ヴォルティススタジアム

岡田明彦強化本部長、1万字インタビュー。

岡田明彦

2度目のJ1挑戦、2度目のJ2降格。この10年でどういう道を歩んできたのか、この先にどういうビジョンを描いているのか。また、主力選手の移籍も含めて大幅に入れ替わった今シーズンの編成。強化責任者の目を通してクラブの過去、現在、未来について話を聞いた。

聞き手/柏原 敏

――今シーズンに向け、どんなことを考えましたか?

もう一度原点に戻らなければいけないとすごく考えましたし、よりクラブのことを本質的に深く考えた今オフだったというのが率直な感想です。

――13-14年の昇降格を経て昨シーズンがありました。ここを再スタート地点とするならば、どんなことを考えますか?

その質問はよくされることもあり、自分自身でも考える機会は多いです。14年より以前の話になりますが、まだ自分は強化責任者になっていなかった頃です。11年に初めて昇格争いをしましたが、最終節・岡山戦で敗戦して昇格することはできませんでした。翌年の12年に意気込んで昇格に臨みはしましたが、監督や選手も入れ替わった中で15位という結果に終わりました。それを機にあらためて我々はどういうクラブなのかを分析し、どうしていくべきなのかということを考えて原型を作りました。

そして、ようやく13年に昇格できました。しかしながら、初のJ1挑戦は3勝。残留に対してマイナス22ポイントという差がありました。そこから自分を新たな強化責任者として任命いただきましたが、初めてJ1に挑戦した当時に肌で感じたことも受け止めながら今日まで進めてきました。いろんな言葉や意見をいただきました。その中でもあるサッカー雑誌で掲載された言葉が自分に刺さりました。

「徳島はどういうスタイルなのかわからない」。

その誌面を今でも持っています。我々はスタイルを構築していくことで、さまざまなことを前進させるきっかけになる。そう考えて再定義と言いますか、これまで作ってきたものをより深堀りしていこうと進めてきました。その結果、昨シーズンは2度目のJ1挑戦に至りました。クラブのコンセプトに沿った形で、若い選手が多数在籍する中での挑戦でした。J1初挑戦の選手も多く、どうなるかという部分では当然苦しみましたし、難しかったとも思います。ただ、マイナス1ポイントで残留は叶えられませんでしたが、成長していった後半戦を見ていてもクラブとして考えてきた方向性はあながち間違っていなかったのではないかとも思えました。さらに突き詰めていけばやれるのではないかという手応えも感じられました。14年に感じた差、昨シーズン感じた差。その差は縮まりました。

ただ、2度目のJ1挑戦であらためて感じさせられたことがあります。それは『基礎・基本の重要さ』です。「我々はボールを握りたい、かつテクニカルでありたい」。そういうものを売りにJ2優勝やJ1昇格を果たしましたが、実際に2度目のJ1挑戦で見えたのが基礎・基本のベースをより向上させていく重要性でした。それはトップチームだけに必要という意味ではなく、アカデミーなどの育成も含め、構造的な部分にも及ぶと感じました。同時に、そこさえ積み上げられればJ1でも太刀打ちできる。そうも思えました。そのためには年齢、名前、肩書きではなく、やろうとしていることをしっかりやる。そこができれば実際にJ1でもやれる。逆に、そこができなければ我々はビッグクラブと比較してよりできないだろうし、上のカテゴリーで戦うことも難しいと肌で再確認しました。

昨シーズンは機会があって五輪のスペイン代表×日本代表の練習試合を観ることができました。そこでも基礎、考え方といった点で似たような差を感じさせられました。今シーズンはJ2で戦いますが、J1定着だけではなく、同時に世界に選手を輩出すること、世界とも対等に戦っていくことも見据えながら、あらためて基礎・基本を大切にしていきたいと感じています。体験しないと感じられないこともあります。ただ単に思っていることと体験して思うことは違います。この経験をもとに、さらに先も見据えてチャレンジしていきたい。もちろん大前提は目前の試合に勝つこと。そして、J1復帰です。その上で、さらに先も見据えた挑戦にもワクワクしながら取り組みたいと思っています。

――アカデミーや構造の話もありましたが時間軸で言えば中長期に及ぶ設計図だと思います。一方でJ1復帰は短期的な目標です。そう考えたときに、トップチームで基礎・基本をいち早く向上させるためには何ができると思いますか?

現時点で言えば、トレーニングの質や指導方法なのではないかと考えています。そこをより上げること。指導者の観点、求めるもの、何に対し、どう求めるのか。変化させられる部分はあると思います。そして、我々にもそこには成長できる余地がまだまだあると思います。

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