【広島2-0横浜FC】青山敏弘/新たなる全盛期へ
青山、どうしたんだろう。どこを見ているんだろう。
37分のCK。キッカーは森島司という場面で、横浜FCは前線に斉藤光毅を残して自陣のPA内に戻っていた。斉藤はもちろん、カウンター要員。通常はそのリスク管理として二人がマークする。一人は藤井智也であり、もう一人は青山がその任についているはずだった。だが、森島が蹴ろうとしたその前から、青山ははっきりと斉藤を監視するというよりも、中間的な位置にいてフラリフラリとポジションをとっていた。視線も何度も首振りを繰り返し、周囲を見渡す。位置的には攻撃にも守備にもいける、そんな場所にいた。
「最初はカウンターに備えてはいたんだけど」
そこは、青山の経験だったのか。彼は当初予定とは違う動きを見せる。
森島のボールは密集から離れた東俊希にピタリ。完全にフリーになったが、東はヘディングシュートをミスしてしまう。だが、いち早くポジションをとっていた佐々木翔がセカンドボールを拾った。そこにサポートしていたのが青山だ。森島がセットした時はショートコーナーをもらうような動き。しかしキックモーションに入った時には、スルスルとポジションを動かしてファーサイドに流れていた。瞬時に次のプレーを予測し、リスクとチャレンジのバランスをとりながらも、あえてリスクをとって仕掛ける判断が、結果を引き出した。
「あのボールは、我々がデザインした通りの形であり、(森島のキックは)ピシャリと合っていた。でも、うまくいかないことはある。でも、それを周りがしっかりとサポートしてくれた。デサインした中でうまくいかなくてもしっかりと切り替えてくれていた」
城福浩監督の言葉どおりである。東のヘッドまでは設計どおり。その上で、セカンドボールを拾うなりサポートするなりの「ズレ方」もチームとしては確認している。
「あの動きも青山のサッカーIQの高さからすれば、普通に判断できたこと」
もちろん、リスクはある。クリアボールが一気に斉藤へ渡れば、彼の力・スピードからすれば決定機になる可能性は存在する。しかしそこは藤井のスピードと能力を信じて、青山は前に出た。東のヘッドが決まればよし。そうでなくても、しっかりとサポートできる位置にいることを広島のエンジンは解析して、そこにいた。サッカーにおいて「そこにいる」ことの重要性は言うまでもない。
ファーだ。そこに青山の質を信じて走ったドウグラス・ヴィエイラがいた。フリー。コントロールショットは、ネットを揺らす。勝利に向けて大きなアドバンテージとなった2点目は、経験豊富な男が奏でたコンチェルト(協奏曲)だ。
「ファーサイドに蹴る練習をずっとやっていたんです」
青山は告白する。
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