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金沢U-18はプリンス北信越最終節で勝利。苦しんだシーズンを6位で終える【無料記事】

 

大声援を背に躍動した選手たち

 

23日に行われたプリンスリーグ北信越最終節。金沢U-18は北越高校と対戦した。18日に行われた第17節で帝京長岡高校に引き分けたことにより、1部残留を決めていた金沢U-18。何もかかっていない最終節・北越高校戦となったが、応援に駆けつけたサポーターやU-15の選手たちの前で今シーズン一番の躍動を見せた。

 

スタメンは以下の通り。キーパーは日浅偉吹の負傷により北一尋がリーグ戦では第8節以来の先発となった。

前半は強い向かい風、さらにピッチ状態もよくなかったため、慎重に入るかと思われたが、金沢はいきなりフルスロットル。大野翔太朗と辰巳航の右サイドで優位に立っていく。

 

そして10分、大野が受けてタメをつくると辰巳がオーバーラップ。「高校を通して一番ぐらいのクロスだった」という辰巳の鋭いクロスに島野竜太朗が頭で合わせ金沢が先制する。

 

その後は風下のため押し込まれる時間帯もあったが、北の好セーブでしのいでいると22分。自陣でのコーナーキックをセーフティーに大きくクリア。なんでもないボールだったが、「自分は足の速さが特徴なので、追いかけたらいけるかなと思って走った」という井上龍昇が、ルーズボールにいち早く追いつく。そして前に出てきたキーパーもかわして運ぶと、無人のゴールに流し込んで追加点を奪った。「自分は攻守の切り替えが苦手で、ボールをとった瞬間とかに頭が止まって、動きも止まることが多かった。でも今日に関しては最後ということで気持ちも入っていて、応援もあったので『絶対(ゴールを)とってやろう』と思っていた」と井上。昨年は金沢のクラブユース選手権初勝利を決めるゴールを奪い、トップチームのキャンプにも参加。今年はエースとしての活躍も期待されていたが、ケガにも苦しむなど、悔しさを味わった3年生が最後に意地を見せた。

 

そしてこれ以降は”辰巳劇場”と表現したくなるほど右サイドバックの辰巳が躍動。まずは25分に対角のボールに抜け出してシュート。これはキーパーに止められたが、その6分後にまたもエリア内に入っていくと相手に倒されてPKを獲得。「自分は高校で(PKを)外したことがないし、最後だったので自分で蹴ってやろうと思っていた」という辰巳が、その自信に満ち溢れた言葉通り、しっかり決めきってリードを3点に広げた。

 

後半に入ってからも54分にまたも辰巳が飛び出しから惜しいシュートを放つ。さらにはその直後のコーナーキックの流れからも決定的なシュート。しかしこれも枠の上に外れてしまった。その後は押し込まれる展開となっていったが、辰巳は守備でも奮闘。「自分のところでは絶対にやらせないという気持ちでやっていた。体をぶつけたり、最後でクリアするところは気を抜かずに全力で守った」。59分には右から切れ込んできた相手に対し、最後は体を当てて防ぐと、その直後に負傷交代となったそれでも「いままで以上に応援にきてもらっていたので気持ちが入っていた」というチーム屈指のムードメーカーは、60分あまりの出場でチームトップのシュート5本をマークするなど、十分なインパクトを残した。

 

終盤は後半から出場した薬師拓翔が何度かカウンターでチャンスをつくるもオフサイドなどで追加点とはならず。北越高校の攻勢で82分に1点を返されてしまったが、その後は失点することなく3−1で逃げ切った金沢。一時は降格の危機に立たされ、クラブユース選手権出場を逃すなど難しいシーズンとなったが、最後は持ち直し、4年目のプリンス北信越を6位で終えた。

 

守備の立て直しとコンバートの成功

 

今年がプリンス北信越での4年目の戦いとなった金沢。初年度の2020年は新型コロナの影響で変速開催となったが最終順位は2位で、プレーオフがあれば出場していた可能性は高い。そして、その後は2年連続でプレーオフに進出。今年も目指すはプレーオフに進出できる2位以内だった。

 

シーズン序盤こそ開幕2連勝を飾り幸先のよいスタートを切ったものの、その後は不安定な戦いが続いた。トップチームと同じように、何でもないところからの失点が目立ち、これもトップチームと同じように、2点とっても勝点1さえ奪えない日々が続いた。

 

その要因として齋藤将基監督は「今年はまたイチからつくり上げる作業をしないといけなかったのがちょっともったいなかった」と積み上げがうまくできなかったことを挙げる。監督自身、昨年からU-18の指揮を執ることになったため、当時の2年生(今年の3年生)をあまり見られなかったと反省していた。

 

クラブユース選手権の出場権も逃すなど、難しいシーズンを送る金沢だったが、夏の中断、秋の中断を経るごとにチームは変化していった。齋藤監督がとくに重視したのは選手たちが主体に考えて対応していくこと。

 

「トレーニングもそうだけど、試合のなかで自分たちで変えていく、対応していく。もしくは相手に対応させないというのはずっとやり続けていた。(相手の)対策という対策はほぼせずに、自分たちで相手を見る。(19日の)帝京長岡戦も4−3−3でくるのかなという情報は伝えたけど、実際には相手は3枚できた。そのなかでこっちからは何も伝えなかったけど、選手たちが対応できた」

 

シーズンが終盤になればなるほど、守備は安定した。複数失点も少なくなかったチームが、最後の3試合ではそれがなかった。前期の対戦では6失点を喫した帝京長岡相手にも無失点。「ピンチはあったけど、体を張って0で抑えるという意識ができていた」(高橋祐翔)。

 

「自陣では不用意にスペースをあけず、ゴールを守ることを優先できるようになった」と齋藤監督。そして成長株としてひとりの選手の名前を挙げた。

 

「(神野)大幸は今日(CBの)右で出ていたけど、だいぶ成長してきてくれた。判断の部分も伴ってきた」

 

その言葉通り、秋になってからセンターバックにコンバートされた神野の成長曲線は首が痛くなるほどに急カーブだ。和倉ユースで右サイドバックを試していたときも十分うしろでできるという印象だったが、10月7日の松本U-18戦ではすっかりセンターバックで、2日後の鵬学園戦終了後にコーチ陣と話しているときも神野の急成長ぶりが話題となった。そしてそれから1ヶ月半。今年最後に見た神野は落ち着きと判断がさらに増していた。

 

「(山本)義道タイプというか。前にいく強さとか決断力がすごくある」と齋藤監督はトップチームの例に出しながら、その成長に目を細める。さらにキャプテンの高橋も「本当に成長したと思う。チームの中心としてこれからもやってほしい」と、来年への期待を込めて話してくれた。

 

金沢U-18にとって来年は再びプレーオフ、さらにはプレミアリーグを目指す戦いが待っている。今年たくさんの経験を積んだ2年生がどんな選手に成長していくか。

 

「個の成長と勝利は分けて考えられない。勝利があるから個が成長するし、個が成長するから勝利に近づく。そのふたつが伴わないといけないし、そこをより求めていかなければいけない。だいぶ厳しさが出てきたと思うので、あとはトップの強度とかスピード感を感じていければさらに成長していくと思う」

 

来年は齋藤監督もトップチームとの連携をより深めながら、勝利と個の成長を目指していく構えだ。

 

コメント

高橋祐翔
「(試合の)入りから全員でやろうと言っていて、全員で前からプレスをかけてはめることができた。(今シーズンのなかで)一番入りはよかったかなと思う。後半は相手にボールを持たれて難しかった。ちょっと間延びしていたので、真ん中で自分がもっと受けて落ち着かせればよかった。今年は本当に2年生が多くて、最初のほうはどうなるかと思った。でも試合をこなすごとに全員が上がってきたので、来年は本当に楽しみ。(金沢アカデミーでの中高6年間では)本当に楽しかった。ジュニアユースから6年間やってこられた選手もいるし、ユースから新しく合流した人もいるけど、毎日が楽しくて、サッカーが楽しかった。試合に勝てない日もあったけど、サッカーが楽しかったというのが一番。監督さんとかスタッフさんにはサッカーの部分だけじゃなく人間性の部分でも、いろんなことを教えてもらった。自分にとっても貴重な時間だった。大学では1年目から試合に出て、1年目からツエーゲンの練習参加に呼ばれるような選手になれるようにやっていきたい」

 

井上龍昇
「応援のおかげもあって悔いのないプレーはできたかなと思う。最後に(足が)つったのは悔しい部分。つるまでは自分のプレーを出すことができた。自分がチームを引っ張れるような存在になりたいと思ったけど、得点にもあまり絡めずに、勝利にも貢献できないときが多かった。自分としてはそこは悔しかった。でも最後でいい終わり方ができた。大学でもサッカーをするので、そこで努力して夢であるプロに近づけるようにしたい。小学校のときはプロなんて意識してなかった。監督に(セレクションを)受けてみないかと言われて、ツエーゲンもよくわかっていなかったけど受けたら受かった。そこから石川のトップでやってきて、本当にありがたいです。ツエーゲンがなかったら、いまの俺はない。感謝以外ありません。一緒にやってきた仲間も、時には優しく時には厳しく言ってくれる。お互いに高め合える最高の仲間だった」

 

辰巳航
「1点目のアシストは、前半早めだったのではっきりやろうと。自主練でよくクロスをやっていて、練習通りの形。(島野)竜太朗も自分のことを信じで入ってきてくれていた。(PKのところは)翔太郎が相手を食いつかせていたので、空いたスペースにスピードを上げて入っていった。キックフェイントをして相手が止まったところをドリブルで相手に足を出させた。シュート本数は今シーズン一番多かった(5本)。味方を使えるシーンもあったけど、最後の試合だったので打ってやろうと。結果、決められなかったけど、思いっきてやれた。
今シーズンの最初は得点が少なく、失点も多いという、よくないチームだった。うしろも声をかけられなくて。でもチーム全体がまとまりをもって、守備をコンパクトにして、やってきたからよくなっていった。勝つためにも必要なことができるようになって本当によかった。
自分は中学に上がるタイミングで1回ツエーゲンのセレクションに落ちて、中3からこのチームでやってきた。監督、コーチが本当に選手のことを思ってくれて、自分としてもやりやすい環境だった。先輩でも後輩でもどんどん言い合って、すごくいいチームだった。一番の思い出はやっぱり今日ですかね。自分の引退試合だったし、1ゴール1アシストで記憶に残る試合だった。今後は今日みたいにチームの軸となる選手になりたい。大学では環境も変わるけど、自分のプレーを積極的にやって、自分の価値をどんどん高めてプロにいけるような選手になりたい」

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