ツエーゲン金沢が始めた企業・団体向けの「ブラインドサッカー研修会」を取材してきた【無料記事】
ツエーゲン金沢というクラブが、また新しい試みを始めた。それがブラインドサッカー研修会。ブラインドサッカーを体験するイベントとは異なっており、ブラインドサッカーを通じてコミュニケーションやダイバーシティの重要性を認識し、ビジネス等に活かしてもらうことが目的となっている。23日に行われた、第1回目のブラインドサッカー研修会を取材した。
当日は豪雨時々雹(ひょう)という、あいにくの天候のなか、金沢市内の室内フットサルコートにはクラブのパートナー企業でもあるイワイ株式会社の岩井一平社長以下、社員とその家族が20名ほど集まった。子どもたちの姿も多く、始まる前から元気にボールを蹴る姿があちこちで見られた。
田代祐平アンバサダーによるウォーミングアップを兼ねた軽い運動と栄養指導などのあと、本格的な研修会は「ブラインドサッカーとは?」という説明や、アイマスクを装着してみるところからスタート。
そしてアイマスクをした状態でのコミュニケーションに慣れるため、見えない状態で同じ血液型同士で集まったり、誕生日の順に横一列に並ぶといったレクリエーションが行われた。
ひとつの活動が終わるごとに渋谷さんは参加者に感想を求め、どうすればうまくいくかというコミュニケーションのコツ、たとえば「向かい合っている人同士は右と左が逆になるので『右足を曲げて』と言っても反対になってしまう。相手の立場になって伝えることが大切です」といったことなどが伝えていた。
とくに子どもたちにとっては普段は「こっち」と身振り手振りで伝えられることも、言葉で伝えるのは難しそう。体に触れながら指示したりしていたが、それはボディコンタクトもひとつのコミュニケーション手段だということを表しているようだった。
次は目が見えない状態で歩くこと、その人をガイドすることに慣れるための「ブラインドウォーク」。参加者は5メートルほど先にあるコーンまで、ガイド役の声だけを頼りに歩行した。
こういったことを踏まえ、本格的にブラインドサッカーのボールを使ってのドリブル。ボールの位置や状態も相手に伝えなければいけないため、ガイド役はより伝えることが多くなっていった。
そして最後は3チームに分かれてのドリブル&コーン当て対決。子どもたちも楽しみながら約90分(田代アンバサダーの講座も含めて2時間)の研修会が終了した。
このブラインドサッカー研修会は「企業・団体が抱える組織課題にアプローチすること」を目的としてスタートしたもの。具体的にどのような部分が社業に活かされそうだろうか。参加した岩井社長は次のように話してくれた。
「言葉で伝えられないものを伝えるというのは気持ちなども同じだと思います。ブラインドサッカーは体で表現するわけですけれども、なんとか伝えようとするというのはコミュニケーションの本質的なところです。社内でも業務連絡などは言葉で伝えやすいと思うんですけれども、社員同士やお客様とのコミュニケーション、本来伝えきれていなかった気持ちなどをどうやって伝えるかという工夫や考え方に結びつくんだろうなと思いました」
クラブとしても対象を企業・団体としており、岩井社長が話したように社業への効果はありそうだ。そして今回は子どもたちの参加も多かったことで、第1回目から新たな可能性も見えてきた。90〜120分というのは子どもにとっては長い時間のはずだが、楽しそうに飽きずに参加している姿が印象的だった。