ヴォルティススタジアム

徳島ヴォルティス 倉貫一毅ユース監督特別インタビュー完全版

CLUB VORTIS2020個人会員の皆さんには先日会報誌をお届けしましたが、掲載しきれなかった全文をヴォルティススタジアムにてお届けします。

コロナ禍でのユースチームの活動、S級ライセンス取得など近況を語ってもらいました。

Q:まず自粛期間中に各カテゴリーで取り組まれたことがあれば教えてください。

「Zoomを使って、体幹トレーニングを中心におこないました。取り入れた当初は、タイムラグがあったりして難しかったのですが、徐々に慣れていきました。最初は時間をかけてフォームの確認などをしていましたが、最後の方はタイムラグがあることもわかってきて、それに合わせてやれていました。子どもたちはスマートフォンで見る子が大半で、画面に4人ぐらいしか映らないのでコーチが映っている画面に固定すると、選手同士の会話がほとんどありませんでした。最初のうちは、トレーニングの最後5分を自由時間にして話す時間を持っていました。自粛期間の最後の方では、選手をペアにしてお互いの画面を固定してチェックし合う方法を取り入れました。チェックをするために画面をのぞき込むときに選手の顔がアップになって、コーチたちはそれを見ることで選手たちの真剣な表情などがうかがえていい経験になりました。

新しいことでプラスもありましたが、やはりサッカーができない、練習ができないことでのマイナスはたくさんあったと思います。ただ、できない状況はみんな同じなので「今どうするかで勝負が決まる。逆にチャンスなんだ」ということは選手たちに伝え続けました。指導者が何か喋っているときにはみんなその話を聞いたり、言われたことを意識してプレーしているけど、何も言われないときにそれを忘れる人と忘れない人がいる。だから差が出るんだと思っています。トップ昇格した森田凜選手は、僕が言わないところでも物凄くやっていました。だから差が出る。それを言い続けています」

Q:選手たちと自粛期間中の私生活の話はしましたか?
「サッカーができないつらさがある中で何をすべきなのか、選手たちの夢は何なのかを常に話していました。僕たちの仕事は「夢を育てること」。技術を育てるんじゃなくて「夢を育てること」「夢がしぼまないように武器を持たせてあげる」。選手たちには大きな夢があるけど、壁にぶつかったりいろんなことで夢がしぼんでしまう時があります。それに風船のように空気を入れてあげないといけない。それが僕たちの仕事であって、戦うための武器であったり、徳島ヴォルティスのユースとして他のチームと戦っていくプライドであったり、それがドリブルなのかパスなのかシュートなのか、それを教えていく。この時期、進路の話もあるので、映像を作って送らないといけません。コーチ陣が作っても意味はないので、選手たちに自分の良いシーンと悪いシーンを5シーンずつ見つけてくるように指示をしました。編集はコーチたちでおこないましたが、リモートで選手たちとその動画を見てどう思うか、個人ミーティングもしました。今後状況が好転するとやっぱり試合を直接見るスカウティングのスタイルに戻るとは思いますが、今回の取り組みでよかったのは「選手たちが自分で自分の動画をたくさん見た」ことです。ユース内で共有している動画があるんですが、再生回数が今までの4倍ぐらいになりました。1年生は試合の動画がないのでドリブルなどの課題を与えて、それを動画に撮って送ってもらい、それを見ながらコメントをしたりしていました」

Q:アカデミーのスタッフの皆さんは自粛期間中どう過ごされましたか?メニュー作りなど。
「始めの2週間ぐらいはコーチ内で指導実践などをしていました。緊急事態宣言が出てからはコーチたちも集まれなくなって、選手たちにはメニューを与えたりしていましたが、それだけでは2週間しか持ちません。だからすぐ次の手を考えないといけません。次の手を打ちながら、もうその次を考えないといけない。僕の性格ですけどね(笑)コーチ内でもZoomを使ったり、対策をして集まって話し合いをしていました」

Q:今後の活動について教えてください。中止になった大会、今後開催を模索している大会様々だと思いますが、どう取り組んでいきたいですか?
「大会が無くなっても「目的」はあります。何かの大会で勝つのが目的ではなく、ユースの選手たちの目的と夢はプロサッカー選手になることです。だからそれは新型コロナウイルスの影響があろうがなかろうが関係ないことです。だから初めにも話した通り、「その夢をしぼませないこと」が僕の仕事。体幹トレーニングを教えるのはトレーナーの仕事で、「夢をしぼませないようにする」のは僕の仕事です。「なぜこれをするのか」を教えるのが監督の仕事。目的は絶対にあります。考えることを止めてしまったら、選手たちを止めることになってしまう。今後も、みんなでいろんなことを考えながら前に進むことが大事だと思います。徳島だったから取り組めたこともあります。もし今後また新型コロナウイルスの波が来てしまったらどうするか、その時やその次のことも考えて今回の自粛期間中は取り組みました」

Q:S級ライセンス取得について。目指すものなどを教えてください。
「S級ライセンス取得はクラブの協力が無かったらできなかったことなので、感謝していますし、今後いろんな形で返していければと思っています。
自分自身、常に高いところを目指しています。だからユースの選手にもそれを要求しますし、いつも「満足するな」と言っています。それは子育てでもそうですし、選手を育成するときにも言っています。「満足したらそれで終わってしまう」と。
(S級ライセンス取得には実技など研修が必要で)ユースの選手、特に去年の3年生の中には「何で自分たちの代で行くのか」と感じた選手もいたと思います。でもそこで考えてほしい、伝えるのは「満足してしまってる指導者に満足するなと言われて、君たちは納得できるか?俺は上を目指す。だから君たちも上を目指す。君たちならやれるだろう。チームのことは任せたよ。」ということです。だから今、どこを目指すかと聞かれたら”Jクラブの監督”と答えます。ただ、言葉とか英語が苦手なんだよね…」

Q:キャンプへの帯同や、普段からトップチームの練習も見ていますね。
「トップチームにはトップチームのいろんな難しさがあります。でも難しいから面白い。トップチームの練習を「ここはこうなるかな」とか考えながら見ています」

Q:監督というポジションについてどう考えますか?クラブチームの監督を務めているお父さんの影響はありますか?
「監督というのは面白いものだと思います。もともとの性格もあると思うんですが「やれ」と言われてやるのは嫌ですし、自分で決めたいという思いが強いです。自分のそういう性格がわかっているから、昔から根回しも上手でした。父の影響というか、遺伝とかもあるんですかね。僕が話をするとみんながグーっと聞き入ってくれる。それは持って生まれたものだと思います。僕は「自分はこうする」とはっきりと言えます。その力はリーダーには必要なことだと思っています。何事もメリットとデメリットがあって、それをバシッと決めないといけないときがあります。そのメリットのために進もうというのをみんなに説いて、納得させることができれば成績はバンっと上がる。もう1つは、部下(監督ならコーチなどのスタッフ)が優秀な人であれば、その人に任せることも出来て、全員が監督やリーダーじゃなくても良さを活かすことができると思います。ただ、独裁者にはならないようにしています。今であれば、アレックスコーチや玉城コーチに「感じたことはしっかり言ってほしい」と伝えています。その時に監督としてどう応えるのか、どう対応するのかいくつかのパターンを常に頭の中に持っています。選手だけじゃなく、コーチたちの良いところにも目を向けて伸ばしていきたいと思っています」

終。

==広報のあとがき==
いつか「倉貫一毅 徳島ヴォルティス監督就任!」のプレスリリースを書けることを楽しみにしています!

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