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SPECIAL DOCUMENT/島袋奈美恵「誰のために戦う。みんなのために、戦う」

西が丘で流した涙の意味

勝利したのに、サポーターの前で島袋奈美恵は泣いていた。嬉し涙ではない。どちらかというと悔恨、そしてチームメイトが勝利をつかんでくれたことへの安堵の涙だった。

2024年4月14日、味の素フィールド西が丘。島袋はマイナビ仙台戦で先発する。ポジションは右サイドバック。今や彼女のベストポジションだ。

試合は前半から広島がペースを握る。2分、進境著しいルーキー・左サイドバックの藤生菜摘が裏に向けてロングキックを放つ。反応する中嶋淑乃。クロス。放物戦は中央の上野真実と渡邉真衣を超え、大外の立花葉。叩いたボレーは強烈な弾道でゴールネットを揺さぶった。

その後も中嶋がGKとの1対1になるシーンがあり、またルーキー・古賀花野のパスを受けたやはり新人の笠原綺乃がシュートしたりと、チャンスは広島。しかし決定的シーンを決められないと相手に流れが生まれてくる。それも、サッカーの常である。

前半アディショナルタイム、仙台の誇るストライカー・廣澤真穂が右サイドにまわってクロス。ファーサイド。島袋は落下点に入った。が、そこにまるで風のように飛び込んできた選手がいた。

広島の右サイドバックの意表をついたのは、マイナビ仙台の左サイドバック・高平美憂。圧巻の飛び出しに、島袋はついていけない。ゴール。

立ち尽くす20番。そしてそのまま、ハーフタイムを迎えた。

ショックだった。

ハーフタイム、中村伸監督の言葉を聞いている映像(Youtube「インサイド_マイ仙台戦」)を見ると、彼女は床に座ったまま呆然としていた。

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