ヴォルティススタジアム

『イヤーブック2021完全版|ヴォルティススタジアム連動企画』岩尾憲選手インタビュー

2021年3月21日。
J1ホーム初勝利。そして、今季初勝利。
クラブ年表に刻まれましたね!

○イヤーブック2021完全版|ヴォルティススタジアム連動企画
岩尾憲選手インタビュー

イヤーブック2021のページ内で予告してありましたが、スペースの都合で掲載しきれなかった岩尾選手のインタビュー完全版を公開いたします。

取材時期はお正月明けでした。コロナ禍で突き付けられた難題、年末まで連戦を戦い抜いたシーズン、成し遂げたJ1昇格とJ2優勝、監督交代など。プレシーズン始動直前の状況や気持ちも想像しながらご一読いただければ幸いです。

――昨シーズンについて、いま思うことは?

第一に思い浮かぶのは新型コロナウイルスが世界的に猛威を振るったことで、Jリーグは再開できるかどうかわからなくなりました。村井チェアマンはじめ、皆さんの尽力で再開まで辿り着きましたが、かなりの過密日程を余儀なくされました。また、陽性者が出たことにより、クラブによってはいくつかの試合が延期になりました。しかしながら、そういった変則的なことが起きたにもかかわらず、全日程を終了できたことはサッカーをしている当事者としても、応援してくださる皆さんにとっても、最悪の事態は免れたシーズンだったと思います。その上で僕らはサッカーを生業にしている選手として、クラブが目指す目標を最もいい結果で終えられたことが印象深いです。

――J1昇格、J2優勝。それらの記憶よりも、新型コロナウイルスが思い返されるのですね。

サッカーだけではないと思いますが、僕らにとってみればリーグが中断されたことでJリーグの必要価値が再定義されたと思います。当たり前のように日常にあったサッカーも、簡単になくなってしまうのだなと感じさせられました。当たり前ですが、人が生活する上で、生きるために、サッカーが絶対になければならないものではないことを意味していたと思います。なので、それが真っ先に浮かびました。

――だからこそ、明るい話題を提供できた意味があったと思います。

僕らもそうですが、普段の生活ができないというか、たくさんのストレスを抱え、先行きは誰にも見えませんでした。その中で、少しでも明るいニュースを届けられたことについては、少しは役に立てたのではないかと感じています。

――昨シーズン目標を達成できた要因の中で、今シーズンも継続したいものは?

一人でできることは何もありません。足りない部分は個人個人が伸ばす努力をしなければいけないですが、その努力も含めて他の人が手助けしてあげないと埋められない要素はたくさんあります。お金をたくさん投資して、すごい外国籍選手を獲得すれば埋まるものもあるかもしれません。ただ、その選手がサッカー人生の最後までヴォルティスでプレーするのかと問われればそうではありません。自分の中では、穴埋め的な何かではなく、自分たち自身で何かを生み出すことが重要だと感じていて、最終的にはそれが結果にもつながっていくんじゃないかという仮説を立てています。自分たち自身で何かを生み出すという感覚を高めながら、より強靭な選手がひしめくJ1というステージで、僕たちが大事にしていることがどれくらい通用するのか。結果だけではなく、内容も含めて、あらためてチャレンジしたいと思っています。

――契約更新時に「このヴォルティススタイルを武器に戦いたい」とあった。岩尾選手の思う、それとは?

戦術ではないということです。それは監督が決めるもので、選手が手を出すものではありません。戦術に依存してしまうと勝敗によって組織は崩れやすいと思います。敗戦すると戦術が間違っていた、システムや采配が違ったと片づけられてしまいがちです。でも、そういう軸だけで片付けられないからこそサッカーです。だからこそ、もう1つの軸にある原点というか、自分たちが大切にして立ち返れるものが必要となり、その2つの軸を存在させることが重要だと思っています。極端な話ですが、もうひとつの軸となるキーワードは何でもいいです。例えば「助け合う」「ハードワークする」「勝利に徹する」とか。大切なことは、それが何であるのかを決めておくことです。成果であり、反省であり、その根拠や基準となる軸がある状態を作っておくことが、きっと僕らのためになると思っています。なので、そういう言葉を使いました。

――リリースのコメントや昨季の挨拶からは「徳島県・・・」「ヴォルティス・・・」とチームだけではなく、他の誰かにも次のステップに進むことを求め、期待しているニュアンスを受けました。

例え話ですが、車がないからスタジアムに行けないみたいな話はインフラの問題として課題は顕在的ですよね。でも、そういうことではなくて、実際にはまだ誰も課題とは思っていない課題がたくさんあるはずです。それに対して僕らはアプローチしていかなければいけません。選手もそうだし、クラブに携わる皆さんもそうだろうし。そういう意味で、そういった言葉を使いました。

ただ、そういった潜在的な課題があったとしても、J1というブランドや対戦相手によってきっと盛り上がりを見せるであろうことは推測できます。でも、徳島にとっては2度目のJ1というフェーズだからこそ、「ただ単にJ1が徳島に来るぞ」ではもったいないわけです。まだ、興味を持っていただけていない方の心を動かせるような提示の仕方を選手もしなければいけないですし、クラブもしなければいけないだろうということがその言葉の奥にはあります。

ただ単に入場者数を増やすだけであれば方法はいろいろあると思いますよ。例えばサポーターの方が誰かを1人誘うと入場者数が倍になるみたいな。でも、そういうただ単に多くの人が来てくれれば良いという単純なことではなくて、スタジアムに来て、何を感じて欲しいのか。それが、何になるのか。そういったところまでを明確に提示したい。そして、すべきだと思っています。そのために僕がメディアを通じて何かを伝えるのも大切ですが、その手数が多ければ多い程いいと思います。なので、いろんな人に届くように、広く、深く伝わるようなコメントの仕方をしました。

クラブ内部でも「14年はいろんなことがJ1仕様になれていなかった」と多くの課題を聞いていました。そういう経験をしたからこそ、次は本当に細部にまでこだわってやっていかなければいけません。夢物語の時間が過ぎただけになってしまえば、昇格した意味もなくなってしまいます。いかに濃い時間にできるのかを、多くの人が考えるべきだと思っています。

――J2では昇格や優勝など、目標が明確だった。J1での共通目標をどう設定するのか?

チームのみんなで決めればいいと思っています。例え話ですけど、バスケットゴールが20mの高さにある難しいゴールなら誰も投げようとしないですよね。でも、低すぎると退屈です。あのちょうどいい高さにあるからこそ、みんなが入れようとしたり、一生懸命に練習する。その話をいまの自分たちに置き換えても、ゴール設定はかなり重要だと思っています。クラブが提示したり、監督が提示することもあると思いますが、その設定が高すぎたり低すぎたりするならば、チームとしても何か統一しておいた方がいいのだろうと思っています。

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