ヴォルティススタジアム

レアル・ソシエダとの育成業務締結について、大谷武文アカデミーダイレクターにインタビュー

ラ・リーガ所属『レアル・ソシエダ』との育成業務締結。『岡田強化本部長インタビュー』の記事内で2022年9月に大谷武文アカデミーダイレクターが現地へ行っていたエピソードがありました。その大谷さんが現地で経験したことをはじめ、徳島のアカデミーについて、大谷さんご自身のバックグラウンドなどを幅広く取材することができました。

聞き手/柏原敏 取材日/1月11日

【アカデミーダイレクター就任】

――2021年のアカデミーダイレクター就任時、徳島ヴォルティスのアカデミーとしての強みについて「明確なビジョン」、「早い年齢から計画的に良い習慣を作るアプローチ」と話されていました。約2年間が経過し、その強みはどういう道を歩んでいますか?
21年のスタート時は、掲げた2つの強みを確固たるものにしていくために、まだまだやらなければならないことが多いと感じていました。それから2年間が経ち、ご協力いただいている多くの方のおかげで、さまざまなことを一緒に築けてきた実感があります。

――具体的には、どのようなアプローチをしてきたのですか?
1年目は『観察』の時間でした。そして、そこから見えてきたものとして、人と環境を改善していくことにポイントを置きました。私の考えとして、選手たちがより成長していくためには、指導者も向上していかなければならないというのがあります。その観点で、指導者の育成に力を入れました。

同時に、環境の改善にも取り組みました。良い状態のグラウンドで練習できる方法を模索しました。徳島県の関係者の方々ともお話をしていく中で、県内に人工芝のグラウンドが不足している現状を知りました。いち早く行動していかなければいけないと感じ、クラブ内でも社長や上層部の方々に相談しながら『あわぎんスポーツガーデン』の構想が生まれました。現在は主に平日の活動で、ジュニアユースがその人工芝を利用させてもらっています。

向かう道筋として、徳島ヴォルティス単体として頑張るというよりも、県民の皆さま、行政の皆さま、県サッカー協会の皆さまをはじめ、多くの方々に携わっていただきながら一緒に作っていくことに価値を感じていました。『あわぎんスポーツガーデン』はそういった考え方を投げかけながら進んでいきました。

【提携について】

――育成組織の強化、地域との密着。これらも総合しながら『レアル・ソシエダとの育成業務提携』について、どのように感じていますか?
この2年間で地方都市のクラブとしての課題も見えてきました。例えば、関西・関東であれば強豪チームが身近にいて、強くなるための刺激をより多く受け、切磋琢磨できる環境があります。その環境がない地方のチームにおいては、『基準を持つ』ということが大切になってくると思います。自分たちの『基準』をどこに置くのか。それを定めることは、思った以上に難しいです。練習試合や公式戦も『基準』を持つための方法のひとつですし、そこにどのような刺激を加えていくのかということも大切なポイントの1つになると考えています。

徳島ヴォルティスのアカデミーは、選手もスタッフもやる気に満ち溢れています。目からでも、耳からでも、触れてでも、体験できるようなお手本を増やしていくことができれば、さらに吸収していくことができると思っていました。だからこそ、今回の提携に価値を感じています。

昨年9月にレアル・ソシエダへ訪れたのは、S級ライセンスの研修という目的もありました。午前中はS級ライセンスの研修に取り組み、午後はレアル・ソシエダの様々な部署の方々に面談の時間をいただきながら学ぶ時間に充てました。現地での1週目は「レアル・ソシエダの良さ」を学び、2週目は「徳島ヴォルティスが何を求めているのか、どういったことができるのか」のディスカッションをして、3週目に「お互いにこういうことができるのではないか」という話も出てくるような良いコミュニケーションができたのではないかと感じています。

――冒頭でうかがったアカデミーダイレクター就任時のお話と同じ印象を受けました。大谷さんは『観察』→『分析』→『行動』→『達成』という流れがありますね。
(笑)。僕は、選手時代に特に目立った活躍をしたわけではありません。なので、こういったことが自分の特徴なのかなと思っています。

――『刺激』が加わることで、選手たちは飛躍的に変化すると考えますか?
僕自身、現在までに、大人から子どもまで幅広い年齢層への指導を経験させてもらいました。プロと育成年代の違いはありますが、育成年代は良くも悪くも直ぐに吸収します。何でも取り入れます。なので、子ども達に携わる大人の責任は大きいです。そういう意味でも「何を学んでもらうか」ということが重要だと考えています。

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