかったですからね」
中野「正直、これで点が取れるようになるのかなと思ったけど、それが今や、クロスがチームの武器になっている。あの練習でこんなに変わるもんなのかね?」
寺田「スキッベ監督は本当にしつこく、粘り強くやっていたじゃないですか。ほぼ毎日に近いくらいクロスからシュートに飛び込んでいく練習をやっていましたし、練習の時間もかなり長かった。
監督もいろいろと工夫されていて、少しでも楽しませようとオーバーアクションしながらやっていましたけど、それにしても(いい意味で)しつこかったですよね」
中野「そうそう」
寺田「繰り返しやることで意識付けようと思っていたんだと思いますけどね。それにしても、単純に時間が長く、本数も多くやっていた。
スキッベ監督はずっと『走り込んでクロスに合わせに行け』と言っていましたけど、それも特別なことではない。
でも、本当に何度も繰り返しやったことで、森島司がクロスに飛び込んでゴールを決めるようになったじゃないですか。あれにはビックリしました。粘り強く練習をやった成果なんでしょうね。
おそらく彼はあんなプレーを今まで、ほとんどしたことがなかったんじゃないですか?」
中野「ヘディングでシュートを打つこともほぼなかったわけだから」
寺田「それが、ゴール前に走り込んで、シュートまで決めている。ルヴァンカップ名古屋戦のゴールを見たとき、衝撃を受けましたよ」
中野「森島をずっと見ている人間にとっては、もう驚き以外の何物でもないよね」
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