ヴォルティススタジアム

【新潟vs徳島】レポート:新潟を下し天皇杯4回戦へ。そしてその内容にはリーグ次節への光明も。(2009文字)

■第95回天皇杯全日本サッカー選手権大会 3回戦
10月14日(水)新潟 1-2 徳島(19:03KICK OFF/デンカS/3,499人)
30’石井秀典(徳島)72’レオシルバ(新潟)75’長谷川悠(徳島)
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JAP_4396
チームが精神的疲弊、肉体的消耗を負ったのは間違いない。しかもその度合いはJ1・新潟を相手にしたゲームの激しさからして軽いものでないはず。心身ともに持ち得るものを出し尽くしたと表現しても言い過ぎではないだろう。

しかし、それらと引き換えにヴォルティスが得たものは計り知れないほど大きい。この一戦で手にした勝利は、天皇杯の次のステージへ駒を進める結果というだけに留まらず、背水の陣で迎えるリーグ次節に差し込む強く明るい光ともなった。

そう断言出来るのは、この天皇杯3回戦で見せた戦いが、自分たちの特徴を強く出すと同時に課題改善の兆しを強く感じさせたものであったから。

ゲームを振り返ると、ヴォルティスは序盤から自分たちのすべき戦いをしっかり実践していたと言える。ポストを強襲する大崎淳矢のシュートにより自信を持って試合に入ったチームは、新潟にポゼッションを握られながらも落ち着いた守備対応。9分にこそギャップを突く縦パスの連続に組織を割られて肝を冷やす場面を作られたが、それ以外のところでは狙いのある守りで新潟のパスワークを分断し、ほとんど決定機までは作らせなかった。選手たちは意識共有のもと、新潟に敢えてボールを持たせる時と積極的に奪いにいく時を使い分け、組織として上手く対処していたと言えよう。

するとその効果的な守備を軸にした戦いが確実にピッチ上の流れを引き寄せていく。27分、中盤でのボール奪取からシンプルに前線の長谷川悠を使う形で大崎が再び惜しいミドルを放てば、続く28分には長いFKのこぼれ球を長谷川(悠)が拾って思い切りのよいロングシュート。チームは立て続けにフィニッシュへ至り、見る見る勢いを増していくと、30分には見事先手を獲ることにまで成功した。右CKの場面でトリックプレーを披露し、ゴール前で混戦を作って最後は石井秀典が冷静に押し込んだのである。

さらに先制の後も選手たちのシフトアップは止まらない。40分に津田知宏が果敢なドリブル突破を仕掛け、その2分後には佐々木陽次のロングスルーパスに津田が抜け出してGKと1対1になるなど、ヴォルティスはいい守備で奪ったボールを精度高く前へ繋いで得点の匂いのする好機を作り出していった。

そして、折り返した後半はよりいっそうチームの良さが見て取れたと言っていいだろう。まず守備については持ち前の粘り強さを遺憾なく発揮。確かに前半以上にボール支配を高められ、新潟が投入してきた小林裕紀に幾度となく鋭いくさびを打ち込まれたが、そうした展開も集中力のあるチャレンジ&カバーと勇気あるシュートブロックでことごとく凌いでいった。72分にレオ シルバが狙った直接FKだけは防ぐことが出来ず、そのゴールによってタイスコアにはされたものの、ヴォルティスの守備はかなりの堅さで機能していたと評価出来る。

またそれ以上に素晴らしかったのが攻撃面で、課題とされているアタッキングサードでの崩しにハッキリ工夫や変化が見られたのは非常に大きな収穫だ。実際、2トップ間のパスに絡んで佐々木(陽)が右足を振り抜いた48分の形には新潟のDF陣も付いていけていなかったし、長谷川(悠)が右サイドから中央へ入れたグラウンダーのパスを津田と佐々木(陽)が続けてスルーし濱田武のコントロールシュートへ結び付けた崩しは完全に新潟の組織ブロックを手玉に取っていた。加えて、75分の決勝点シーンでもそれを引き出したのは仕掛けの変化だったと言っていい。もちろんネットを揺らした長谷川(悠)のシュートは掛け値無しに見事な一発であったが、そのひとつ前に大崎が見せたカットインドリブルからの縦パスが大いに効いたプレーで、そこに生まれた意表を突くスピードチェンジが新潟守備陣の足を止めたのは間違いのない事実である。

こうしてヴォルティスは、冒頭にも書いたように、自分たちの特徴である守備の粘り強さを出しながら攻撃における課題改善の兆しも感じさせて天皇杯3回戦に勝利。価値ある4回戦進出を手中に収め、それとともに中3日で望むリーグ次節に向けていい流れを掴んだ。出場した選手たちにはかなりの体のケアとリフレッシュが必要となったが、それでもこの白星は確実にチームが息を吹き返す強力なエネルギーとなろう。それだけに、選手たちには今季まだまだ何かを起こしてくれるに違いないという期待感が膨らむ。

reported by 松下英樹

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