山梨フットボール

無料記事「最後の”海野夫妻ワイン”は天皇杯優勝ラベル」【コラム&インタビュー】

VF甲府の社長、会長職を長く勤めた海野一幸・VF甲府最高顧問兼社団法人代表理事が2001年の取締役就任から短期間で経営を立て直しクラブがJ1に昇格した奇跡的なストーリーは多くの人が知るところだが、毎年シーズンオフに自家製の”海野夫妻ワイン(非売品)”を選手、チームスタッフ、フロントスタッフ、アカデミースタッフにプレゼントしていることはそれほどは知られていない。

野最高顧問は父親から受け継いだ葡萄畑でワインの原料となるベリーAという品種を会社勤めと兼業で栽培してきた。約600坪の広さで行う畑作業は「(妻の美恵子さんと)夫婦で健康維持に丁度いい広さ」ということだ。約20年前からここで栽培した葡萄でワインを作り(製造はアルプスワイン株式会社に委託)、そのシーズンの象徴的な出来事の写真をラベルにして約100本限定でチーム関係者にプレゼントしてきた。こういうことができるのはワイナリーが多い”ワイン県やまなし”だからこそだが、毎年、約100本の限定ワインをプレゼントし続ける情熱は並大抵でない。

皇杯で初優勝を果たした今季の”海野夫妻ワイン”は当然、天皇杯優勝がラベル。しかし、これが最後になる。「私は数年前にクラブの役員を退任し、社団法人の理事の職も近く引退するつもりでいます」という海野最高顧問。11月3日に行われたヴァンクラブ感謝デー2022の後、控室に戻ってきた選手、スタッフを前に「最後のワインに天皇杯優勝のラベルを貼ることができて嬉しいし、みなさんに感謝しています」と自身の去就とともに伝えた。シーズン中は海野最高顧問がポケットマネーで購入した桃や葡萄を何度もチームに差し入れすることが恒例だったが、「これからは頻繁にということは難しくなる」ということで、時代の変わり目を意識させられる。しかし、最後のラベルが国内3大タイトルのひとつ”天皇杯優勝”だということは偶然ではなく、ポジティブもネガティブも含めたいろいろな歴史と縁が絡み合ってこのタイミングになったような気がする。

(松尾ジュン)

”海野夫妻ワイン”最後のラベルはクラブ初の天皇杯優勝ラベル。

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