ヴォルティススタジアム

【讃岐vs徳島】レポート:東四国クラシコを制して今季初勝利。ただ今後に向けては問題も多かった一戦。

■2016明治安田生命J2リーグ 第5節
3月26日(土)讃岐 1-2 徳島(13:04KICK OFF/ピカスタ/4,947人)
得点者:49’内田裕斗(徳島)53’木村祐志(徳島)70’エブソン(讃岐)
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薄氷を踏む勝利とはまさにこのことであろう。ホーム讃岐が執念を込めて反撃を強めてきた65分過ぎからの時間帯は非常に苦しく厳しい展開。実際70分には1点差に追い上げられ、それ以降も幾度となくゴール前へ押し込まれて目を覆いたくなるような場面を作られた。
ただ、それでもヴォルティスは何とか最後までもうひとつのリードを維持。そのままゲームを押し切り、第5節にしてようやく今季初勝利をもぎ取った。ヒヤヒヤものであったとは言え、その結果にはひとまず大きな評価が与えられるべきだろう。

そしてこの一戦の勝因を振り返ると、まずカウンターの勢いをチームとして出せたことがそれとして挙げられる。
前半からヴォルティスはボールを奪った後の早い攻めに光るところを見せていた。29分に自陣でセカンドを拾った山﨑凌吾からその形を発動すれば、36分にもその山﨑と大崎淳矢らが連続したワンツーで絡んで讃岐ゴール前まで。選手たちは素早い切り替えから前へ出て行くスピードをはっきり見せていたと言えよう。するとそれは何より欲しかった先制点にも結び付く。後半開始直後、押し込まれた後のクリアボールを再び山﨑が拾うと、今度は内田裕斗がスペースへ飛び出して一気にカウンター。ペナルティエリア内にまで鋭く侵入したことで讃岐のハンドを誘い、それを内田が冷静に沈めたのである。
その後もチームは何度かボール奪取後の早い攻めでいいシーンを生み出していたが、いずれにしてもその勢いが白星を手繰り寄せる大きな原動力になったことは間違いない。

またそれと共に、木村祐志のボランチ起用が当たったこともこの勝利を語る上では外せないポイントだ。フィールドの中央エリアに木村がいたことにより、チームには効果的なタメがしっかりと作れていた。遅攻ではなかなか有効な形を生み出せなかったものの、彼が冷静な状況判断と正確な技術でひと呼吸落ち着けるキープを入れることによって、ヴォルティスは讃岐のペースに巻き込まれない戦いが出来ていたと言っていい。
さらに、いつもより一列後ろに位置していたことにより、木村はセカンドボールを回収しての有効な働きも見せていた。事実、53分にチームの奪った2点目も形のスタートは讃岐のクリアボールを拾った彼から。フィニッシュを自ら決め切ったことも加えれば、背番号7には文句なしの仕事をしたという評価が相応しい。

こうした2つのいい要素が上手く絡み、結果としてヴォルティスは讃岐に競り勝つことが出来た。待ちに待った今季初勝利、しかもそれが東四国クラシコ第一戦で手にしたものとなれば、チームはきっと弾みをつけてここから今季を再スタートさせられるに違いない。長島裕明監督も試合後会見で「ここで勝ったことを自信にして、ここから巻き返していければと思っています」と語っていたが、これでチームは精神的な重圧から解放され、勝ちを重ねるために必要な思い切りや積極性を躊躇うことなく戦いの中で発揮出来るようになるはずである。

しかしながら、選手たちには、見過ごせない程度の問題があちこちに散見されたことにもしっかり目を向けてもらいたい。サイドから入れられたボールに対する守備の甘さは変わらずで、現実としてまたしてもそれによってネットを揺らされ、パスやキックにはイージーなミスが少なくない数見られた。80分には石井秀典がまさかのバックパスのミスで讃岐に決定的な場面を与えていたが、このようなことが次節以降も続くようではせっかく掴んだこの今季初勝利も流れを好転させるものにならなくなってしまうのだから。
出てきたいい面は継続しつつ、問題に対しては確実な修正を加えていくことが、とにかく次節以降のヴォルティスには求められる。

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