山梨フットボール

無料記事 「千葉戦中止、チーム活動停止のドタバタの中でJ1からオファーの山田陸が男気残留を決断」【主夫の部屋】

「美談にするつもりはないが、男気を感じる」

J2リーグ第28節は新型コロナウィルス感染症の禍を最も受けた節と言ってもいいのではないか。千葉対甲府が甲府に陽性判定を受けた選手が増えたことで下限の13人が揃わずに中止になっただけでなく、水戸対大分(このカードは開幕戦ではH大分に感染者が出て中止となった。お互いにアウエーとして現地入りして中止を聞く因縁となった)も当日に中止が発表されたし、栃木などはギリギリの状況でホームで山口戦を戦う。J1J3を含めて多くのクラブの選手・関係者に陽性者が出ておりーーJ1は東アジアE-1選手権開催のためにリーグ戦が中断期間中でリーグ戦の開催に影響は出ていないーー3年目のコロナ禍が続いていることを強く感じさせられる。

VF甲府は14位から7ポイント先のプレーオフ圏内進出のためにフォゲッチに加えてCFCBのブラジル人選手を獲得することが確実だが、ゲームチェンジャーのような選手が来るかどうかは分からないし、彼らが来てから、彼らとやってみて分かること。大事なことは今いる選手が今季の経験値を個々の成長に繋げて手応えと結果の差を埋めること。その大前提は今いる選手が全員甲府でプレーすること。試合出場時間に関係なくみんなで練習し、競争して作り上げてきたし、悔しい経験も共有している。しかし、チームが活動停止に入った722(金曜日)に甲府のセンターラインのさらに中央でチームを支えるボランチ・山田陸にJ1の中位と下位の2クラブからオファーがあった。昨季のオフもJ2クラブからのオファーを断って残留した山田はこのオファーも翌日に断ったそうだ。

関係者によると、吉田達磨監督や佐久間悟社長と話して決断したそうだが、第26節のホーム秋田戦(3-1)後コメントで、「結局、(前節仙台に0-3で負け、結果に対して)叩かれるのは(吉田)達磨さんなんで、申し訳ない気持ちがあって(秋田戦は)セカンドボールを絶対に回収しようと思ってプレーした。『(0-3で負けた第25節・仙台戦は)今までの負けは俺の責任、今日はお前たちが力を出していない』と(吉田監督に)言われて、その通りでしかなくて自分に矢印を向けられてなくて(吉田監督の言葉が)響いた。(ここまで結果を出せなくて)達磨さんに申し訳がない。あの人が一番負ってるんですよ。いろいろ考えてくれている」と話したように、吉田監督に対する信頼と想いが決断の理由だと思う。山田はこういうときにおべんちゃらは言わない。

条件のいいオファーを断って残留することをなんでもかんでも美談にするつもりはないけれど、山田の男気だと思う。吉田監督やVF甲府というクラブに対して「このチームで頑張りたい(山田陸)」という想いを持った選手がいてくれることを、ラスト15試合の団結のエネルギーに加えたい。選手がそっぽを向いているなら無理だと思うけれど、山田のように吉田監督を信頼して正面から向き合っている選手で構成されているチームはまだまだやれる。

(松尾ジュン)

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