山梨フットボール

「決めるべき人が決める個人の課題とコロナ禍のクオーター制の戦い方という2つの要素が浮き彫りになった北九州戦」【2021明治安田生命J2リーグ第7節 甲府1-1北九州 レビュー】


2021年4月10日 甲府1-1北九州(14:03K.O/JITリサイクルインク スタジアム/入場者数 4,096人(新型コロナウィルス感染予防対策のため、制限付き。入場者上限5000人以下、または、収容率50%以下での試合開催)/天候 晴 弱風/気温 19.0℃/湿度 20%)

得点者 44’泉澤仁(甲府) 71’富山貴光(北九州)
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き分けたことを除けば見応えのある面白い試合だった。ゴールが1本だったということは20本のシュート、その中でA級の決定機が3~4回あったので複数得点で勝つべきだったけれど、前線の選手の技術力や練習でやってきたチャンスの作り方を発揮できた試合。なかでも三平和司にはクロスからのヘディング、GKと1対1、こぼれ球と、違う形で決定機を作れているし、長崎戦(1-2●)から三平の質の高さを活かせるサッカーができている。”じゃ何で勝てないんだ?”となるが、そこは野津田岳人も含めてゴール前での個人の決める力・・・思い切りのよさか、決め打ちし過ぎないこととか、ちょっとした運なのか・・・。選手自身が向き合い責任を持つ部分。

なくともチームとしての準備や采配については責められるようなところはないと思う。と、伊藤彰監督に言うと、「それはある程度全体的なところではやるべきところはやったけど、点は取れなかった。細かなところではクロスに入るタイミングはやっていかないといけない。三平のプルアウェーにもっと入っていくとか、失点シーンのカウンター対応とか…カウンター対応のところはこの頃やってなくて、ガッツリとカウンターを喰らうことが少ない中盤の攻防が多い試合が続いたが、昨日の試合は押し込んでいる場面が多かったから(そこから受ける)カウンターが多く出てきた。こういうゲームもあるから…カウンターの準備をちょっと怠ったところはある。ちょっとしたところを改善していくのか、個人で打開するところも50:50であると思う。どんな状況でもゴールの枠内にシュートを入れる作業は足りなかった」と話す。

目された立ち上がりはお互いに前からプレッシャーを掛け合い、北九州がボールを奪ってからワンタッチで縦に入れてくる勢いやコンビネーションには脅威を感じた。それでもサイドの縦を消されても斜めのボールを使って打開できたし、11分に決定機を作られてもそれで弱気になることもなかった。20分前には山本英臣が効果的なロングボールを使って立ち上がりの強度の強い攻防に変化をつけ、飲水タイム後の25分には泉澤仁のクロスに三平がヘディングシュート。下向きに首を振れなかったけれど、狙い通りの決定機。そこで得たCKのチャンスにもシュートを連発して決定機を作った。

14本のシュートを打った前半。最後の最後の44分に三平和司のアシストを受けて泉澤仁が先制点を決めた。しかし、追加点を決めないと勝てないのがコロナ禍のクオーター制&5人交代のサッカーなのかもしれない。

半の終盤になっても北九州のプレスは弱まることはなかったけれど、36分には関口正大のクロスを三平が流し、泉澤に決定機手前のチャンスと前半の後半は甲府タイム。そして、44分に関口の自陣からのスローインに対して北九州の守備が甘くなり、三平が縦にドリブルして泉澤にスルーパス。GKに触られそうになるも、先に泉澤が触って躱して落ち着いて流し込んで先制。ようやく決まったことで――2点目は必要だとは思っていたが――落ち着いて後半に入ることができた。

半は北九州が4-2-3-1から4-3-3気味に立ち位置を変えてきたが、立ち上がりに関口→長谷川元希と繋ぎ、長谷川のスルーパスに三平が飛び出しGKと1対1。長谷川がラインの間で受けて、三平がDFの間を走ってラインブレイクと素晴らしい展開。このシュートは余裕を持ち過ぎたのか、シュートの当たりが悪いのかGKに防がれてしまった。その後、野津田に決定機、三平が肩を痛めてピッチ外に出た時間帯も凌いで後半の飲水タイム。1-0とリードしている中でちょっと流れが悪い時間帯ではあったが、伊藤監督は後半の飲水タイムが鬼門になると振り返った。

評として、勝ち切れないのはベンチに理由があるのかを計り知ることは難しいが、早めにボランチを変えるなど流れのところで俺がミスを犯していることは多々あるかもしれない。タラレバではあるがボランチを変えて1-0でパワーを上げられたのか、やられるのかは流れの中でやってみないと分からないが、そういう話をベンチでは検討していた。ちょっとやられ始めている雰囲気はあった」(伊藤監督)

水タイムから4分後に失点しているだけにこの点が伊藤監督にとって悔やまれることになった。ただ、昨季から飲水タイムが採用され、交代枠も5人。90分をハーフタイムと前・後半の飲水タイムで4分割するバスケットボールのようなクォーター制になったことと、5人交代でどのチームも攻撃的な選手をフレッシュな状態で投入するので守備陣の負担が大きいことがコロナ禍前とはマネージメントが違ってくる。

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