山梨フットボール

「荒木と野津田の今季初ゴールで流れを掴み、予想外の嬉しい6ゴールパーティ。ミドルシュート4発というゴール感覚は自信、2失点は修正という収穫」【2021明治安田生命J2リーグ第20節 甲府6-2群馬 レビュー】


2021年6月27日 甲府6-2群馬(18:03K.O/JITリサイクルインク スタジアム/入場者数 3,401人(新型コロナウィルス感染予防対策のため、制限付き。入場者上限5000人以下、または、収容率50%以下での試合開催)/天候 曇 弱風/気温 25.7℃/湿度 47%)

得点者 17’荒木翔(甲府) 12’野津田岳人(甲府) 17’泉澤仁(甲府) 32’鳥海芳樹(甲府) 63’泉澤仁(甲府) 71’白石智之(群馬) 87’長谷川元希(甲府) 90’大前元紀(群馬)
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ジイジと心配していたけれど”甲府強いやん!”と思えた勝利。須貝英大が「子供の頃はヴァンフォーレが勝つと家族が一週間幸せだった」と話したが、その感じがよ~く分かるしーーショボい中身だけど――財布のヒモが緩むというか、ネットショッピングで”ポチッとな”をやるハードルが下がってしまいそうで怖い…。

だ、順位は5位タイ。今節は磐田に敗れた長崎を抜いたものの町田が5-0で愛媛に勝ったために――もう1点というか、1失点に抑えられずに――得失点差で町田を上回れずに5位タイ。上位は京都と琉球が勝ったので差は縮まらず、水戸と引き分けた新潟との差を2ポイント縮めるにとどまった。甲府よりも上の順位のクラブが多いため――後ろもギュウギュウ――全部との差を1試合で縮めることは確率的に低く、山本英臣が以前「(これだけの差になると)大きな連勝をしないといけない」と話した通りで、勝ち続けるしかない。まずは1勝だけど、東京五輪の中断までの残り3試合に向けて自信と活力になる勝利となった。

型コロナ感染が判明した選手と増えているケガ人や体調不良などで台所事情が厳しかった今節。TMは経ていたものの万全ではない小柳達司を急遽先発で起用し、練習には合流しているもののTMを経てない有田光希をサブに入れてギリギリだった今節。誰か一人コンディション不良があれば7人のサブが6人になる可能性もあった。しかし、この難局がチームに一体感をもたらせたのか、覚悟を決めさせたのかは分からないが立ち上がりからアグレッシブに戦った甲府。

荒木翔の先制ゴールはチャンスの作り方も、シュートも素晴らしかった。ゴールを荒木団子が出来上がり、みんなで祝福。

木翔は「(新井)涼平くんが全てだった」と話したが、準備段階で行ってきた4-3-3の可変で中盤のアンカーに上がっていた新井がカバーする範囲の広さには、”うぁわ、ここにも来た”と驚くほど。サイドチェンジを主戦術に持つ群馬に対して新井の守備範囲の広さは驚異で脅威だったはず。ガチャとして相手ボールになった場面は何度かあったけれど、そこを野津田岳人や野澤英之や関口正大や荒木がスプリントして戻り、カバーしたことが素晴らしく、一体感の象徴でもあった。よく思い出せば、シャドーの鳥海芳樹も守備を頑張っていたし、泉澤仁も前半は結構戻って守備をしていた。

制点は7分。左サイドで泉澤がキープして群馬の選手を引き付けてCBとSBの間が空くと荒木がそこをスプリントし、泉澤が出したボールを荒木がリラックスして打ったシュートがファーに決まる。荒木と泉澤の関係はよかったし、前日練習で佐久間悟社長が荒木に「リラックスして蹴ったボールが素晴らしい。練習中の映像(チームは練習を撮影している)を貰って感覚を忘れないようにした方がいい」とアドバイスしていたが――その効果かどうかは分からないが――力みなしの素晴らしいシュートだった。

6点も入るなんて想像も期待もしていなかったけれど、12分にウィリアン・リラのシュートがポストで跳ね返り、野津田がファーに蹴るように見せかけて狭いニアを抜いて2点目が入ったときは祭り気分。ここまでチームで2位のシュート数ながらゴールがなかった野津田は開幕戦のPK失敗の呪いを背負ってきた感じだったけれど、あの場面で空いているファーにシュートを打たないで、狭いニアをよく選択したと映像を見返して思った。技術力、プレーの質では――泉澤とは比べる基準が違うが――チームトップだと思っていた選手にようやく、それも3シーズンぶりのゴールが決まってみんな嬉しかった。後半にも決定機があったものの結果として2点目が取れなかったので、呪いが完全に解けたかどうかは分からないが、「喜び方を忘れていた。モヤモヤが晴れたし、こんなに気持ちがいいモノで、エネルギーになる」とZOOM会見で話した野津田の気分が楽になったことは確実。ゴールが決まってない時もボールによく絡んでいたが、群馬戦はその絡み方が攻守で効果的で3点目の泉澤のゴールは野津田の高い位置での守備が起点になった。

移籍後初ゴール、自身3シーズンぶりのゴールを決めた野津田岳人の喜びはポスト当たりのシュートを打ってくれたウィリアン・リラに抱き付いた後の”ギュッ”に表れているように感じた。

素晴らしい4点目を決めた鳥海芳樹(自身2ゴール目)。ブレイクスルーの音が”ググッ”と聞こえてきそうな躱し方とシュートだった。

い位置で連携して守備ができていた甲府は野津田が厳しくチャージに行ったボールのこぼれが泉澤に渡るとそのままドリブルからコースを狙ったシュートが決まって3-0。泉澤自身のゴール感覚が高いことを示すシュートでもあったし、ここまでの3ゴールは全て外から入っていくペナルティエリア近辺からのミドルシュート。これまではペナルティエリア内でもう1本繋ごうとして、チャンスをシュートに繋げられないことも少なくなかつたが、このペナルティエリアのギリギリから打つシュートの感覚が今後に繋がれば手数が増えることを期待できそう。4点目は鳥海の個人の能力と頑張り。リラが頭で流したボールをゴールライン付近でゴールキックにしたい左SBの久保田和音から奪うと、ロケットスラインディングをしてきた岩上祐三を躱してGK松原修平の股を抜いて決めた素晴らしいゴール。大学時代からの課題である”ゴールを決める”という結果を――今季2ゴール目――出したことは素晴らしいし、ますます鳥海は相手にとって厄介な選手になる。

だ、残念だったのは3点目を取った後、みんなが”リラにゴールを決めさせてやりたい”という雰囲気で、22分には関口のクロスをヘディング、前半のアディショナルタイムの47分には野津田のクロスをヘディングと2回チャンスがあり、なかでも野津田のクロスは合わせるだけに見えたが決められず。野津田のゴールがリラのシュートのポスト跳ね返りだっただけに野津田もアシストできればもっといい気分だったと思うが、この試合はリラのゲームではなかった。

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