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【THIS IS FOOTBALL/日本代表】儚さ、切なさ、そして美しさを刻み込む

昨年11月26日、広島がJ1残留を果たした時もまた、様々な物語がそこに存在した。日本代表の物語と比して、どちらが価値が重いとか軽いとか、そういう問題ではない。ただ、スポーツには、サッカーには、泥臭い人間が紡ぐ物語が必ず、存在しているということだ。

 

 

日本対ベルギー戦は、まるで「七人の侍」を見た後のような切なさに覆われていた。

ラストプレーのほんの数秒前、本田圭佑が強烈なFKを放ちながら、名手=ティボー・クルトワの一気に伸びてきた指で弾かれた。だが、試合全体の空気感としては「日本、いける」。イメージはコロンビア戦での大迫勇也のゴールだ。かつて何度も日本を救った吉田麻也のヘッドだ。

だが、本田のキックはクルトワにキャッチされた。そこから、一気に形勢は逆転。90分以上走り続けたベルギーが、「これが最後だ」と言わんばかりのスピードアップ。最も怖いルカクはマークできた。だが、おそらくは約束事であろう。最高に心拍数があがった中でのスルー。その瞬間、胸を締め付けられた。

もがいても、もがいても、そのボールには届かない。どうしようもない哀しみに包まれながら、シュートはネットを揺らす。日本のロシアでの旅を終結させるドラマは、歓喜を夢見た日本人に冷や水を浴びせかけた。

ある者は泣いた。ある者は清々しい表情を見せた。魂の戦いはドレッシングルームでの清掃と共に世界中から称賛され、喝采を浴びた。だが、みんなわかっている。この称賛が一時的なものであり、やがて忘れ去られることを。

「負けは負け。感動に酔ってどうする」

ある者は言う。事実を指摘することは、正しい。そう信じている人たちによって、勇者たちは断罪される。

「西野監督では、あの選手たちでは、せいぜい、ここが限界だった」

デジタルな結果をもって、「それが真実だ」と信じている正義の人々が、戦い終えた男たちに刃を突き付ける。

その光景も含めて、切ない。

戦う君の詩を、戦わないヤツらが笑う。

遠い昔から、戦士たちは悲しい。

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