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【SIGMACLUBNEWS】最終ラインの構成を考えるPart.2〜守備の切り札となりうる井林章

今のサンフレッチェ広島は、ここまでの調整がうまくいきすぎている。

この中断期、ケガ人は皆無ではなかったが、別メニュー調整を余儀なくされた選手は1度のトレーニングで一人からせいぜい二人。多くの日々を全員でのトレーニングで過ごせた。希有なことである。

しかし、シーズンが再開すると、こういう理想に近い状況からはどんどん遠ざかる。試合が続く中で予期せぬアクシデントは起きるものだ。昨年も夏場の磐田戦で森島司はケガをしてしまったし、これからという時にドウグラス・ヴィエイラとレアンドロ・ペレイラが続けざまにケガをしてしまった。そういうことが起きるのが、プロの世界だ。

もちろん、広島の3バックはケガに強い。佐々木翔は大アクシデントがあって2度にわたって前十字靱帯を断裂してしまったが、2018年シーズンに復帰してからは、ほぼフルシーズンを完走している。野上結貴は移籍して以降、ケガで離脱したことはほとんどない。荒木隼人も加入以降、大きな負傷で離脱したこともない。あったのは、レッドカードだけだ。

だが、佐々木のケガなどは予測不可能だし、不可抗力。荒木もプレースタイルからレッドカードの危険性などないと思っていたら、ルヴァンカップ札幌戦でやられてしまった。つまり、いつでもこの3バックの誰かが欠けてしまう可能性はあるということだ。

高さへの対応、1対1の強さ、スピードを含めた身体能力の高さは、Jでもトップクラスにある。今季、広島は前からの守備を敢行して敵陣でのプレー時間を長くしたいと考えているが、それを可能だと考えるのはやはり3バックの突出したフィジカル能力の高さありき、だ。裏をとられたとしても何とかしてしまうスピードがあるからだ。1994年、広島がステージ優勝を果たした時は極端なハイラインを構築し、コンパクトな状態で敵陣でのサッカーを貫いていたが、では前線からのプレッシャーがしっかりとかかっていたかというと、ハシェックを前線に置いた布陣では必ずしもそうではなかった。それでもハイラインサッカーが功を奏したのは、森保一という最高の「守備的MF」の存在と、佐藤康之と柳本啓成という快足CBがいて、裏をとられてもカバーできたからだ。いつの時代も、組織と個人はリンクする。

しかし、彼らが欠場した時はどうするのか。その不安は常につきまとう。いい選手が揃っているからこそ、の不安である。

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